"捨てた料理の代償" 第4話
「兄貴は番らせちゃいけないタイプなんだよ」
以、敬吾からそんな話を聞いたことがある。子供の頃の徹さんは妹の杏奈をかなりがっていた方で、嘘やへの失礼には非常に厳しかったらしい。父親が仕事でを空けることがかったため、のれた男である徹さんがのを叱る役目を担うこともかったという。
杏奈が兄に逆らえない理由もそこにあった。
そして、美智子さんは私には言わず、杏奈夫婦のことで徹さんへ相談していたらしい。事目当てでへ来ること、翔太がおを借りようとすること、私を「」扱いして攻撃していること。それを聞いた徹さんは、すぐには何も言わず、「母さん、メッセージは消さずに残しておいて」とだけ答えたという。
さらに敬吾にも連絡があった。
「兄貴から話きた」
ある晩、夫が仕事から帰るなり私に言った。「杏奈の件、全部聞いたって。母さんの話だけじゃなく俺にも確認したいってさ」と続ける。私への嫌がらせのメッセージまで見せてほしいと言われたため、私は保していた画面を夫へ送った。
翌、徹さんからい返信が届いた。
〈分かった。奈々子さん、今まで悪かったね〉
たったそれだけだった。杏奈をどうするつもりなのかも、いつ本へ帰るのかもいていなかった。
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ただ、敬吾はその文章を見て「これは兄貴、相当ってるな」と苦笑した。
それから数週が過ぎ、お盆がづいた。美智子さんによれば、杏奈は独代からお盆には事連絡もなく実へ泊まりに来ることがかったらしい。結婚してからもその習慣だけは続いており、も翔太を連れて突然現れ、泊して帰っていったという。
「今も来るかもしれないわね」
美智子さんがそうに言ったので、私は「来たら来たで普通にしていましょう」と答えた。追い返せば私が実を支配しているという杏奈の言い分に材料を与えるだけになる。敬吾も、「を貸さない、事は自分でさせる、それだけ守らせればいい」と考えていた。
そんなお盆の。
仕事から帰宅すると、玄関に見慣れないきなスーツケースが置かれていた。
を覗くと。
そこには徹さんがいた。
「お久しぶりです」
私が驚いて声をげると、徹さんは座布団からちがり、以と変わらない落ち着いた表でをげた。予定よりしく休暇が取れたらしく、数に帰国していたものの、美智子さんと敬吾以にはらせていなかったという。
「杏奈には?」
「言ってないよ。たぶん言わない方がいいだろ」
徹さんはそれだけ言うと、私が用していた夕を伝わせてほしいと言った。
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世界の流で働く料理に庭料理を伝ってもらうなんて恐れいとったが、「母さんので料理するの、久しぶりなんだ」と笑われ、結局台所を譲ることになった。
翌朝、徹さんはへかけ、驚くほど量の材を買ってきた。鯛、鶏肉、野菜、汁用の昆布、見たことのないまである。「そんなに誰がべるんですか」と聞くと、徹さんは包丁を研ぎながら静かに答えた。
「杏奈、来るんじゃない?」
その言い方に、私はわず徹さんの横顔を見た。偶然妹の帰省にわせたわけではない。おそらく最初から、そのつもりで本へ戻ってきたのだ。
「奈々子さん、つお願いしていい?」
「はい」
「俺がいること、杏奈には夕飯まで黙ってて」
理由を聞いても、徹さんは「その方が分かりやすいから」としか言わなかった。敬吾も美智子さんも事をっているようで、止める様子はない。私はしを覚えながらも、徹さんの頼みを受け入れた。
そして、そのの昼。
玄関の鍵が回った。
「ただいまー! お母さん、帰ったよ!」
予通り。
杏奈夫婦が現れた。
杏奈はきな旅バッグを片に、まるで自分のへ戻ってきたような顔で廊を歩いてきた。そのろでは翔太が缶ビールをみながら、「いやあ、混んでたわ」と靴を脱いでいる。とも泊まる気満々だったが、帰省するという連絡は度もなかった。
「帰ってくるならもって言いなさいって、いつも言ってるでしょう」
美智子さんが呆れて注すると、杏奈は「実なんだからいいじゃん」
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