"15年後に消えた罪" 第10話
「15、妹がなぜいなくなったのか分からない苦しみがありました」
「でも、最に真実をることができて、本当によかったとっています」
田は、そのを何度も読み返した。
刑事として仕事をしてきたで、くの事件に関わった。
犯を捕まえること。
証拠を集めること。
それはもちろん切だった。
しかし、本当に必なのは、残されたたちがへめるようにすることなのかもしれない。
田はそうった。
方、刑務所に収監された藤浩は、静かな々を送っていた。
以のような銭への執着は、もうなかった。
面会に来る親族もほとんどいなかった。
当然だった。
彼が壊したものは、あまりにもきかった。
ある、浩は刑務官に枚のを渡した。
そこには、被害者への謝罪文がかれていた。
藤商司へ。
佐野恵美里さんへ。
そこには、何度もき直した跡が残っていた。
「申し訳ありません」
何度いてもりない。
どれだけ謝っても、失われた命は戻らない。
それを浩自も分かっていた。
「もし、あのに戻れるなら……」
浩は独ので何度も考えた。
が欲しかった。
楽になりたかった。
ただ、それだけだった。
しかし、そのために奪ったものは、額では計れないものだった。
15。
浩は500万円をに入れた。
借を返した。
には楽になった。
だが、その代わりにの全てを失った。
広告
自由。
族。
信用。
そして、自分自への尊厳。
欲しかったものをに入れた瞬、彼は最も切なものを失ったのだった。
あるの。
田は久しぶりに世田を訪れた。
昔の事件現だった所を見るためだった。
そこには、もう古い造宅はなかった。
しいが建ち、普通の族が暮らしていた。
庭では子供が遊んでいる。
母親が洗濯物を干している。
どこにでもある常。
田はしばらくその景を見ていた。
15。
この所での命が失われた。
しかし今、この所にはしい活がある。
劇の所にも、は流れていく。
それはたいことではなく、がきていく力なのかもしれなかった。
その帰り。
田はくのさな商にち寄った。
主の老と話していると、偶然昔の話になった。
「そういえば、この辺りに昔、藤さんっていうがんでいましたよね」
田が聞くと、老は頷いた。
「ああ、覚えていますよ」
「無なでしたけどね……悪いじゃなかった」
老は懐かしそうに笑った。
「毎になると、所の寄りに灯油を届けてくれたんですよ」
「自分だって齢なのにね」
田は黙って聞いていた。
事件では、藤商司は被害者としてられるようになった。
しかし、そのにのとしてきていた。
誰かを助けたこと。
誰かに優しくしたこと。
広告
それもまた、彼のの部だった。
そして佐野恵美里も。
彼女のことを覚えているはいた。
以働いていた齢者たち。
同僚の介護士たち。
彼女が作った事。
掃除をしながら話した何気ない会話。
さな親切。
それらは事件の記録には残らない。
しかし、の記憶のには残り続ける。
2004。
事件から20くが経った頃。
警察の研修で、藤災事件が教材として扱われることになった。
テーマは「過の事件から学ぶ捜査の性」。
若い警察官たちは、資料を読みながら驚いた。
15には解決できなかった事件が、最技術によってらかになったこと。
そして、最まで諦めなかった々がいたこと。
講師は最にこう話した。
「事件は、が経てば消えるわけではありません」
「残された証拠には、必ずがあります」
「そして何より、の命には必ずさがあります」
教は静まり返った。
世田の。
あのと同じように、たいが吹く季節。
しかし、もうあのから煙ががることはない。
そこには、しい族のかりが灯っている。
誰かが夕を作り。
誰かが笑い。
誰かがの予定を話している。
当たりの活。
しかし、その当たりこそが、何より切なものだった。
藤商司は、財産を残した。
しかし、本当に残したものはではなかった。
広告
静かにきる姿。
をいやる姿。
そして、で何を切にするべきなのかという教訓だった。
佐野恵美里は、いだった。
しかし、彼女が助けた々の記憶ので、今もき続けている。
方、藤浩の犯した罪も消えることはない。
15というが経っても。
最技術が事件を解決しても。
奪われた命は戻らない。
だからこそ、この事件が残したものはつだった。
は、瞬の選択で未来を変えてしまう。
さな欲望を許すのか。
それとも、踏みとどまるのか。
その違いが、をきく分ける。
1984。
世田の静かな宅で起きた災。
それは、ただの事ではなかった。
の老。
の介護士。
そして、欲望に負けたの甥。
3のが交差した劇だった。
15、真実はらかになった。
しかし、本当ので事件が終わったのは、々がそこから何かを学び、未来へみ始めただった。
過は変えられない。
失った命は戻らない。
それでも、はへむ。
残された々がき続ける限り。
記憶が受け継がれる限り。
そのがした証は、決して消えることはない。
完
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51