"残飯の花嫁" 第4話
加害者ではなく、自分が周囲へ迷惑をかけるとい込んでいる。その考え方自体が、半の支配によって霞へ植えつけられたものだった。
「今、守らなければいけないのは向こうの評判じゃない。お姉ちゃんの命だよ」
私は霞のを握った。
「診察を受けるかどうかは最にお姉ちゃんが決めていい。でも、私は緒にく」
霞はい迷った、さく頷いた。
科と療内科のある総病院で診察を受けると、医師は霞の栄養状態を見てすぐに検査を指示した。体は結婚より11キロ減り、貧血と脱、複数の打撲傷が確認された。
診察でをめくった霞は、医師が傷に触れるたびに体を張らせた。男性職員が廊を歩く音だけで怯え、何度も入を振り返った。
医師は、傷の位置と状態を診断へ記録した。
「すぐに同居先へ戻ってはいけません。全な所で休んでください」
その言葉を聞いた霞は、初めて自分が逃げてもよいのだと認められたように泣いた。
病院をた、私たちは警察署の相談窓へ向かった。
すぐに事件として件できるかどうかとは別に、相談記録を残しておくことがだった。義実が押しかけたに備え、マンション周辺の巡回も依頼した。
自宅へ戻ると、霞の携帯話には、さらに数件の着信が入っていた。
広告
今度は孝志ではなく、義母の悦子から話がかかってきた。
私は霞と相談し、応答することにした。
携帯話をテーブルへ置き、別の端末でも録音を始める。霞には隣へ移ってもらったが、扉はけたままにし、いつでも私の顔が見えるようにした。
「もしもし」
『この馬鹿嫁、やっとたわね!』
を刺すような声が響いた。
霞は隣で肩を震わせている。私はを抑え、落ち着いた声で名乗った。
「ご無汰しております。霞の妹の桃子です」
瞬、沈黙があった。
しかし悦子は態度を変えなかった。
『妹? あんたのところに逃げ込んだのね。今すぐ連れてきなさい』
「姉から事を聞きました。事を与えず、暴力を振るっていたそうですね」
『暴力じゃないわよ。しつけよ』
悦子は悪びれる様子もなく答えた。
『親のいない子だから、嫁としての常識を何もらないの。私がから教えてあげていたのよ』
「残飯をべさせることも、しつけなのですか?」
『べ物を粗末にしない教育よ。あの子は贅沢なの。し古いくらいでべられないとか、に落ちたから嫌だとか。うちでは通用しないわ』
「昨、親戚のでごみをへ押し込んだそうですね」
悦子は甲く笑った。
『げさね。みんなも笑っていたでしょう? 楽しい宴会だったのに、あの女が急に逃げて台無しにしたのよ』
自分ので認めた。
広告
私はりでが震えるのを、テーブルので押さえた。
「孝志さんが姉を殴ったことは?」
『夫が嫁を教育して何が悪いの? 霞が吐いたものを畳へ散らかしたから、叩かれて当然でしょう』
「お義父様が入浴を覗き、寝へ入ったことも聞いています」
『あれは霞の方から誘ったのよ。あの子、父親のいない女でしょう? の男に目を使って守ってもらう癖があるのよ』
「姉は嫌がっていたと言っています」
『姉妹で男に取り入ってきているんじゃないの? あんただって同じようなものでしょう』
罵倒を続ければ続けるほど、悦子は自分たちの為を詳細に認めていった。
最には、もし霞が妊娠していても森本の孫とは認めない、勝に産ませるつもりはないとまで言った。
私は録音を確認した。
これ以、話を続ける必はなかった。
「分かりました。度、正式に話しいましょう。はこちらから連絡します」
『話しうも何も、あの子が謝れば済むのよ。あんたも緒に来なさい。姉妹まとめてしつけ直してあげるから』
「姉は当面、こちらで保護します」
『保護? 笑わせないで。嫁は森本のよ。勝なことをすれば、そっちのへ迎えにくから』
悦子は乱暴に話を切った。
録音を止めると、張りつめていた力が気に抜けた。
隣からてきた霞は、真っ青な顔をしていた。
「やっぱり私、戻って謝った方がいいのかな」
「どうして?」
「桃子やおじいちゃんのに来るって。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
十字の紙片と売られた生家
「母さん、老人ホームに入れ。この家も売る」息子夫婦はカナダ移住を前に、相場の半値以下の査定書と山奥の隔離施設のパンフレットを突きつけてきた。共働きで多忙な彼らに代わり、十年間孫娘を育て上げ、遺産から数百万円を用立ててきた私への仕打ちがこれだった。絶望に沈む私の手に、高校生の孫娘が震えながら押し込んだのは、固く折られた「十文字のチラシの紙片」。「明日の朝までに、実印と通帳は絶対に渡さないで」。深夜二時、一人で開いたその紙には、全てを覆す戦慄の計画が記されていた。私は仏壇の隠し金庫に手を伸ばし――。祖父母と孫|介護2.4万字5 426 -
完結第15話
不当解雇された高卒技術者の特許逆転劇
精密機械メーカーの技術者・中村誠は、高卒叩き上げであることを理由に、名門大卒のエリート上司・北川部長から「掃除とオイル交換しかできない無能な雑用係」と見下されていた。ある日、大口顧客向けの製品に二百個超の大量不良が発生。北川は自らの設定ミスを隠蔽し、誠を犯人に仕立て上げて責任を押し付ける。深夜に真相を暴くアクセスログのUSBメモリーを確保した誠だったが、直後に車に撥ねられ全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。病室から連絡を入れると、北川は「好都合だ、クビにしておく」と嘲笑し電話を切った。だが誠が病室のベッドから特許庁へ出願した一枚の技術書類と、彼が去って完全沈黙した工場の製造ラインが、欺瞞に満ちた組織に前代未聞の崩壊をもたらす――。職場逆転|人生逆転2.5万字5 430 -
完結第14話
高卒エースを掃除係に落とした無能社長
大手玩具メーカーの営業エース・篠田零司は、高卒叩き上げながら十二年間にわたりトップの成績を維持してきた。だが、恩師である先代の矢吹会長が病で倒れ、新社長に就任した倉島哲也から全社報告会で突如「先月の達成率は三十パーセント、部内最下位のお荷物だ」と虚偽の数字で公開処刑される。強烈な学歴コンプレックスと嫉妬を燃やす倉島は、篠田を社長室の雑用係へと追いやったばかりか、彼が一年かけて心血を注いだ総額百億円の大型独占契約を故意に破談へ追い込む暴挙に出る。しかし、篠田の手元には「確定売上高一億四千二百万円」を証明する売上管理ファイルの原本が存在していた。理不尽の極みの中で静かに退職届を差し出した篠田。だが、現場の異変を察知した車椅子の矢吹会長が立ち上がり、握りつぶされた証拠が暴かれたとき、欺瞞に満ちた社長室に前代未聞の鉄槌が下される――。職場逆転|人生逆転2.9万字5 208 -
完結第14話
偽りの血液型
花屋で働くさやかは、名門病院の跡取り・谷本勇吾と結婚した。しかし命懸けの出産直後、病室に乗り込んできた元女優の義母・早苗から「この尻軽女!」と胸倉を掴まれる。新生児室の娘の髪は、純日本人の夫婦からはあり得ない見事な「金髪」だった。 さらに夫の元恋人である看護師から「子の血液型はA型。B型の夫とO型の妻から生まれる確率は0%」と宣告され、さやかは「托卵妻」の濡れ衣を着せられて無一文で追い出されてしまう。 信じてくれない夫と冷酷な義父母に絶望し、一人娘の凛を育てるさやか。そんな彼女を密かに支え続けたのは、義母から疎まれていた義弟の慎司だった。 12年後、美しく成長した娘の前に再び現れた元義家族。その裏に隠されていた、改ざんされた検査結果と、名家を揺るがす戦慄の「DNA鑑定書」とは——。祖父母と孫|修羅場2.1万字5 328 -
完結第11話
夫の毒膳と孫の告発〜元科捜研妻の科学鑑定〜
元科学捜査研究所の分析官だった岩田礼子(五十八歳)は、交通事故で息子夫婦を失い、遺された五歳の孫・陽太を夫の国彦と共に引き取って育てていた。 しかし息子の死後、礼子は原因不明の酷い目眩や全身の脱力感に苛まれるようになる。献身的に看病し、料理教室へ通って手料理やサプリメントを振る舞う「理想の夫」国彦。だが、体調は悪化の一途を辿り、ついに出張前日に夫が作り置いた筑前煮を口にした直後、礼子は急性中毒で意識不明に陥ってしまう。 九死に一生を得て帰宅した夕暮れ、テレビのサスペンスドラマで睡眠薬をすり潰す犯人を見た陽太が「おじいちゃんのと同じだ」と無邪気に叫んだ。古巣の科捜研に持ち込んだ筑前煮とサプリメントから検出されたのは、致死量寸前の睡眠薬――優しい夫の仮面の裏に隠された、身の毛もよだつ殺意と陰謀とは。祖父母と孫|夫婦1.6万字5 265 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 216 -
完結第14話
年商一兆円の父にワインをかけた婚約者
創業家の御曹司との顔合わせ当日。ボロ車で駆けつけた私の父を見た義母は、「貧乏人の娘が」と父の頭から赤ワインを浴びせかけた。婚約者も冷笑し、父を詐欺師呼ばわりしてロビーで土下座を迫る始末。 だが、父は一言も取り乱さず、静かにワインを拭った。 「この縁談はなかったことに」 指輪を投げ返し、父の向かった先は日本中が恐れる巨大財閥の最上階。傲慢な親子が信じていた“金と権力のルール”で、静かな断罪劇が幕を開ける。因果応報|人生逆転|金銭問題|修羅場2.1万字5 129 -
完結第13話
二十七年目の嘘
58歳で急死した夫の遺品を整理していた美智子は、引き出しの奥から27年前の「採用内定通知書」を見つける。当時不合格だと思い込んでいた東京の出版社からのものだった。封筒の裏には夫の筆跡で「辞退連絡済」。夫はなぜ私の人生を勝手に奪ったのか。さらに、夫の出世作となった伝説の住宅企画が、かつて自分が書いた企画ノートそのものだったことを知る。奪われた名前と人生を取り戻すため、妻が下した決断とは。人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係2.0万字5 57