"最後の上映会" 第2話
これで座の歴史は終わった。清治はそうっていた。
ところが翌週の曜、閉じた扉のに、見覚えのない属製の箱が置かれていた。
111の午7、清治は商の共同清掃に参加するため、座のを通った。朝で濡れた段のに、直径30センチほどの丸いフィルムケースが置かれていた。表面には赤茶の錆が浮き、持ちには古い麻紐が結ばれていた。
清治はケースを持ちげ、周囲を見回した。商には聞配達の自転がっているだけで、誰かがちる姿は見えなかった。ケースには送り状も宛名もなく、郵便や宅配便で届いたものではないようだった。
には本の8ミリフィルムと、さく折り畳まれたが入っていた。をくと、青い万でい言葉がかれていた。
〈今週も映してください〉
「閉まった映画館に、何を言ってるんだ」
清治は苦笑した。座の映写は35ミリフィルム用であり、8ミリを映す械は倉庫の奥にある庭用映写しかなかった。誰かが閉館を惜しみ、冗談で置いたのだろうと考えた。
そのはケースを事務へ運び、机のに置いた。館内の備品を理していると、何度もケースが目に入り、結局捨てることができなかった。タイトルも撮者の名もなく、フィルムの端に数字がさくかれているだけだった。
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数、姪の子が片づけを伝いに来た。30歳の子は商の文具へ嫁いでおり、子供の頃から切符売りの文子を伝っていた。
「映してみればいいじゃない。送り主も、それを待っているんでしょう」
「閉館した館で、誰に見せるんだ」
「叔父さんが見ればいいのよ。映してくださいといてあるだけで、お客を入れろとはいてないもの」
子の言葉に、清治は返事をしなかった。見てはいけないという理由もなかったが、正体の分からないフィルムを映すことに、わずかなをじていた。
翌週の曜、2本目のケースが届いた。今度は座の裏に置かれ、同じ跡で〈今週も映してください〉と記されたが入っていた。
3週目は切符売りの窓にてかけられていた。4週目にはがっていたが、ケースは油に包まれ、のフィルムが濡れないよう丁寧に守られていた。
清治は毎週、午6半には座へき、送り主を待つようになった。しかしケースは、清治が到着する直に置かれているらしく、度もを見つけられなかった。
郵便局員の岡部にも尋ねたが、当たりはなかった。商の々へ聞けば噂が広がるとい、詳しい事は話さずにいた。
12最初の曜、5本目のフィルムが届いた。そのの午からがくなり、片づけを断した清治は、誰もいない客席へ座った。
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井を打つ音を聞きながら、スクリーンのに積みげた5本のケースを眺めた。
倉庫の奥には、文子がに買った8ミリ映写が残っていた。映写は、町内会の運会や旅の記録を見るため、何度か貸ししていたものだった。埃をかぶっていたが、ベルトを交換して油を差すと、まだいた。
清治は最初に届いたフィルムを取りし、慎にリールへ掛けた。照を消すと、閉館以来初めて客席が暗に包まれた。
さな映写が乾いた音をて、スクリーンにいが揺れた。8ミリの映像は粗く、最初の数秒は何も映らなかったが、やがて見覚えのある通りが現れた。
それは昭32頃の杏通り商だった。
はまだ舗装されておらず、子供たちが埃をげながらっていた。百のには箱に入った根が積まれ、魚の主が氷のへ魚を並べていた。画面の奥には、塗装されたばかりの座の板が輝いていた。
清治は席からちがり、スクリーンへづいた。商の角を曲がってきた若い女性が、カメラに気づいて笑った。
青果を営む柴田の妻、千代だった。5にくなった彼女が、20代の姿で買い物籠を抱えて歩いていた。
続いて、玩具ので独楽を回すたちが映った。そののは、現の商会である岡野だった。
子を取りい、カメラへを投げる子供たちの姿を見て、清治はわず笑った。