"余ったパンの嘘" 第2話
当番がパンを配り終えると、誰かがさりげなく教卓の方を見る。がパンへを伸ばすと、それだけでくの席の子が横目できを追った。
は何も気づいていないようだった。
いつものように牛乳の蓋をけ、おかずをべる。には児童のべ方を見ながら、「残すなよ」と声をかけることもあった。
それなのに自分のパンは残している。
子どもたちには、その矛盾がますます議だった。
「先、パン嫌いなんじゃない?」
昼休み、庭の隅で1が言った。
「だったら最初から断ればいいじゃん」
別の子が答えた。
「でも毎持って帰ってるぞ」
「でべるんじゃない?」
「のパンを?」
子どもたちは首を傾げた。
今のように、べ物がいつでも好きなだけに入る代ではなかった。によって卓の事も違い、を楽しみに登してくる児童もいた。
だからこそ、1本のコッペパンを毎持ち帰るには、子どもなりにさまざまな像が浮かんだ。
「先の、べるものないんじゃない?」
誰かが声で言った。
「先なのに?」
「先だって持ちとは限らないだろ」
「でも牛乳とおかずはべるじゃん」
「夜にパンうのかもしれない」
勝な推測が次々にてきた。
けれど、そのどれも確かめようがなかった。
が持っている革鞄も、子どもたちにはし議に見えた。
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く使われているのか、角は擦れてがくなり、具にも細かな傷がついていた。
毎のが終わると、その鞄のへパンが1つ入る。
子どもたちは次第に、それがの課であることを確信した。
ある、でたおかずが子どもたちに気のあるものだった。教のあちこちから「おかわり」の声ががり、空になった器が次々と当番のところへ運ばれた。
も普段よりしくおかずをべていた。
そのため何かの子はった。
今こそ本当に腹がいっぱいで、パンを持ち帰るのかもしれない。
ところが次の、あまり気のないおかずがても同じだった。
はパンを残した。
さらに翌も。
同じことが続いた。
「絶対、何かあるよ」
子どもたちのでは、そんな言葉がるようになった。
けれど本は、相変わらず何も語らない。
昼休みが終われば授業を始め、黒板へ文字をき、子どもたちのノートを見て回った。パンを鞄へ入れたことなど、もう忘れてしまったような顔だった。
あるの午、算数のに1の児童が問題を解けずにを止めていた。
はその机の横へ来た。
「どこまで分かった?」
子どもは黙って途の式を指差した。
「ここまではってる。じゃあ次を考えてみろ」
答えを教えず、はそのまま待った。
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しして子どもが鉛をかすと、はさく頷き、次の机へ向かった。
のパンを毎隠すように持ち帰ることを除けば、はいつものだった。
そのため子どもたちの好奇は余計にくなった。
先は何かを隠している。
それだけは違いない。
そううようになった頃、教ではのパンについての噂がすっかり定着していた。
でべている。
誰かに渡している。
が貧しい。
パンが嫌い。
には、「先は毎ためているんじゃないか」と言いす子までいた。
「何本ためるんだよ」
「分かんない。50本くらい」
「腐るだろ」
そんなくだらない言いいをして、皆で笑うこともあった。
ただ1つ、誰も考えなかったことがある。
自が、そのパンを必としているわけではないということだった。
子どもたちの噂は、本のに届いていたのかもしれない。
それでもは、パンを持ち帰ることをやめなかった。
あるので、教卓に置かれたコッペパンを見ていた男子が、ついにできなくなった。
がいつものようにを広げただった。
「先」
突然呼ばれ、はを止めた。
「何だ?」
男子は周囲から線が集まっていることに気づき、し照れくさそうに笑った。それでも聞きたかったことを、そのままにした。
「今も持って帰るの?」
瞬、教が静かになった。
をべていた何もの子が箸を止め、教卓を見た。
はに持っていたパンと男子の顔を交互に見た。