"雪下の赤いマフラー" 第6話
寮が写真を見る。
「ああ……覚えています」
「どこから来た?」
「詳しいことは話しませんでした」
「話さなかった?」
「ほとんど全く」
体にはきな問題がなかった。
しかし精神な衝撃がく、会話を避けていた。
表示はにいた。
「どれくらいいました?」
「半ほどです」
「そのは?」
寮は記録をめくった。
「のくにある修院へ移りました」
佐藤は美咲の写真を並べた。
寮はく見比べる。
「髪型は違います」
そして、
「でも、似ています」
と言った。
美咲はきている。
そう確信した瞬だった。
佐藤は修院までのを教えてもらい、すぐ旭川方面へ戻った。
いをむ。
やがて々のにの造りの建物が現れた。
ベルを鳴らす。
配の修女が扉をけた。
「旭川央警察署の佐藤です」
「何のご用ですか?」
「シスターという女性に会わせてください」
「なぜ?」
「17、旭川で消えた3の女子についてです」
女性の表が変わった。
しばらくして、修院の庭へ案内された。
子供たちがだるまを作っている。
そのに、黒いベールをかぶった細の女性がいた。
佐藤はさな部で、3の写真を彼女のへ置いた。
女性のが震えた。
目から涙が溢れた。
とペンを求める。
そして、たった2文字をいた。
『美咲』
佐藤は息を止めた。
「あなたが美咲さんですね?」
女性は泣きながら頷いた。
広告
美咲は17、ほとんど声をしていなかった。
院によれば、修院へ来た当初は夜ごと悪にうなされていた。
「が全部隠す」
「見つからない」
眠っているだけ、そのような言葉を漏らした。
普段は沈黙している。
それでも孤児や事のある子供たちの世話には誰よりだった。
泣く子を抱き、病気の子のそばに座り、文字を教える。
佐藤は急がず、美咲のへ便箋を置いた。
『19981112、何が起きましたか』
美咲はくペンを握ったままだった。
やがてき始める。
『彩は妊娠していました』
『田先の子です』
『彩は怖がっていました』
続けて、
『も田先が好きでした』
『だから真実をって、変わりました』
『私は彩を逃がそうとしました』
稚内にある女子寮。
田から以聞いた所だった。
美咲は、彩を旭川かられさせるつもりだった。
妊娠がられれば族にも学にもきな騒ぎになる。
当17歳の美咲には、それ以に方法を考えられなかった。
「も緒に逃げる予定だったんですか?」
美咲のが止まった。
『分かりません』
『はっていました』
『でも私たちと緒にいました』
田がへ来るよう連絡した。
話しえば全て解決すると言った。
彩は嫌がった。
美咲もだった。
しかしがこうと言った。
そしてで、のが爆発した。
『が彩に襲いかかりました』
広告
『田先が止めました』
『もみいになりました』
『が倒れました』
『を打ちました』
美咲の文字が乱れた。
『血がました』
『彩が逃げました』
『私も追いました』
吹の。
彩は何も考えずった。
美咲は必に追ったが、途で見失った。
「見つけたんですか?」
美咲は頷いた。
数。
林のくで倒れている彩を見つけた。
体はえ切っていた。
それでも呼吸はあった。
美咲はくの物置のような所へ運び、自分の着をかけた。
翌朝、2で歩いた。
のさな集落にたどり着き、配の女性に助けられた。
彩はをした。
妊娠の体にもきな負担がかかっていた。
「警察には?」
美咲は首を振った。
『彩が嫌がりました』
『私も怖かった』
がどうなったのか。
田が何を言うのか。
自分たちまで犯罪者だとわれるのではないか。
17歳の2には、何が正しいのか分からなかった。
彩はそのに残った。
美咲だけが稚内へ向かった。
田が教えた所へった。
しかし田は現れなかった。
女子寮へ入り、自分を「」と名乗った。
「がんだとっていましたか?」
美咲はすぐ頷いた。
『田先が隠したといました』
「どうして17話さなかった?」
い。
ペンが止まった。
やがて、
『話したら全部本当になるから』
といた。
佐藤は言葉を失った。
沈黙は、美咲が壊れずにきるための方法だったのかもしれない。
だが、まだ彩が残っている。
「彩は?」
美咲の表が変わった。
が震え始めた。
『赤ちゃんを産みました』
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51