"最後の上映会" 第9話
清治は切符売りへった。入料は取らなかったが、文子が使っていた切符鋏で、記の入券へ枚ずつ形の穴をけた。
「これ、子供の頃にもらった券と同じだ」
50代の男性が懐かしそうに笑った。その隣では、学の孫が古いの券を議そうに眺めていた。
午1、180席はすべて埋まった。通や方にもがち、静かなざわめきが館内を満たした。
清治はスクリーンのへち、く挨拶した。
「座は、の10に閉館しました。それなのに今、こんなにくの方が座っています。映画館を続けられなかった館主として、うれしいと言っていいのか、申し訳ないと言うべきなのか、今も分かりません」
客席から「よく続けてくれた」という声ががった。清治はをげ、言葉を続けた。
「正君が残してくれた映像は、町の々の常でした。特別なではなく、毎をけ、族を育て、働いていた私たちの姿です。今の映を最に、この建物は役目を終えます。でも映像は、町の皆さんと緒に残します」
清治が映写へがると、正夫が発の状態を確認していた。2は顔を見わせ、ゆっくり映写を始させた。
械が回り、暗い客席のに本のが伸びた。
座、最の映が始まった。
最初に流れたのは、これまで届いたフィルムから選ばれた町の景だった。
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の入学式、祭り、の運会、のの商が代順に映しされた。
客席の々は、自分や族を見つけるたびにさな声をげた。くなった者の姿が現れても、以のように泣くだけではなく、隣のへその物とのいを囁く声が聞こえた。
映像は、見るのに閉じ込められていた記憶を引きし、別のへ渡していった。子供や孫たちは、若かった祖父母がり、笑い、働く姿を初めて目にしていた。
約40分の町の記録が終わると、度スクリーンが暗くなった。清治は映写で、正が最に残したリールへ交換した。
フィルムの冒には、昭29ときされたが映った。次に現れたのは、座の裏だった。
20代の清治が、材やペンキ缶を運んでいた。父親から館を任され、規模な修繕をっていた頃の映像だった。清治自は撮されたことをまったく覚えていなかった。
画面のの清治は、客席のを磨き、座席のねじを締め、映写でフィルムをつないでいた。失敗してフィルムをへ落とし、を抱える姿まで映っていた。
客席から笑いが起きた。清治も映写の窓から画面を見つめ、若い自分の器用なきにわず元を緩めた。
やがて切符売りに文子が現れた。まだ結婚で、髪をつに結び、作りの制を着ていた。
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カメラを持つ正へ何か話した、清治を指さして笑っていた。
無声映像のため、何を言っていたかは分からなかった。しかし文子の表を見れば、清治を撮ってほしいと頼んでいることが伝わった。
映像は、清治がらなかった所から彼の常を追っていた。朝番に板を磨く姿、客のいないに座席で眠る姿、漏りを直すため根へがる姿。文子は折カメラのへ現れ、正へ次に撮る所を示していた。
清治の胸に、正の言葉がよみがえった。
〈文子さんに頼まれて撮ったんです〉
ある夜、映を終えた清治がで客席を掃除していた。文子は切符売りから戻り、彼の背へ古い着を掛けた。清治が振り返ると、2は何かを言いい、最には笑って並んで座った。
清治はその夜をいした。映画館の経営が苦しく、父親から別の仕事を探せと言われていた頃だった。
「この館を続けるがあるのか分からない」
若い清治が音を吐くと、文子は客席を見渡して答えた。
「今ここに誰もいなくても、誰かが来るかもしれないでしょう。そのが来た、映画が始まるようにしておくのが私たちの仕事よ」
清治はその言葉を忘れていた。文子がくなってからは、苦しかった最の数ばかりをいし、2でになって館を作った頃の記憶はくなっていた。
スクリーンでは、座のしい板が取り付けられていた。