"最後の定期券" 第9話
その夜。
由紀は父の部で考えていた。
父は器用だった。
族に説することもできなかった。
助けを求めることもできなかった。
でも。
30。
誰にもられず、つの約束を守っていた。
その。
母が部へ入ってきた。
「由紀」
「何?」
美佐子はし迷ってから言った。
「お父さんが、最まで言えなかったことがある」
「まだあるの?」
母は頷いた。
「優子さんを見つけた」
「お父さんは、度会っている」
由紀は驚いた。
「え?」
「でも、その」
美佐子は静かに続けた。
「優子さんから、もうつ頼まれたの」
「何を?」
母は答えた。
「私の母親には、本当のことを言わないでください」
由紀は息を止めた。
なぜ。
なぜ今さら。
優子は母親に会おうとしなかったのか。
その理由は。
30に隠された。
もうつの族の秘密につながっていた。
由紀は、母の言葉のをすぐには理解できなかった。
30、父が探していた女。
父が約束を守ろうとしていた相。
その女が、自分の母親には真実を伝えないでほしいと言った。
普通なら、番会いたい相ではないのか。
30、れていた母親に。
「どうして……」
由紀はさく呟いた。
「どうして優子さんは、お母さんに会わなかったの?」
美佐子はしばらく答えなかった。
そして、ゆっくりと昔の記憶を話し始めた。
優子がいなくなった。
世では、母親である佐伯恵子にくの線が向けられた。
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なぜ娘をにしていたのか。
なぜ父親がいなくなった庭だったのか。
周囲のは、事をらないまま好き勝に言った。
「母親が悪い」
「庭に問題があったんだ」
そんな言葉が、恵子を追い詰めた。
しかし。
本当のことは違った。
恵子は何もらなかったわけではなかった。
夫が会社の正に気づいていたこと。
危険なになっていたこと。
そして。
優子を守るために、夫が姿を消したこと。
すべてっていた。
「じゃあ、なぜ何も言わなかったの?」
由紀が聞く。
美佐子は静かに答えた。
「優子ちゃんのお母さんは、娘を守りたかったのよ」
「でも、そのせいで優子さんは……」
「そうね」
母は頷いた。
「結果だけ見れば、違いだったのかもしれない」
「でも、あのの恵子さんには、それしか選べなかった」
夫を失い。
娘も失ったとい。
周囲から責められる。
そんな状況で、の母親ができることは限られていた。
「優子ちゃんはになってから、そのことをった」
美佐子は続けた。
「自分の母親が、自分を捨てたんじゃなかったって」
「じゃあ……」
「だから会えなかったの」
由紀は黙った。
会いたくなかったのではない。
会う資格がないとっていたのかもしれない。
そのの午。
夫は、初めて優子の現の所を由紀に教えた。
所は隣県のさな町だった。
駅からしれた所で、さな図館を運営しているという。
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「お父さんは、そこへくつもりだったの?」
由紀が聞いた。
夫は頷いた。
「最に度だけ」
「何を言うつもりだったの?」
父はし考えた。
「謝るつもりだった」
「でも、お父さんは悪くないじゃない」
夫は首を横に振った。
「違う」
「俺は、あの子を助けたかった」
「でも、結局30、何もできなかった」
由紀は父の顔を見た。
68歳になった父は、初めてく見えた。
いつも族を守る側だったが。
ずっと自分自を責め続けていた。
数。
由紀は父と緒に、優子のいる町へ向かった。
列の窓から流れる景を見ながら、父は何度も元の封筒を確認していた。
には。
30に預かった。
そして。
父親から託された証拠。
由紀はその姿を見てった。
父にとって、この旅は30ぶりの続きなのだ。
途で終わってしまった約束を。
ようやく終わらせるための旅。
さな図館は、宅のにあった。
きな建物ではない。
古い本棚。
の机。
子ども向けの絵本。
入にはきの案内が貼られていた。
《誰でもして過ごせる所です》
その言葉を見た瞬。
由紀はし胸が詰まった。
30。
駅でで待っていた女は。
今。
誰かができる所を作っていた。
受付にいた女性は、父を見るとすぐにきを止めた。
髪がし混じった髪。
穏やかな目。
でも。
その目の奥には、30の女の面が残っていた。
「田さん……」
女性が名を呼んだ。
夫のが震えた。
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