みかん小説
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"床下の小さな指輪" 第8話

それでも健は賭博をやめなかった。

事件の夜も、負けたを取り戻すためにへ戻り、美優へを求した。

美優は拒否した。

「もう1円も渡さない」

そう言ったという。

「警察へくとも言った」

文のが止まった。

「健に殴られたことも、賭博のことも全部話すと」

息子が捕まる。

その恐怖が文を支配した。

「私は、あの子が刑務所へくのだけは嫌だった」

「それで鉄棒を?」

文は頷いた。

「発だった」

静かな声だった。

「発だけ殴った」

美優は倒れた。

そしてかなくなった。

田はちがった。

「供述調を作ります。内容を確認して署名してください」

文は泣き続けた。

「健が……私を売るなんて」

田は振り返らなかった。

部をると、そのまま3号へ向かった。

「英さん」

英が顔をげた。

「お母さんが話しました」

「母さんが?」

「次はあなたです」

英はい黙っていた。

やがて唇を震わせた。

「僕は……本当にセメントだけなんです」

田は子へ座った。

「最初から話してください」

「を退して実へ帰りました。夜、寝ていたら母さんに起こされたんです」

〈セメントを持ってこい〉

そう命じられた。

「れへったら、義姉さんが倒れていました」

「健さんは?」

「いました」

「文さんは?」

「いました」

英は涙を流した。

「兄さんに『くセメントを練れ』って鳴られました。嫌だと言ったら、おも同じ目に遭わせるぞって……」

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「美優さんを埋めたのは?」

「みんなでを剥がしました」

英は顔を覆った。

「僕がセメントを練りました」

その夜の景が、ようやく族のから形になり始めた。

19911116の夜。

川町には、夕方から激しいがっていた。

油の根を叩く音はきく、隣の声さえ普段ほど聞こえない。

その夜、健は賭でを失った。

すでに美優が2に300万円を用し、以の借を返したばかりだった。それでも健はやめられなかった。

夜11頃。

健はびしょ濡れでへ戻った。

「はどこだ」

美優の部へ入るなり、そう言った。

美優は幼いヒロトを別で寝かせた、翌の配達に使う帳簿を理していた。

「もうありません」

「嘘をつけ」

「あなたの借で300万円払ったばかりでしょう」

「まだ貯めてるがあるだろ」

美優は黙った。

健は妻の腕をくつかんだ。

「せ」

「嫌です」

「俺がどうなってもいいのか」

「また賭博に使うんでしょう」

「今回は違う」

「毎回そう言っています」

健の顔が歪んだ。

美優はそれでも目をそらさなかった。

「このおはヒロトのためです」

しずつ貯めてきただった。

夜けから油を搾り、赤ん坊を背負って配達へて、事や類まで切り詰めて残した。

「絶対に渡しません」

健はり、美優を乱暴に突きばした。

さらに蹴りつけた。

美優はへ崩れ、脇腹を押さえながら息を詰まらせた。

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それでも健はを探して部を荒らした。

箪笥をけ、布団を投げ、引きしをひっくり返す。

見つからない。

「どこに隠した!」

美優は答えなかった。

健はのへびした。

「戻るまでにしておけ!」

残された美優は、壁へをつきながらちがろうとした。

そこへ文が入ってきた。

「いつまで寝てるんだい」

「お義母さん……」

「はどこ?」

美優は文を見た。

「渡しません」

「健が困ってるんだよ」

「あのが自分で作った借です」

「夫婦だろう?」

「だから今まで払ってきました」

美優の声には、押し殺してきたものが滲んでいた。

「私は朝から晩まで働いています。ヒロトを背負って配達して、べるものまでして……それでも健さんは賭博をやめなかった」

文の顔が険しくなった。

「夫に向かって何だい、そのは」

「本当のことです」

「嫁のくせに」

「もう限界です」

美優は息をえた。

「、警察へきます」

文がきを止めた。

「何を言った?」

「健さんに殴られたことも、借も、全部話します」

「警察?」

「このままではヒロトまで巻き込まれます。私はもう黙りません」

文ののに、息子が錠をかけられる姿が浮かんだ。

健は昔から問題を起こした。

そのたびに文がをし、をげ、隠してきた。

息子を守ることが、母親として当然だとっていた。

線が部の隅へ向かった。

鉄の具がてかけてあった。

文はそれを持った。

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