"最後の定期券" 第10話
「優子ちゃん……」
はしばらく何も言わなかった。
30というは。
瞬で消えるものではない。
でも。
とも分かっていた。
ようやく。
ここまで来たのだと。
図館の奥のさな部で、は向かいって座った。
優子。
夫。
由紀。
そして、から連絡を受けて来た美佐子。
30なら、絶対に集まることがなかっただった。
しかし。
いを経て。
ようやく同じ所にいた。
「ずっと……」
優子がをいた。
「田さんに謝りたかったんです」
夫は首を振った。
「謝るのは俺の方だ」
「違います」
優子は静かに言った。
「私は、あの、田さんに助けてもらいました」
夫は驚いた顔をした。
「でも俺は……」
「私をにしなかった」
優子は微笑んだ。
「駅で待っている、怖かったんです」
「父が本当に来るのか」
「母をしませることになるんじゃないか」
「子どもだったから、何も分からなかった」
優子は昔のことを話し始めた。
あの。
優子は父親と会った。
父は泣いていた。
自分が族を苦しめたことを分かっていた。
だから。
すぐにはへ戻れなかった。
会社の問題を解決しなければ。
また族を危険にさらすとった。
「父は、私に言いました」
優子は言った。
「いつか必ず迎えにく」
その言葉を聞いた夫は。
自分のにいた言葉と同じだとった。
「だから私は信じました」
優子は続ける。
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「父を」
「そして、田さんも」
しかし。
その、優子のは簡単ではなかった。
父親は会社の正を告発した、病気になった。
完全に族の元へ戻ることはできなかった。
優子は父と暮らしながら、母への罪悪を抱えていた。
「母は私を探していた」
「でも私は……」
優子は目を伏せる。
「怖かったんです」
「母に会ったら、全部壊れる気がして」
由紀は黙って聞いていた。
は。
会いたくないかられるのではない。
切だからこそ。
傷つけることを恐れてれることもある。
「お母さんは、ずっと待っていました」
美佐子が言った。
優子は顔をげる。
「え?」
「あなたが戻ってくるを」
美佐子は涙を浮かべながら話した。
30。
恵子は毎、優子の誕になるとケーキを買っていた。
誰にも見せず。
で祝っていた。
「母親は、あなたをんでなんかいなかった」
優子の目から涙が落ちた。
そのの夕方。
優子はつの箱を持ってきた。
には。
古い写真。
。
そして。
さな青いキーホルダー。
「これは……」
夫が驚く。
「持っていたの?」
優子は頷いた。
「あの、駅でなくしたとっていました」
「でも」
優子は笑った。
「父が持っていました」
父親は最まで、このさなものを守っていた。
そこには。
族写真が入っていた。
父。
母。
幼い優子。
で写った写真。
「父は言っていました」
優子は写真を見る。
「族は、壊れたんじゃない」
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「れてしまっただけだって」
夫は目を閉じた。
30。
女から預かったもの。
それは証拠ではなかった。
族の記憶だった。
帰りの列の。
由紀は父に聞いた。
「お父さん」
「何だ」
「本当は、もっとく会えたんじゃないの?」
夫は窓のを見た。
「怖かった」
「え?」
「俺がくことで、あの子のをまた変えてしまう気がした」
由紀はし笑った。
「お父さんらしいね」
「何だそれは」
「で全部考えるところ」
夫は苦笑した。
「悪かったとっている」
「でも」
由紀は続けた。
「もうで背負わなくていいんじゃない?」
父は何も言わなかった。
しかし。
しだけ笑った。
それから半が過ぎた。
父の失踪騒ぎは、所ではすっかり過の話になっていた。
しかし。
田のでは、きな変化が起きていた。
夫は以より話すようになった。
さなことでも族に相談するようになった。
庭のを切るも。
病院へくも。
「どうう?」
と聞くようになった。
由紀は最初、議だった。
父は昔から何でもで決めるだったからだ。
しかし。
は齢をねても変わることができる。
それを父から教えられた気がした。
ある。
由紀は父の机を理していた。
そこで、枚の古い定期券を見つけた。
青葉川駅。
30の付。
父が失踪したに持っていたものだった。
「まだ持っていたんだ」
由紀が言うと、夫は笑った。
「捨てられなかった」
「いだから?」
父はし考えて答えた。
「違う」
「約束の証だったから」
由紀は定期券を見る。
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