"嫌われた娘の五十八億円" 第1話
初の鉛のがく垂れ込め、斎のすりガラスを鈍く叩く粒を青黒く染めげていた。
。源蔵(げんぞう・享)の告別式は、参列者の数だけはやけにい、だがどこか臭い利権の気を孕んだ異様な式典となっていた。
田区で以続く精密属加の町「精」の創業社の。しかし、黒塗りのハイヤーからりてきた弔問客の半数は、油の染みついた作業着を着た昔ながらの職たちではなかった。仕ての良い沢のいイタリア製スーツを着た目つきの鋭い男たちや、都内の堅の債権回収担当者、果ては素性のれない怪しげなコンサルタントを名乗る者たちだった。
真(まこと・歳)は、親族控の片隅に置かれたパイプ子に浅く腰掛け、え切った指先を膝ので固く組んでいた。
彼女がにつけているのは、に量販で買った仕ての古い化繊の喪だった。袖がわずかに擦り切れ、黒い布が部の湿気を含んでたく沈んでいる。夫をに病で喪い、公営団で朝から晩までパート事務を掛け持ちしながら、娘を方の国学へ送りした真のには、あかぎれと洗剤荒れの痕が痛々しく刻まれていた。
「おい、真。いつまでそんなところでみじめったらしく縮こまってるんだ」
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ガラリと引き戸が乱暴にき、男の修(歳)がを踏み入れてきた。
修は仕てろしの漆黒の喪にを包み、胸ポケットには絹のチーフを覗かせていた。精の専務という肩を誇示するように顎を突きし、その横顔には父を喪ったしみのなど微もなかった。あるのは、待ち望んだ「絶対権力」がに入ったことによる陶酔と、隠しきれない優越だけだった。
その背から、次男の慎(歳)が滑るように部へ入ってくる。信託の融資課補佐というを誇る慎は、縁の鏡を指先で押しげながら、値踏みするような徹な線で真の元を見ろした。
さらに、修の妻・美津子(歳)と、慎の妻・絵里(歳)が続く。は示しわせたかのように、親指の黒真珠のネックレスを胸元で揺らし、真のみすぼらしい化繊の喪をゴミを見るような目で瞥すると、革張りのソファへ浅く腰掛けた。
修は無言で控の内鍵をカチリと回した。
狭い部のに、対の閉鎖された修羅が完成する。
「親父もようやく逝った。これでもしい体制に移できる」
修は腕を組み、仁王ちのまま真を見据えた。
「本題を言っておく。遺産相続についてだ。
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親父が遺した精の株式、の建物、ならびに個名義の現預約億千万円。これらはすべて、俺と慎ので均等に相続・分割する。おの取り分は円もない」
真は線をげず、え切ったコップの底を見つめた。
「……お父さんのご遺体は、まだ葬炉からがってきたばかりです。骨壺の温もりもめていないのに、今そのお話をしなければならないのですか」
「当たりだ」
慎が淡にを鳴らし、本革のブリーフケースから枚の類を取りしてテーブルに滑らせた。
「おはに嫁いでの籍を抜けただ。しかも今は旦に先たれたパート暮らしの未。悪いが、精は今、次世代の精密医療器部品への型設備投資という勝負の期に入っている。の、それも経営能力のないに株式を分散させる余裕などないんだよ」
義姉の美津子が、扇子で元を覆いながらくすくすと嘲笑を漏らした。
「そうよ真さん。の程をりなさい。あなた、学の頃からお父様に疎まれていたじゃない。お父様があなたに何か買い与えたことなんて度でもあった? 学費すら惜しんで、をたらすぐから追いした酷な父親よ。そんなお父様が、あなたのような女に銭でも遺すはずがないでしょう」
絵里もまた、ややかな線を浴びせる。
「入院の半、あなたが毎病院に通っていたのも見苦しかったわ。
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