"最後の定期券" 第6話
母は何かをっている。
「お母さんも……隠してたんだね」
責める声になってしまった。
美佐子は目を伏せた。
「隠していたわけじゃない」
「じゃあ何?」
「夫さんに止められていたの」
由紀は驚いた。
「お父さんが?」
美佐子は頷いた。
「もし私が話したら、あなたまで巻き込むかもしれないって」
「何に?」
美佐子はしばらく黙っていた。
そして。
さな声で言った。
「佐伯さんの族のこと」
由紀は顔をげた。
優子には母親しかいないとっていた。
しかし。
実際には違った。
優子には。
もう。
関わっていた物がいた。
父親。
佐伯隆志。
30、優子がまれたにをた男。
しかし。
彼は完全に消えたわけではなかった。
「お父さんは、そのを探していたの?」
由紀が聞く。
美佐子は首を振った。
「最初は違った」
「じゃあ何?」
「夫さんが探していたのは……」
美佐子はゆっくり言った。
「優子ちゃんが最に会っていた」
由紀は息を止めた。
「誰なの?」
美佐子は答えるまでがかかった。
そして。
つの名をにした。
「田夫」
由紀は理解できなかった。
「え?」
「優子ちゃんが最に駅で話していた相は」
「あなたのお父さんだった」
部のが静まり返った。
由紀は混乱した。
父は優子を探していた。
でも。
最に会っていたのも父。
それなら。
なぜ?
なぜ父は何も言わなかったのか。
なぜ30、自分を責め続けたのか。
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美佐子は静かに続けた。
「夫さんは、あのの最の会話を忘れられなかった」
「優子ちゃんは、夫さんにあるものを預けたの」
「そして、その夜……いなくなった」
由紀は帳を見る。
最のページ。
そこにかれていた言葉。
「必ず返す」
父は何かを返そうとしていた。
30。
ずっと。
その。
由紀の携帯話が鳴った。
警察からだった。
「田さんのお父様について、しい報が入りました」
「見つかったんですか?」
「はい」
由紀の臓がきくねた。
しかし。
警察官の声は続いた。
「ただ……」
「お父様がいた所は」
「青葉川駅跡ではありません」
由紀は息を止めた。
「では、どこに?」
話の向こうから。
静かな声が聞こえた。
「30、佐伯優子さんのがあった所です」
由紀は言葉を失った。
父は。
駅ではなく。
女が消えたへ向かっていた。
そして。
そこには。
30誰にもられなかった。
最のがかりが残されていた。
警察から連絡を受けた翌朝、由紀は母の美佐子と緒に、30に佐伯優子が暮らしていたへ向かった。所は青葉川駅からしれた、の斜面にある古い宅だった。現はほとんどのが取り壊され、しいと宅が増えていたが、その角だけはが止まったように古い建物が残っていた。
警察によると、夫はそのので発見されたという。倒れていたわけではない。
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くのベンチに座り、古い写真をにしたまま、静かに目を閉じていたらしい。幸いきな怪はなく、発見した所の民が連絡してくれたことで、無事に保護された。
由紀はしたはずだった。
しかし、父の姿を見た瞬、別のが込みげてきた。30、族にも言わずに何かを背負っていた父。その背を、自分は何もらずに見ていたのだとうと、胸の奥が苦しくなった。
「お父さん」
病院の個で声をかけると、夫はゆっくり目をけた。
「由紀……」
いつもの父の声だった。
ることもなく、驚くこともなく、ただ静かに娘を見る。
その普通さが、由紀にはし腹たしかった。
「どうして何も言わなかったの?」
わずい声がた。
「30のことも、優子さんのことも……どうして私たちに話してくれなかったの?」
夫はしばらく黙っていた。
窓のを見る。
の空はで、昔の青葉川駅の空と同じをしているようだった。
「話せることじゃなかった」
「どうして?」
「俺が……約束したからだ」
由紀は眉を寄せた。
「誰と?」
夫は答えなかった。
その沈黙が、逆に答えのようだった。
退院した夫は、に戻るとすぐに自分の部へ向かった。
由紀は何も言わず、そのをついていった。
父は古い箱を押し入れから取りした。
箱のには、駅員代の制、古い刻表、青葉川駅の写真、そして何枚ものが入っていた。
「これ……全部、優子さんのもの?」
由紀が聞く。
夫は頷いた。
「返せなかったものだ」
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