"新郎が消えた結婚式" 第6話
私は兄の結婚を壊したくなかった。
だから黙っていた。
何を言われても、気にしないようにしていた。
でも、ここまで言われて何もじないほど私はくなかった。
界がし滲んだ。
「分かりました」
ようやくそれだけ言った。
兄の幸せのためだ。
ここで私が騒げば、式が台無しになる。
私は帰ればいい。
航太が幸せなら、それでいい。
そうって歩がっただった。
「今、何て言った?」
背から聞こえた声に、私は振り返った。
航太がっていた。
私は臓が止まりそうになった。
「お、お兄ちゃん……」
航太の顔から、普段の穏やかさが消えていた。
今まで見たことのないほどたい表だった。
恵理子さんも瞬、らかに揺した。
しかしすぐ笑顔を作った。
「あ、航太さん。何でもないの。ちょっと智さんと世話してただけ」
「世話?」
航太はい声で聞き返した。
「俺にはそう聞こえなかったけど」
「本当にしたことじゃないから」
「じゃあ、もう1回言ってみて」
「え?」
「今、智に言ったこと。俺のでもう1回言えよ」
控周辺の空気が気に張りつめた。
恵理子さんはし怯んだようだった。
それでも、プライドが許さなかったのか、気な姿勢を崩さなかった。
「別に、事実を言っただけよ」
「何が事実なんだ?」
「智さんって、毒親に捨てられた連れ子でしょう?」
私はわず息を呑んだ。
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恵理子さんは止まらなかった。
「しかも卒だし。今みたいな事な式に、そういうが郎の妹として参列するのは、ちょっとどうかとっただけ」
航太の顔が険しくなった。
私は慌てて兄の腕に触れた。
「お兄ちゃん、もういいよ」
「よくない」
「私、丈夫だから」
「丈夫なわけないだろ」
航太が声を荒げた。
鳴る兄を、私はほとんど見たことがなかった。
ましてやこんな表をする航太は初めてだった。
「智がどれだけ変ないしてきてきたか、おはってるのか?」
「それは……聞いてるけど」
「両親が借作って、俺たちを置いて消えた。そのどうやって暮らしたか、おに話したよな?」
恵理子さんは黙った。
「俺が学きながら働いて、智を学に通わせたことも言ったよな」
「聞いたわよ。でも――」
「それで智がにけなくなった理由も話した」
「だからって、卒なのは事実でしょ」
その瞬、航太の表が変わった。
「育ちが卑しいのも事実だし」
「卑しい?」
航太がく繰り返した。
「お、自分はそんなに派なのなのか?」
「そういうじゃなくて」
「親がどうしようもなかったのは俺も同じだ」
兄は自分の胸を指した。
「俺の父親だって、智の母親と緒に俺たちを置いて逃げた。だったら俺も『育ちが悪い』になるよな?」
「航太さんは違うでしょ。学もてるし、ちゃんとした会社に――」
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「そういう話じゃない」
航太の声がさらにたくなった。
私はこれ以揉めてほしくなかった。
今は結婚式なのだ。
ここまで準備して、たくさんのが集まっている。
兄に悔してほしくなかった。
「もういいって」
私はさく言った。
「今はお兄ちゃんの結婚式なんだから、揉めないで」
「智」
「恵理子さんの言う通り、私帰るよ」
「は?」
「私は丈夫。お兄ちゃんはちゃんと式を挙げて」
そう言って控をようとした。
その腕を、航太が掴んだ。
「待て」
「お兄ちゃん」
航太は私の顔を見た。
そして迷うことなく言った。
「分かった」
私はしした。
ようやく兄も式を優先してくれるとった。
ところが次にた言葉は、私の像とは正反対だった。
「俺も帰る」
「え?」
恵理子さんも声をげた。
「ちょっと、航太さん?」
航太は私の腕をし、代わりにを取った。
「自分の妹が参列できない結婚式なんて、俺はやらない」
そのにいた全員が、言葉を失った。
「何言ってるの?」
恵理子さんが慌てて航太へづいた。
「もうすぐ式が始まるのよ?」
「ってる」
「招待客だって来てる。ここまで準備してきたのに」
「だから?」
「だからって……」
航太は、もはや迷っていなかった。
「智、緒にこう」
私のを引いて控をる。
「待って、お兄ちゃん」
「いいから」
「でも、本当に結婚式――」
「俺はしない」
く言い切った。
そのまま会へ向かった。
すでにくの招待客が着席し始めていた。
華やかな装。
えられたテーブル。
式を待ちながら楽しそうに話すたち。
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