"消えた託児代7万円" 第13話
39度のをしたクレアを抱いた奈が玄関にち、「今だけお願い」と言った朝だった。
あの。
私は初めて。
はっきり断った。
今なら。
分かる。
私が断ったのは。
子守りだけではない。
私のを。
私の資格を。
私の善を。
誰かが。
当然のように。
使うこと。
それを。
断った。
族を助けることは悪くない。
困っているへを貸すことも、私はこれからもするとう。
でも。
助けるかどうかを。
決めるのは。
私だ。
「保育士でしょう」
「族でしょう」
「ちょっとだけでしょう」
そう言われたから。
やらなければならない。
わけではない。
そのの夜、私は暮らしの部へ帰った。
玄関の鍵をけても、廊にベビーカーはない。リビングから誰かに呼び止められることもなく、スマートフォンにも「今遅くなるから泊まらせて」というメッセージは届いていなかった。
私は着を脱ぎ、買ってきた材を蔵庫へ入れてから、ゆっくりお湯を沸かした。窓のでは仕事帰りのたちが駅へ向かって歩き、隣の部からかすかにテレビの音が聞こえている。
それだけの。
普通の夜だった。
けれど。
私には。
その普通が。
ずっと。
欲しかった。
私は温かいお茶を持ってソファへ座り、誰にも急かされずにんだ。
は仕事がある。
来週末はクレアに会う予定もある。
その次の休は何も決めていない。
全部。
自分で。
選べる。
私の毎は。
ようやく。
私のものに。
戻ったのだ。
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