"新郎が消えた結婚式" 第12話
破談になった結婚式。
誰もいなくなった会。
それがすべて、このへつながっていたのかもしれない。
今度こそ、兄は本当ので幸せになった。
そうった。
兄が結婚してし経った頃。
しい兄嫁から突然言われた。
「智さん」
「はい?」
「実は、紹介したいがいるんだけど」
「紹介?」
「うん。すごくいい」
瞬が分からなかった。
兄嫁は楽しそうに笑った。
「会ってみない?」
「え、私にですか?」
「もちろん」
「でも……」
私は恋に対して、あまり積極な方ではなかった。
母のき方を見て育った響もあったとう。
恋のために子どもを振り回し、最にはすべてを捨てて逃げた母。
その姿を見てきた私は、誰かを好きになること自体にどこか怖さを持っていた。
自分も母のようになるのではないか。
誰かを信じたら、また捨てられるのではないか。
そんな気持ちがの奥にあった。
兄嫁は急かさなかった。
「嫌なら断っていいんですよ」
「いやってわけじゃ……」
「本当に穏やかなだから」
「どういうりいなんですか?」
「私のりい。智さんとはうとう」
し迷った。
すると兄嫁は、柔らかく笑った。
「智さんには、幸せになってほしいんです」
その言葉にをかされた。
、紹介された男性と会った。
第印象は、兄嫁の言葉通り穏やかなだった。
話す速度も落ち着いていて、こちらの話を途で遮らない。
広告
何度か会った、私は自分の過を話した。
実の父をらないこと。
母が何もの恋を作ったこと。
登だったこと。
義父と母が借を残して逃げたこと。
血のつながらない兄に育ててもらったこと。
を退したこと。
こんな話をしたら、引かれるかもしれない。
以の私は、どこかでそうっていた。
けれど彼は黙って最まで聞いた。
そして言った。
「智さん、すごいね」
私は目を瞬いた。
「何がですか?」
「そんな状況でも、ずっと頑張ってきたんでしょう」
「頑張ったっていうか……仕方なかっただけです」
「仕方なくても、できないだっているよ」
彼は自然に言った。
「航太さんからもし聞いてる。10代から働いて、兄妹で支えってきたんでしょ」
「……はい」
「学歴とか関係なく、俺はすごいとう」
胸の奥が温かくなった。
それは、兄が昔私に言ってくれた言葉とし似ていた。
事を説するから判断しない。
親のことと、私自を分けて考えてくれる。
私はしずつ彼を信頼するようになった。
それから交際が始まり、をねた。
兄は最初、しだけ警戒していた。
「変なやつじゃないだろうな」
「お兄ちゃん、親みたい」
「誰がここまで育てたとってんだ」
「自分で言う?」
そんなことを言いながらも、私の夫になると兄はしずつ打ち解けていった。
そして私も結婚した。
広告
派な式ではなかった。
でも私にとっては分だった。
兄夫婦も来てくれた。
航太は私の嫁姿を見ると、しばらく何も言わなかった。
「何?」
「いや」
「変?」
「違う」
兄は笑った。
「よかったなってって」
その言で、また泣きそうになった。
「お兄ちゃんのおかげだよ」
「それ何回言うんだよ」
「何回でも言う」
「智が自分でここまで来たんだ」
兄は昔と同じことを言った。
の格通を見たにも言われた。
最に頑張ったのは智だ。
その言葉は、私が自分を責めすぎるたびに支えてくれた。
結婚、私は子どもにも恵まれた。
兄夫婦にも庭ができ、私たちは両でき来するようになった。
兄嫁の実から野菜が届けば、うちにも分けてくれる。
子どもたちは航太を見るとんでびつく。
「おじちゃん!」
「おじちゃんじゃなくてお兄さんって呼べ」
「無理でしょ」
私が笑う。
そんな何でもないやり取りが、昔の私にはのようだった。
血のつながらない兄妹。
親に捨てられた子どもたち。
そう言えば、私たちは幸な物語の登物に見えるかもしれない。
実際、苦しかった。
に親がいなくなった朝の怖さは、今でも忘れられない。
航太が疲れ切った顔で帰ってきた夜も覚えている。
へけなくなって、申し訳なくて泣いたも。
結婚式で恵理子さんから「卒のクズ」と言われた瞬も。
全部、本当にあった。
でも私のは、そこで終わらなかった。
そのにもがあった。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 432 -
完結第10話
洋食屋の絆と、高級寿司屋の逆転
岡田悠斗は、高校生の時に両親を交通事故で亡くし、高卒の自動車整備士として働きながら、三歳下の妹・真央をたった一人で大学の法学部まで育て上げた。真央は猛勉強の末に難関の司法試験を突破し、弁護士として初任給をもらう。悠斗への感謝を込めて予約した高級寿司屋の席で、悠斗の職場の傲慢な上司・西村が偶然居合わせ、「工場で油まみれになって働く底辺の作業員」と悠斗と真央を激しく侮辱する。絶望と怒りが交錯する中、隣の席に座っていた一人の客が立ち上がり、西村を冷徹に一喝する。その男の正体は、かつて両親の営む洋食屋「ひまわり」で無銭の少年時代に助けられた大手IT企業の社長・藤井宗介だった。過去の恩返しと、血を分けた兄妹の絆が奇跡を引き起こす感動のヒューマンドラマ。兄弟姉妹|修羅場1.5万字5 641 -
完結第10話
従妹に貸した部屋が、半年で40回又貸しされていた
国家試験の勉強に使う――そう約束した従妹・さやが、私のマンションを他人に使わせ、密かに金まで受け取っていた。半年間、家賃も取らず信じて鍵を預けた私を待っていたのは、生活感が消えた不自然に綺麗な部屋だった。光熱費の異常な少なさ、玄関脇に残されたキーボックスの跡、そして靴箱の奥から見つかった、知らない5人宛ての郵便物。調べるほど、さやの「1人で勉強していた」という言葉は崩れていく。さらに彼女は、私の知らない人間に鍵を渡し、住所まで使わせていたことを認め始めた。親族だからと目をつぶることは、もうできない。私は写真、通話記録、利用履歴を残し、警察や関係機関へ相談することを決意する。だが、問題は無断利用だけでは終わらなかった。私の住所は、いったい何のために使われていたのか――。調べた先で、さらに不穏な事実が動き始める。兄弟姉妹|修羅場4.1万字5 318 -
完結第10話
売上300万元の牧場で、従兄が渡した分け前は200元
「300万元も売り上げたのに、俺の取り分はたった200元なのか?」――祖父から受け継いだ秘伝の飼育技術で従兄・大鵬の牧場を支え続けた私。しかし「利益は4対6」という約束は踏みにじられ、私はただの雇われ人だと切り捨てられた。 3年間の努力を嘲笑われた私は牧場を去り、最後の500元で病気に侵された50羽の獅頭ガチョウを買う。祖父の処方と自分の腕を信じ、恋人・小満とゼロから再出発すると、死にかけていたヒナたちは驚くほど回復していった。一方、私を追い出した大鵬の牧場では謎の病が広がり、300万元の大口契約まで危機に陥る。そんな中、私のガチョウを口にした一人の老人が、亡き祖父の名を聞いた瞬間に涙を流した――。兄弟姉妹|修羅場3.3万字5 162 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 397 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 92 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94 -
完結第21話
母を遠ざける姉の嘘
長野で一人暮らす母の介護を一手に担う姉から「母の体調が悪化するから来るな」と言われ、私は五年間帰省を控え、毎月五万円の仕送りを続けていた。だがある夜、母から五年ぶりに直接電話が入る。「まだ怒ってるの。あんたが私の顔も見たくないと言っていたと姉から聞いた」と母は怯えていた。直後に受話器を奪った姉は「母の被害妄想だ」と言い放つ。不審に思った私は姉に告げず始発の新幹線に乗り、五年ぶりに実家の引き戸を開けた。兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|介護3.2万字5 166