"手書きの時刻表" 第4話
「この駅へ戻ってきた頃だから、30くだな」
「どうして始めたんです?」
田はしばらく黙り、改札の向こうを見た。
「戦争が終わってもない頃、この町へ戻ってきた兵隊がいた。本という男だった」
本は復員、族が疎先から戻るをらされ、毎川駅へ通った。しかし混乱の代で列の運は定で、予定通り来ないが続いた。
駅員だった田は、「今も来ません」とだけ告げていた。
「わしは、刻を聞かれているとっていた。だが本さんがりたかったのは、族が今どこにいて、いつ会えるのかということだったんだ」
田は本線の駅や貨物担当者へ問いわせ、族が乗る能性のある列を調べた。4目の夜、遅れて到着した列から妻と幼い息子がりてきた。
本はホームへ膝をつき、2を抱きしめて泣いた。
「そのにった。列の刻だけを見ていては、駅へ来るが何を待っているのか分からんとな」
以来、田は利用者から聞いた切な予定をき留めるようになった。
最初はさな帳だった。それが増え、刻表と結びつき、毎作り直すノートになった。
「でも、個の事を記録することを嫌がるもいるのではありませんか?」
は率直に尋ねた。
「もちろんだ。聞かれたくないには聞かん。ったことも、必以にはかない。
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誰かに見せるための名簿ではないからな」
「では、田さんが退職したらどうするんです?」
田は答えなかった。
その沈黙が、の疑問をさらにきくした。
田の記憶と柄に支えられた方法は、確かに温かい。だが、1の駅員がいなくなれば失われるのなら、駅の仕組みとしては完全ではないか。
は、その夜から自分なりの記録を始めた。
個の事を勝にくのではなく、利用者が駅へ伝えてよいと認めた予定だけを、誰でも見られる業務誌へ残す。田のノートとは別に、引き継げる仕組みを作ろうと考えたのだ。
初めの数は、くことがなかった。
利用者の名は分かっても、そのがなぜ列へ乗るのか、はほとんどらなかったからだ。
切符を売る、しずつ会話をするようになった。
「今はですか?」
「お孫さんのところへかれるんですか?」
「帰りの列はお決まりですか?」
尋ね方を違えれば、相を詮索しているように聞こえる。忙しい客へ話しかければ、かえって迷惑になる。
は何度も失敗した。
それでも、利用者たちはしずつ話してくれた。
駅は発するだけが来る所ではない。
術を終えた族を迎える。都会へ就職する息子を見送る。喧嘩した娘が帰省するかもしれないと、何も待で待つ母親。
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同じ列へ乗るにも、それぞれ異なる理由があった。
その事実に気づくほど、印刷された刻表の数字が、以とは違って見えるようになった。
昭459、国鉄支局からのダイヤ改正案が届いた。
利用者のない列を理し、運効率をめることが目だった。川駅では、午914分に到着するり最終列が廃止され、1本の午736分が最終になる予定だった。
は資料を確認し、理な判断だとった。
午914分の列でりる客は、平均して13ほどしかいない。両や員の費用を考えれば、廃止されても仕方がない。
田は改正案を見ると、きのノートをいた。
「曜は、川由紀がこの列を使う」
「部活なら、く帰るよう学へ頼むべきです」
「曜には、隣町の診療所で働く本さんが乗る。末はの遅番が5いる」
「それでも数はくありません」
「数だけを見ればな」
田は利用状況を調べ、廃止によって響を受ける民の名をきした。駅を通して支局へ見を送ったが、決定は変わらなかった。
「利用者がない以、仕方がないですよ」
が言うと、田は静かに尋ねた。
「君にとって、『ない』とは何からだ」
「それは運経費との比較で決まります」
「3なら切り捨ててもいいのか。10なら残すのか」
「鉄は慈善事業ではありません。すべての列を残せば、全体が維持できなくなります」
の言葉は正しかった。