"娘の遺した手紙" 第3話
美緒の治療費をし渋り、計へ渡す活費まで減らしていた男が、には惜しみなくを使っている。
「勤務先の経費を正に流用している疑いがあります。架空の注先へ送した、複数の座を経由して賢治氏の管理する会社へ入されていました」
「会社まで持っているの?」
「名義のペーパーカンパニーです」
が別の写真を示した。
そこには、私がっている女性が写っていた。髪形も化粧も病院で見たとは違ったが、違いない。
「美緒の病棟にいた護師……」
「真美、29歳。賢治氏とは約3から交際し、2のには1歳になる男児がいます」
界が揺れた。
美緒が入退院を繰り返していた、賢治は病院の護師と関係を持っていた。そのに別の子どもまでまれていたのだ。
「真美さんは、美緒の担当だったの?」
「主担当ではありません。ただし、夜勤に何度か美緒お嬢様の病を受け持っています」
嫌な胸騒ぎがした。
美緒がくなった夜、私は病院にいなかった。
美緒から欲しい本があると言われ、度帰宅して取りに戻った。ところがその途、賢治から「俺が病院へくから、おはし休め」と話があったのだ。
珍しく父親らしいことを言うとった。
だが、夜に病院から容体急変の連絡が入り、私が駆けつけた、美緒はすでに肺止状態だった。
広告
賢治は病にいなかった。
「さん、美緒がくなった夜のことを調べているのね?」
は慎に頷いた。
「病院関係者から、気になる証言がありました。ただ、現点で因に審な点があると断言できる段階ではありません」
「何があったの?」
「美緒お嬢様のナースコールへの対応が遅れた能性があります。また、投薬記録と薬剤の残数に、わずかない違いがあるそうです」
私は子の背へをついた。
「まさか、あの2が……」
「まだ結論をしてはいけません」
はい調で制した。
「りに任せてけば、相に証拠を消すを与えます。病院へはすでに記録保全を申し入れ、代理を通じて正式な調査をめています」
私はく息を吸った。
美緒を失ったしみに、夫の裏切りがなる。今にも崩れ落ちそうだったが、母親として確かめなければならないことがあった。
「もう1つ、賢治氏は美緒お嬢様の保険を請求する予定です」
「美緒に命保険?」
学資保険と医療保険には加入していたが、3,000万円もの保障をつけた覚えはない。
「賢治氏が契約者となり、陽子様の署名を偽造して追加契約を申請した疑いがあります。美緒お嬢様の病歴が正しく告されていないため、保険会社も調査を始めています」
吐き気がした。
娘のを悼むどころか、それをに換えようとしている。
広告
「、保険会社へくそうです」
「私もきます」
「直接対面されるおつもりですか?」
「ええ。あのが美緒のをどう扱うのか、自分の目で見たい」
は止めなかった。
「では、弁護士と警備担当者を同させます。それから、の午には賢治氏の勤務先でな会議があります」
賢治が社運を懸けてめている、投資会社との共同発計画。その投資会社の本事業へ資を供し、最終承認権を持つのも、私の資産管理会社だった。
賢治は、その事実をらない。
「契約は止めないで」
私は言った。
「の会議までは、予定通りめてください」
が私の図を察し、静かに頷いた。
賢治には、自分ので、自分が何をしたか語ってもらう。
そして番い所までったところで、元に何があるのかを見せるのだ。
翌朝、賢治は嫌で目を覚ました。
陽子を追いしたには、もう線のりも、娘を悼む沈黙も必ない。彼は美緒が育てていたベランダの鉢植えを見つけると、ごとごみ袋へ放り込んだ。
午8を過ぎた頃、玄関の鍵がいた。
派な桃のワンピースを着た真美が、慣れた様子でへ入ってくる。鍵を持っているところを見れば、陽子がのにも何度も入りしていたのだろう。
「やっと、あのを追いしたんだね」
真美は賢治の首へ腕を回した。
「ああ。昨、泣きながらていったよ。今頃はい宿でも探してるんじゃないか」
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 471 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 614 -
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 201 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2990 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 397 -
完結第32話
不妊を理由に別れた元妻が、機内で双子を抱いていた
5年前、妻・小百合に「ほぼ不妊」という診断が下された瞬間、俺は後継ぎを求める父の言葉に従い、彼女へ離婚届を突きつけた。あの選択は正しかった――そう信じて生きてきた俺の前に、ファーストクラスで小百合と、自分に瓜二つの幼い双子が現れる。 真相を追ううち、俺は恐ろしい事実に辿り着く。不妊診断そのものが偽りであり、小百合は両親まで脅され、何も言えないまま俺の前から消えていた。そして、その全てを裏で仕組んだのは、俺が誰より尊敬してきた父だった。 さらに、本当に問題を抱えていたのは小百合ではなく俺自身で、双子は離婚直前に宿った俺の子供だと判明する。 妻を捨て、子供たちの5年間まで奪ってしまった俺は、もう父の作った「正しい人生」に従うつもりはない。失った家族と向き合い、父が守り続けてきた巨大な権力と秘密に、自分の手で決着をつけると決めた――。夫婦|熟年離婚4.9万字5 8453 -
完結第10話
妹が断った牡蠣漁師は、港の社長だった
「貧乏な漁師なんて絶対に嫌」――妹・美咲が鼻で笑って断った縁談を、35歳の私・香織が代わりに受けることになった。幼い頃から何でも妹を優先され、「我慢できる姉」として生きてきた私にとって、それは初めて自分で選んだ人生だった。 相手の総一郎は、古い家と軽トラックで暮らす不器用な牡蠣漁師。ところが島では誰もが彼に頭を下げ、格式高い老舗料亭まで最上級の敬意を払う。やがて大嵐で加工場が壊れ、会社が存続の危機に陥る中、私は書店員時代に培った「名前と物語を届ける力」で直売所を立ち上げる。そんな矢先、総一郎の本当の立場を知った母と美咲が現れ、「その縁談は本来、美咲のものだった」と言い出す。そして料亭に掛けられた、値段も生産者名もない古い「牡蠣」の木札が、夫にも知らされていなかった過去へとつながっていく――。夫婦|修羅場1.4万字5 743