"10年目のゲームボーイ" 第6話
里子が装をカウンターへ置くと、滑りやすい布がするりと奥へ落ちた。
「あら」
「そのままでいいわ。呼んでくる」
里子がへた。
恵美は落ちた装を放っておけなかった。
カウンター越しにを乗りす。
装は、員用の机に置かれたノートパソコンのへ落ちていた。
画面には止の画が表示されている。
恵美は装を取ろうとした。
その拍子に、指がキーボードへ触れた。
画が再された。
ざらついた映像。
夜の森。
カメラが々のをんでいく。
画質は悪く、かなり暗い。
突然、画面のすぐくに男の顔が現れた。
「どうう?」
画のの男が言った。
恵美の背筋がたくなった。
あの顔。
フリーマーケットで権田から箱を受け取っていた男。
緑のビートルを運転していた男だった。
その、のドアがいた。
「何してるんですか?」
戻ってきた員の顔が引きつった。
恵美はすぐにを起こした。
「違うんです。装が落ちたから拾おうとして……」
員は急いでパソコンへ向かった。
「勝に触らないでもらえます?」
「ごめんなさい」
恵美は度謝った。
だが、もう引きがれなかった。
「さっきここに来ていた、緑のの男の」
員のきが止まった。
「誰ですか?」
「あなた、っていますよね?」
「りません」
員は画ファイルを閉じようとマウスをかした。
広告
慌てていたせいか、別の画面がいた。
グループチャットだった。
画面部には、
「恐怖のゾンビパーティー」
というタイトル。
そしてメッセージ欄に、つの名があった。
『直』
恵美の臓がねた。
「待って」
員がノートパソコンを閉じた。
「いい加減にしてください。警察呼びますよ」
「その名」
恵美はほとんど叫ぶように言った。
「直って誰?」
「りませんよ」
「私の息子も直なの」
「そんな名、いくらでもいるでしょう」
里子が恵美の隣へった。
「10に方になっているの」
員の顔が変わった。
「今、その子が持っていた物が、さっきここへ来た男の父親のところから見つかったのよ」
員は黙った。
「警察へ連絡するわ」
里子が言った瞬だった。
「待ってくれ」
員の声が震えた。
「俺は何もらない」
「だったら説して」
「輔だ」
「え?」
「あの男の名。権田輔」
恵美と里子が顔を見わせた。
やはり権田の息子だった。
「何を計画してるの?」
員は諦めたようにノートパソコンをいた。
「今夜、パーティーをやるんだ」
「どこで?」
「輔の族が持ってる」
チャットを見せる。
そこには所がかれていた。
そして、
『直へのサプライズ』
『本物みたいなゾンビ』
『ストロボを増やせ』
という文面が並んでいた。
恵美の指がたくなる。
「この直って、誰?」
「俺はらない」
「本当に?」
「パーティーの参加者だとってた」
広告
員は焦って説した。
「俺は装と照を売っただけだ。輔とは何度か話したことがあるけど、それだけだ」
「警察に話して」
「それは困る」
員は青ざめた。
「俺、2の万引で執猶予なんだ。問題を起こしたくない。やっとここで働き始めたんだ」
恵美は携帯話を取りした。
「もし何も悪いことをしていないなら、正直に話せばいいわ」
員は止めなかった。
もう止められなかった。
話がつながる。
「篠原恵美です」
恵美は息をえた。
「息子の事件に関係するかもしれないしい報を見つけました」
そして10で初めて。
直が「どこかにいるかもしれない所」を、警察へ伝えた。
15分もしないうちに、複数のパトカーがナイトメアパーティーの駐へ入ってきた。
森田刑事もいた。
「篠原さん」
「森田さん、見てください」
恵美は員のノートパソコンを指した。
員――拓也は警察の姿を見た途端、顔面蒼になっていた。
「俺、本当にらなかったんです」
彼は何度も繰り返した。
「ただのホラーパーティーだとってました」
警官たちはチャットの履歴、画、所を確認した。
森田が恵美へ言う。
「この直が息子さんかはまだ分かりません」
「分かっています」
「輔という男が事件に関係している証拠も、現点ではありません」
「でも調べてください」
「もちろんです」
別の警官が所を確認した。
「刑事、この所は町のれです。森にい古い別荘」
本部へ照会する。
数分、無線が入った。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第14話
雑用係の逆襲――百億の商談と偽りの女社長
病気の母の療養のため帰国し、学歴を「中卒」と偽って中小IT企業「藤山システム開発」に入社した森本大河。しかし傲慢な女社長・藤山薫からは「引きこもりの変人オタク」と蔑まれ、社運を賭けた百億円の新システム開発から外され雑用掃除係に追いやられてしまう。 だが大河の真の姿は、ハーバード大学を早期卒業しMIT大学院を修了した、世界が畏怖する伝説のスーパーホワイトハッカー「ミスター・モリティー」だった。迎えた海外メガIT企業首脳陣との商談当日、手配されていた通訳3名が全員ドタキャンし絶体絶命の危機に陥る。 「失敗したらクビ」と責任を押し付ける女社長の前で、大河が手元のコントローラーを操作して口を開いた瞬間、会議室の空気が一変する。そして明かされる社長の巨額不正と、タブレット端末に隠された決定的な証拠の行方は――。職場逆転|裡の顔1.9万字5 237 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94 -
完結第24話
目覚めた部下にクビを問われた
地方旅館の火災で客を救い出し重傷を負った部下が目を覚ました。だが彼女の記憶は直近の二年分が抜け落ち、着任初日の私が冷酷に解雇を迫った日のまま止まっていた。会社は避難扉が開かなかった責任を彼女の記憶喪失に乗じて背負わせようと、退職金の支払いを口実に過失を認める書類への署名を病室で迫る。何も思い出せない部下は震える手でペンを握り、かつて自分を追い詰めたはずの私を怯えた目で見つめた。職場逆転|真実|裡の顔|修羅場3.7万字5 700 -
完結第21話
母を遠ざける姉の嘘
長野で一人暮らす母の介護を一手に担う姉から「母の体調が悪化するから来るな」と言われ、私は五年間帰省を控え、毎月五万円の仕送りを続けていた。だがある夜、母から五年ぶりに直接電話が入る。「まだ怒ってるの。あんたが私の顔も見たくないと言っていたと姉から聞いた」と母は怯えていた。直後に受話器を奪った姉は「母の被害妄想だ」と言い放つ。不審に思った私は姉に告げず始発の新幹線に乗り、五年ぶりに実家の引き戸を開けた。兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|介護3.2万字5 166 -
完結第21話
優しい教室で震える息子
息子が突然学校に行けなくなり、担任は「いじめなどなくクラス全員に愛されている」と胸を張った。不審に思った私が息子のランドセルを調べると、底板の裏から三十七枚の給食費受領書が出てくる。我が家は困窮などしていないのに、三ヶ月間、生徒全員が日替わりで息子の昼食代を立て替えていた。私が学校へ確かめに行こうとした瞬間、息子は「言わないで」と叫んで床に泣き崩れ、その紙片を必死に胸へ抱え込んだ。怒り|裡の顔|親子関係|金銭問題3.2万字5 6057 -
完結第15話
五人の元彼と三万一千円
結婚式当日の朝、ホテルのフロントに差出人不明の現金書留が五通届いた。中身はすべて、三万一千四百八十円という奇妙な端数のご祝儀だった。面識のない私の歴代の元彼五人からだと気づき、私は血の気を引かせて金庫への保管を頼み込む。だが、不審に思った夫が私の手提げから抜き取ったのは、三週間前に私がその五人へ同額を送金した明細だった。親族紹介まであと十五分、夫は控え室の鍵を閉め、冷たい目で私を見下ろした。夫婦|裡の顔|金銭問題|修羅場2.2万字5 166 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第18話
診察室に入れなかった私
妊娠七ヶ月、甲斐甲斐しく尽くす夫の言葉に従い、私は毎回待合室で温かい茶を飲んで待っていた。「異常なし」と笑う夫を疑ったことはない。だが夫が仕事で不在となり、初めて一人で診察室に入ると、医師は冷徹な面持ちで私を見据えた。向けられたパソコンの画面には、私が頑なに治療を拒み、夫が必死に説得したという記録が三回連続で並んでいた。その三回とも、私は一度も診察室に足を踏み入れていない。裡切られた|夫婦|裡の顔|修羅場2.8万字5 1753 -
完結第18話
顔合わせのすっぽかしと五通の裏切り
精密機械加工会社の令嬢・紗栄は、誠実に見えた恋人・弘樹と婚約を結ぶ。しかし両家顔合わせの直前から弘樹はモラハラを連発し横柄な態度へと急変。迎えた顔合わせの当日、高級料亭へ向かわず自室に留まる紗栄のもとへ、弘樹から「遅刻するな、調子に乗るな!」と激しい怒声が届く。 その瞬間、横にいた紗栄の父が電話を奪い取り一喝。「とぼけても無駄だ。お前の身辺調査は済んでいる」。 机の上に叩きつけられた興信所の分厚い茶封筒と、弘樹が抱える「5人の愛人」の証拠写真。怒り狂った弘樹が両親を連れて実家へ殴り込んできた時、彼らがひた隠しにしてきた信じがたい搾取の手口が暴かれ――。嫁姑|裡の顔2.7万字5 4070