"福嫁の逆転茶屋" 第8話
どんなに甘いものをへ入れても、すぐみ込めないのか」
「それを、ずっと見ていたのか」
「はい」
「どうして」
福はし考えた。
「私にも、誰かの役にてることがあるといたかったのでございます」
宗介は首を横に振った。
「役につどころではない」
福を見る。
「あなたは、こののだ」
福は声を詰まらせた。
宗介はそっとを差しした。
福はし迷った、そのをねた。
いがついた、丸い。
初めて見たには、宗介が美しいとえなかったである。
けれど今、そのほど切なものがあるだろうかとった。
数。
宗介は福を連れ、泉兵を訪ねた。
兵のに座ると、宗介はまたくをげた。
「兵様」
「何だ」
「私は、ようやく分かりました」
兵は茶をみながら聞く。
「何が分かった」
「福の才でございます」
兵は何も言わない。
「そして、自分の目の浅さでございます」
兵はしばらく黙っていたが、やがて元を緩めた。
「遅いな」
宗介はさらにをげた。
「返す言葉もございません」
兵は庭へ線を移した。
「に言ったであろう。おは目を楽しませるだ。福はのをき返らせる甘みを持っている、と」
「はい」
「わしは娘を押しつけたのではない」
宗介が顔をげた。
「あの子がを咲かせられる所を選んだのだ」
福が目を伏せる。
宗介は尋ねずにはいられなかった。
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「なぜ、最初から福の才を詳しくお話しくださらなかったのです」
兵は笑った。
「言葉で聞いた才は疑える」
宗介は黙る。
「そばで見た才は、もう疑えぬ」
宗介には、それ以返す言葉がなかった。
「宗介殿」
「はい」
「おにはへむ力がある」
兵は福を見た。
「この子には、のの流れを見る目がある」
そしてへ言った。
「なら、泡はまだ先へける」
帰り。
宗介と福は並んで歩いた。
しばらくして宗介が言った。
「父は、随分最初から分かっておられたのだな」
福はさく笑った。
「父は、の商いにはをしますが、娘のことになると配性なのです」
「私のことも随分見られていたらしい」
「そうかもしれません」
「怖い父だ」
福は声をてて笑った。
その笑い声を聞きながら、宗介は初めてった。
このと夫婦になってよかった、と。
季節がつ巡る頃、泡は以とはまったく違うになっていた。
器は華美ではない。
座敷にもをかけた飾りはない。
けれど掃除は隅々までき届き、畳はいつも清潔だった。
茶は客にわせて丁寧に入れられ、菓子にはつずつ名と物語があった。
「のの梅」
「隠し」
「の」
そして「母待ち」。
客は菓子をにした、折その名について福へ尋ねた。
福はく語らない。
言言、その菓子に込めたいを話すだけだった。
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それがかえって客の像を広げた。
そんなある。
泉かららせが届いた。
姉のおが実へ戻ってきたという。
福はを読んだ、しばらく黙っていた。
宗介も内容をり、複雑な気持ちになった。
おは裕福な商へ嫁いでいた。
美しい嫁を迎えたと向こうのはび、祝言当初は切に扱われたという。
だが、暮らしが続くにつれて事は変わった。
おはに褒められることが好きだった。
良い着物を欲しがり、へれば自分が番美しく見えることを望んだ。
の者が困っていても気づかない。
夫が商いで悩んでいても、自分の着物や髪飾りの話ばかりした。
使用にも厳しく当たり、嫁ぎ先の母とも衝突が絶えなかった。
やがて夫婦仲はえ、おは実へ戻された。
「なぜ福なの」
実へ帰ったおは、何度もそうにしたという。
「どうして、あの子の方がうまくいくの」
「私はずっと褒められてきたのに」
「どうして私だけが捨てられるの」
福はを畳んだ。
宗介は言った。
「無理に会わなくてもいい」
福は首を横に振る。
「会いにきます」
「おは昔、あなたを傷つけただろう」
「はい」
福は静かに認めた。
「だからといって、姉が今苦しんでいることとは別でございます」
宗介にはすぐ理解できなかった。
「許せるのか」
「まだ、すべて許せているかは分かりません」
福は正直に答えた。
「でも姉は、きっと自分が何者なのか分からなくなっているのだといます」
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