"実印を押さない母" 第2話
夫の遺族と自分のがあり、貯もある。活に困っているわけではない。
何より、そんな細かい計算を族に向けるのは寂しい気がした。
その夜、美が帰宅してすぐに蔵庫をけた。
「お義母さん、牛乳ないですけど」
佳代子はテレビから目をした。
「今買い物かなかったから」
「悠斗、朝むんですよ」
「そう」
美はし困ったように計を見た。
「今から買いにくのもなあ」
その言い方に、佳代子は初めてさな違を覚えた。
牛乳を切らしたのは、佳代子の失敗ではない。
そもそも美の族がむものだった。
「コンビニならいでしょう」
佳代子が言うと、美は瞬黙った。
「あ、そうですね」
それだけだった。
けれど翌朝、直から言われた。
「母さん、美に何か言った?」
「何を?」
「昨、牛乳のことでちょっとたかったって」
佳代子は驚いた。
「買いにけばって言っただけよ」
「分かってるけどさ。みんなで暮らしてるんだから、あんまり細かいことで空気悪くしないでよ」
みんなで暮らしている。
佳代子はその言葉を聞きながら、ふと考えた。
このは誰のだっただろう。
夫と35働いてローンを返しただった。
固定資産税を払っているのも自分だ。
根を直したに120万円したのも自分だった。
それなのに、いつから自分が「の空気を悪くしないよう気をつける側」
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になったのだろう。
その疑問はまださかった。
佳代子自も、翌には忘れようとした。
しかし数週、直が夕の席でにした言が、そのさな疑問を消せなくした。
「母さん、このさ。そろそろ俺の名義にしない?」
箸を持っていた佳代子のが、そこで止まった。
直は、まるで根の修理について話すような調だった。杏奈と悠斗は事を終え、自分たちの部へがっている。卓には佳代子、美、直のだけが残り、美はその話を初めて聞いたような顔をしていなかった。
「名義って、の?」
佳代子が聞くと、直は頷いた。
「うん。と建物」
「どうして?」
「この、もう結構古いじゃん。そろそろちゃんとリフォームしないとまずいだろ」
根。
壁。
浴。
キッチン。
湯器。
直は次々と直した方がいい所を挙げた。確かに築28だから、具がないわけではない。浴のタイルには細いひびがあり、キッチンの換気扇も音がきくなっていた。
「リフォームするなら、俺たちもすよ」
直は言った。
「でも1000万とか1500万になると、母さんだけじゃ変だろ。俺がローン組んだ方がいい」
「あなたたち、を探してたんじゃなかったの?」
佳代子が聞くと、美が初めてをいた。
「最の、本当にいんです。子どもの学区も変えたくないし、この辺で買うと5000万くしますから」
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「だからさ」
直はテーブルへしを乗りした。
「このを直して、みんなでむのが番理なんだよ」
佳代子は何も言わなかった。
は半だけだった。
いつのにか、このにみ続けることが提になっている。
「でも、名義まで変える必あるの?」
「俺がきなリフォームローンを組むなら、その方がも話いんだって」
直はすぐに答えた。
説は用されていた。
「全部じゃなくてもいいよ。持分だけでも。将来どうせ俺が相続するわけだし、今のうちに理しといた方が税のこともあるだろ」
将来どうせ。
その言葉が引っかかった。
佳代子には娘はいない。子どもは直だから、自分がくなればの部分が息子へ渡る能性はい。だからといって、まだきている今から「どうせ」と言われると、自分がとを渡すのにあるを、省略されたような気がした。
「税のこと、誰かに聞いたの?」
「会社の先輩。親からめに産移してもらったがいてさ」
「専じゃないのね」
直の表がし変わった。
「別に変なことしようとしてるわけじゃないよ」
「そうは言ってないでしょう」
「じゃあ何?」
美がに入った。
「お義母さん、急に全部決めてくださいって話じゃないです。私たちもずっとここにお世話になるなら、ちゃんとおをかけてみやすくしたいっていうことなんです」
言葉だけ聞けば、もっともだった。
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