"新郎が消えた結婚式" 第5話
帰り、私は何度も迷った。
兄に言った方がいいのだろうか。
でも、せっかく航太が結婚を考えるほど好きになった相だ。
私が余計なことを言って、関係を悪くしたくない。
それに、恵理子さんの言うことが完全な嘘というわけでもなかった。
母は男にになり、最には私たちを置いて逃げた。
私はを卒業していない。
恵理子さんのような名学をたから見れば、確かに育ってきた環境はきく違うのだろう。
になった私の方がが狭いのかもしれない。
そう考えて、気持ちに蓋をした。
それから兄の結婚話は順調にんだ。
両の顔わせもわれた。
恵理子さんの両親は、なくとも私が見る限り穏やかで常識なたちだった。
「航太さん、うちの恵理子をよろしくお願いします」
恵理子さんの父親は丁寧にをげた。
母親も私に笑顔を向けた。
「智さん、これから族になるんだから仲良くしてね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
その言葉を聞いて、私はした。
なくとも族全員が私を見しているわけではない。
兄嫁といっても毎顔をわせるわけではない。
気がわなくても、同士ならうまくやっていける。
そうっていた。
やがて結婚式の取りも決まった。
私は兄がタキシードを着る姿を像するだけで嬉しかった。
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兄はこれまで、自分よりも私を優先してくれた。
私の活を守り、学のことを支え、仕事を始めたも何かあれば必ず力になってくれた。
今度こそ兄が主役になるだ。
私は、そのを待ちにしていた。
だから結婚式当も、朝からし浮きっていた。
いつもより丁寧に髪をえ、精杯のおしゃれをした。
鏡のでを確認しながらった。
今は余計なことを考えない。
恵理子さんに何を言われても気にしない。
ただ、お兄ちゃんの幸せを祝おう。
そのの私はらなかった。
式が始まるに、すべてが終わることになるなんて。
結婚式へ着くと、すでにくのスタッフが慌ただしくいていた。
受付の準備がみ、しずつ招待客も集まり始めている。
私は兄のれ姿を見るのが楽しみで仕方なかった。
会へ入る、控のくで恵理子さんを見つけた。
真っなウェディングドレスを着た姿は、本当に綺麗だった。
「恵理子さん、今はおめでとうございます」
声をかけると、恵理子さんはこちらを見た。
「あら、智さん」
瞬だけ私の装をからまで確認したように見えた。
それから笑った。
「今は来てくれたのね」
「はい。もちろんです。お兄ちゃんのれ台ですから」
私も笑顔で答えた。
ところが恵理子さんは、周囲をさっと見渡した。
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くに招待客がいないことを確認するような仕だった。
そして私との距を縮めた。
「ねえ、智さん」
声がしくなった。
「はい?」
なぜか嫌な予がした。
「はっきり言っていい?」
「何ですか?」
恵理子さんは笑顔のままだった。
「あなたって、毒親の連れ子なんでしょう?」
瞬、何を言われたのか分からなかった。
「え?」
「お母さん、男にになってあなたを置いて逃げたんでしょ?」
胸の奥を突然掴まれたような覚がした。
確かに母は、いい母親とは言えなかった。
最には私を置いて蒸発した。
だからといって、それを結婚式当の会でわざわざ私へ突きつける必があるのだろうか。
私が言葉を失っていると、恵理子さんはさらに続けた。
「しかも卒なんだよね?」
その声には、はっきりと嘲るが混じっていた。
「……はい」
「だったらさ」
恵理子さんは、何でもないことを頼むように言った。
「卒のクズは、参列しないでくれる?」
を疑った。
「……え?」
「せっかくのれ台なのよ。柄も学歴もちゃんとしてるたちが来るのに、あなたみたいなが郎の妹としていると、正直恥ずかしいの」
のが真っになった。
これまでじていた違。
初対面のの「育ちが悪い」。
「恥ずかしいいをしないように教えてあげる」。
全部、私の気のせいではなかった。
恵理子さんは、最初から私をに見ていたのだ。
「ね。分かってくれるわよね」
笑顔だった。
その笑顔に悪が滲んでいるのを見て、胸の奥がえていった。
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