"閉店写真館の11通" 第10話
「最のに客へ言う言葉?」
とられた。
笑い声がに響いた。
夜7。
皆が帰った。
最に真理とだけになった。
シャッターをろす、佐子は内を周した。
暗。
撮。
カウンター。
父の子があった所。
修がよく座っていたレジ横。
真理が宿題をしていた。
何も話さなかった。
「お母さん」
真理が呼んだ。
「何?」
「これ」
袋のもうつを渡された。
にはさなアルバムが入っていた。
表に、
《瀬写真館 最の90》
とかれている。
く。
子へ返すに、本の許を取ってコピーした原の写真。
苗姉妹のクリスマス。
児玉の運会。
の片づけをする佐子。
の証写真を撮るろ姿。
そして最の方に、が2004に撮った36枚から何枚か入っている。
「いつ作ったの?」
「このヶ、ちょこちょこ撮ってた」
真理が答えた。
佐子は驚いた。
自分が段ボールを運んでいる写真。
客と話している写真。
で古いネガを見ている写真。
シャッターの貼りを眺めている写真。
全く気づかなかった。
「勝に撮らないでよ」
ではそう言ったが、閉じなかった。
最のページは空いていた。
「今の写真入れるから」
真理が言った。
「プリント枚ちょうだい」
佐子は先ほどの集写真を枚渡した。
真理はアルバムへ入れた。
最のページ。
「お母さん」
「何?」
「おじいちゃんが36枚撮った理由、分かった気がする」
広告
「何?」
「写真館って、特別なのばっかり来るでしょう」
。
結婚。
卒業。
成式。
族写真。
「だから普通のを撮りたくなったんじゃない?」
佐子は写真を見た。
それが正解かどうかは分からない。
父に聞けない以、永に分からない。
けれど、それでよかった。
分からないまま残ることもある。
佐子はの照を消した。
最に入のへる。
真理がシャッターへをかけた。
「緒にろす?」
「でできるよ」
「ってる」
娘はをさなかった。
でシャッターをろした。
属の音が、ゆっくり面へづく。
最の20センチ。
10センチ。
そして閉じた。
瀬写真館は、57の営業を終えた。
佐子は泣かなかった。
真理も泣かなかった。
でしばらくシャッターを見ていた。
「ご飯く?」
真理が聞いた。
「何べる?」
「焼肉」
「閉したに焼肉?」
「何べたら正解なの」
佐子は笑った。
「らない」
で駅の方へ歩き始めた。
特別なの最は、写真のほどきれいではなかった。
は疲れていたし、佐子は朝からほとんどべておらず、真理は仕事のメールを気にしていた。
それでも、その夜のことをでいす、佐子はきっとつだけ覚えているとった。
隣を歩いていた娘の肩が、々自分の腕にぶつかっていたことを。
瀬写真館がなくなって半、跡にはしい建物の基礎ができていた。
広告
商の角を通るたび、佐子は以なら必ずのシャッターを確認していた癖で、そちらへ目を向ける。けれど今は事用のい囲いしかなく、あの暗も、撮も、真理が宿題をしていたもしない。
閉、佐子はすぐには仕事を始めなかった。
父の代からんでいた階の荷物を理し、さなマンションへ引っ越した。真理からは「京寄りにめば」と言われたが、結局同じ町に残った。
くんでいるから、という理由だけではなかった。
百で野菜を買えば「今は何作るの」と聞かれ、のへけば頼んでいない惣菜まで袋に入れられる。それを面倒だとっていた期もあったが、59歳になった佐子には、自分の名をっているが何もいる町を捨てる理由もなかった。
11、図館から話があった。
古い郷写真の理を伝ってほしいという。
商の誰かが佐子を紹介したらしい。
週に。
昔の祭りや町並み、学事の写真をデジタル化し、代や所を理する仕事だった。
最初は断ろうとった。
写真館を閉めたのだから、別の仕事をしてみたい気もした。
しかし度見学へき、段ボールいっぱいの古い写真を見た、佐子は翌週から働くと返事をした。
「結局また写真じゃん」
真理に言われた。
「今度は撮らないから」
「そういう問題?」
娘は笑った。
図館の仕事には、持ち主の分からない写真がたくさんあった。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111 -
完結第21話
母を遠ざける姉の嘘
長野で一人暮らす母の介護を一手に担う姉から「母の体調が悪化するから来るな」と言われ、私は五年間帰省を控え、毎月五万円の仕送りを続けていた。だがある夜、母から五年ぶりに直接電話が入る。「まだ怒ってるの。あんたが私の顔も見たくないと言っていたと姉から聞いた」と母は怯えていた。直後に受話器を奪った姉は「母の被害妄想だ」と言い放つ。不審に思った私は姉に告げず始発の新幹線に乗り、五年ぶりに実家の引き戸を開けた。兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|介護3.2万字5 166 -
完結第20話
教室の最後列に座る元教員
定年退職した元教員の私は、一度も教えたことのない男子生徒の保護者会に、身元を偽って六年間通い続けていた。教室の最後列から見つめる先には、油まみれの作業着を着た父親が座っている。受付簿の不審な記録に気づいた校長から昇降口で問い詰められた帰り道、桜が散る坂道でその父親が私の前に立ちふさがった。二十四年前の元教え子だったその男は、振り返りもせず、私の背中に向けて「あの席、あと何年座るつもりですか」と低く告げ怒り|真実|親子関係|修羅場3.1万字5 122