"嫌われた娘の五十八億円" 第9話
桐弁護士が歩にると、黒革のアタッシュケースから、黄の封蝋が施された公正証遺言を取りし、会議の央テーブルへ叩きつけるように置いた。
「源蔵様の適法な公正証遺言に基づき宣告いたします。精の発済株式の百パーセント、本社の建物、ならびに全財産権は、株主である真様に単独で継承されました。修様、慎様、あなた方には本この瞬より、ミリの発言権もしません」
「ふ、ざけるなッ!」
修は机を力任せに殴りつけ、唾を撒き散らしながら喚きてた。
「そんな遺言、偽造に決まっている! 親父がこの俺を差し置いて、にをた女に会社を渡すはずがない! おい鮫島弁護士、何とか言え! 俺たちには遺留分があるはずだ! 遺留分侵害額請求を起こして、会社の株式と資産の半分を差し押さえてやる!」
黒崎側の鮫島弁護士がちがり、えたネクタイを弄りながら笑いを浮かべた。
「ええ、修専務の仰る通りです。直系卑属である実子には、どんな遺言があろうと最限の遺留分を請求する法権利が保障されている。遺産全体の分のは修氏と慎氏の正当な取り分だ。それを渡さないというなら、即座に資産仮差押えの続きに入り、を競売にかけて――」
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「鮫島先。その遺留分の対象となる『源蔵の遺産』の内訳を、よくご確認なさった方がよろしいですよ」
桐弁護士が淡に遮り、通の分い国際監査報告と財務細を鮫島の目のに滑らせた。
鮫島弁護士は怪訝そうに眉をひそめながら類をめくったが、頁目を読んだ瞬、その顔から急速に血の気が引き、持っていた級万を取り落とした。
「な……んだ……これは……!? スイス・ノバルティス・インスツルメンツ社からの特許使用料……総額億円……!? 権利者名義は『真』単独……!? 精の会社資産ではなく、個が保する国際特許権だと……!?」
「ええ、そうです」
真が歩にみた。
「お父さんは、私がに描いた流体制御ノズルの設計図をもとに医療用臓バルブの特許を取得し、その使用料の全額を私の個信託座にプールしていました。精の庫にあるのは、お父さんがあなたたち欲な連を欺くために図に残した『見せかけの赤字』と『帳簿の負債』だけです」
「な……にを……?」
慎が震える声で呟き、ガタガタと膝を震わせ始めた。
桐弁護士が、逃げを完全に塞ぐように宣告を続ける。
「そして公正証遺言に基づき、修様と慎様に相続されるのは、精が黒崎ホールディングスから背負わされた『簿債務千万円の連帯保証義務』のみです。
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あなた方が遺留分を主張して裁判を起こせば起こすほど、暴力団の借をあなた方個が直接返済する義務だけが法に確定します」
「う、嘘だろ……!? なんで俺たちがヤクザの借を背負わなきゃならないんだよ!?」
慎はそのにへたり込み、腰を抜かした。
義姉の美津子がヒステリックに絶叫しながら真に掴みかかろうとした。
「あなた! 何とかしなさいよ! 億円って何よ!? あの棒猫を今すぐ殴り倒して、遺言を破り捨てなさいよ! 私たちのタワマンはどうなるのよ!?」
絵里も泣き叫びながら慎の胸ぐらを揺さぶった。
「あんた信託の融資課でしょ!? 何とか計算しなさいよ! 息子の私の名の学費はどうするのよ!?」
修羅と化した役員会。罵声と鳴がび交う、会議の壁掛け型モニターが突如として自で起し、ノイズと共に継のニュース画面が映しされた。
画面には、警庁と京検特捜部の捜査員数名が、嶺会本部および黒崎ホールディングス本社ビルへ斉に制捜査(ガサ入れ)に入り、黒崎会以幹部全員に錠をかけて連していく々しい映像が映しされていた。
『――速報です。警庁組織犯罪対策部と京検特捜部は本午、組織犯罪処罰法違反、銃刀法違反、ならびにマネーロンダリングの容疑で、黒崎ホールディングス会・黒崎らを斉摘発、逮捕しました。
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