"300億円が消えた結婚式" 第5話
付と相の名をく癖は会社を始めてからついた。いておくとで自分の記憶を疑わずに済む。
帰り、えりさんは駅の改札のでを止めた。
「あの、未令さん。」 「はい。」 「私、父に1度だけ言い返したことがあるんです。」
6の顔わせの翌だったという。周さんが夕の席で「あの男はやめておけ」と言った。えりさんはこう答えた。
「私40がいんです。相を選ぶ権利くらい私にもあるはずです。」
座敷が静まり、母親が「えり」と言った。それだけで終わった。それだけなんです。それだけで私、臓が止まりそうでした。
「分ですよ。」 「分じゃないです。」
えりさんは鞄の持ちを握っていた。
「琢磨さんは20歳のに1であなたを育てるって決めたんですよね。それを聞いてから私、自分が恥ずかしくて……」 「比べるものじゃないです。」 「比べたいんです。しでもづきたいから。」
私はその言葉を信じた。兄と2になったのはその帰りだ。アパートまでの15分を歩いた。
「いいだね。」 「だろ。」 「うん。」
兄は自販売のでち止まって缶のお茶を2本買った。1本私に渡した。
「あのといるとな、俺は普通のでいられるんだ。」 「普通って?」 「兄でも主でも庶民でもない。ただの琢磨だ。」
プルタブをける音がした。43歳になってやっとそういう相に会えた。私は何も返せなかった。23、このが自分のために目を望んだところを私は度も見ていなかったからだ。
広告
週がけた曜、私は兄の会社のまでった。昼休みに寺田さんというがてきた。兄と同じ資材課で20緒に働いている同僚だ。
「妹さんですか? 噂通りの美だ。」 「そんな噂があるんですか?」 「琢磨がに1回くらい言うんですよ。『妹がにいる』。それだけ。」
寺田さんは笑って、それから真顔になった。
「あいつの結婚式、俺、取りましたから。」 「へえ。」 「1018、もう課にしてあります。うちは曜も倉庫けてますから。」と寺田さんは付けした。まだ招待状もていない期だった。 「あいつ22ずっと同じ会社で1回もの悪を言わなかったんです。倉庫の棚卸しで数がわないも自分が数え直すんですよ。誰のせいだとも言わずに。」
寺田さんはタバコにをつけずに指で回していた。
「だからうちの課は全員きます。10いませんけど。」
私はその10分の顔をその勝にい浮かべてしまった。
「1つだけ伺ってもいいですか?」私はそう言った。「兄は幸せそうですか?」
寺田さんはタバコをポケットに戻した。
「20見てますけど、あんな顔は初めてです。」 「どんな顔ですか?」 「先の話をする顔ですよ。あいつ、今まで来の棚卸しの話しかしなかったんです。」
私はそのその言葉を聞いてして帰った。
希望というのは番いところまで持ちげられてから落とされる。
広告
持ちげたのが誰なのかも落とすまで分からない。
714、兄は招待客の名簿をえりさんに渡した。その名簿のき損じを私はで見せてもらっている。4枚いて3枚ダメにした。そのうちの1枚だ。会社の便箋にきで、が曲がらないように定規を当てて線を引いてある。資材課の10。そのうちの1が寺田さん。のの友が5。倉庫で緒だった元同僚が3。22に兄を採用してくれた元の司が2。23に創業を伝ってくれた所の夫婦。20通っている美容の主。それにおばの静さん夫婦。それに私。
「おばさんも呼ぶの?」 「呼ぶよ。『あの、施設』って言っただよ。」 「言われたのは事実だけどな。あのはあので典をしてくれた。」
兄はそういう数え方をする。の悪いところといいところを別々の欄にいてし算する。名簿は全部で26名だった。園部の側は114名だと聞いていた。わせて140名。比ロイヤルホテルの宴会が140の席で埋まる。
「ので誓うんだね。」 「柄じゃないんだけどな。」
兄は照れてをかいた。
812、その名簿の答えがた。えりさんから兄に招待状の案が届いた。兄はそれをそのまま私に転送してきた。件名は「これどうう」だけだった。
表をいて私はしばらく画面を見ていた。郎側の欄には名がびっしり並んでいる。
取引先の会社名、支、元の議員、商会の役員。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
出世ゴルフの朝、沈黙した妻
「一生話しかけるな。口を開いたら即離婚だ」 そう怒鳴り散らし寝室に鍵をかけた夫。翌朝、出世が懸かった役員ゴルフの起床予定から2時間半が過ぎていた。真琴は夫の言いつけを忠実に守り、一切声を出さず「起きる時間だよー」とLINEを1通だけ送信する。 午前7時15分、泡を吹いてパニックで飛び出していく夫。だが、彼が置き忘れた鍵で書斎を開けた真琴は息を呑む。そこにあったのは、3400万円に及ぶ不正なリベート記録と、真琴の実印を悪用して設立されたペーパーカンパニーの書類だった。 夫の恐るべき企みを知った真琴は、冷たく微笑み受話器を取る。「もしもし、弁護士先生――」夫婦|真実1.7万字5 753 -
完結第11話
遺体の上で眠り続けた十四年
「飲めよ、お前は永遠に俺のものだ」 毎年一月十七日の深夜二時、エリート弁護士の夫は一階の畳にウイスキーを注ぎ続けた。 再婚した由香里は、その和室の真上にある寝室で、得体の知れない悪夢に怯え十四年を過ごしてきた。 かつて震災の混乱の中、一カラットのダイヤの婚約指輪と共に忽然と消えた前婚約者。老朽化した別荘の床板が剥がされた瞬間、土中から十四年封じられていた「証拠」が姿を現す。 同時刻、ホスピスの老人が震える手で受話器を取り、警察へ告げた。 「お二人が店を出たのは、十七日の夜ではありません」 夫が十四年間、その真下へ注ぎ続けていた狂気の正体とは――。真実|行方不明1.6万字5 122 -
完結第14話
40度の熱で倒れた娘と、校門前の黒い高級車
40度を超える高熱で倒れた20歳の女子大生・桜。大学病院へ運ばれた彼女の身体から、医師は腰に広がる不自然なあざと、暴行を疑わせる損傷を発見する。 やがて桜は「脅迫されました」と涙ながらに告白。前夜、彼女を高級車に乗せた男は、金と人脈を持つ有名実業家・佐々木だった。 佐々木は奨学金や仕事の援助を装って近づき、拒絶すれば学生生活を壊すと脅していた。 さらに病院へ口封じの男たちまで送り込まれ、桜の携帯には脅迫メールや写真が残されていることが判明する。 そして捜査の最中、佐々木の車と関係する別の女子学生が失踪。自分だけの事件ではないと知った桜は、恐怖に震えながらも「もう沈黙しません」と証言を決意する――。真実|修羅場2.1万字5 1954 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 532 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 196 -
完結第10話
洋食屋の絆と、高級寿司屋の逆転
岡田悠斗は、高校生の時に両親を交通事故で亡くし、高卒の自動車整備士として働きながら、三歳下の妹・真央をたった一人で大学の法学部まで育て上げた。真央は猛勉強の末に難関の司法試験を突破し、弁護士として初任給をもらう。悠斗への感謝を込めて予約した高級寿司屋の席で、悠斗の職場の傲慢な上司・西村が偶然居合わせ、「工場で油まみれになって働く底辺の作業員」と悠斗と真央を激しく侮辱する。絶望と怒りが交錯する中、隣の席に座っていた一人の客が立ち上がり、西村を冷徹に一喝する。その男の正体は、かつて両親の営む洋食屋「ひまわり」で無銭の少年時代に助けられた大手IT企業の社長・藤井宗介だった。過去の恩返しと、血を分けた兄妹の絆が奇跡を引き起こす感動のヒューマンドラマ。兄弟姉妹|修羅場1.5万字5 652 -
完結第10話
従妹に貸した部屋が、半年で40回又貸しされていた
国家試験の勉強に使う――そう約束した従妹・さやが、私のマンションを他人に使わせ、密かに金まで受け取っていた。半年間、家賃も取らず信じて鍵を預けた私を待っていたのは、生活感が消えた不自然に綺麗な部屋だった。光熱費の異常な少なさ、玄関脇に残されたキーボックスの跡、そして靴箱の奥から見つかった、知らない5人宛ての郵便物。調べるほど、さやの「1人で勉強していた」という言葉は崩れていく。さらに彼女は、私の知らない人間に鍵を渡し、住所まで使わせていたことを認め始めた。親族だからと目をつぶることは、もうできない。私は写真、通話記録、利用履歴を残し、警察や関係機関へ相談することを決意する。だが、問題は無断利用だけでは終わらなかった。私の住所は、いったい何のために使われていたのか――。調べた先で、さらに不穏な事実が動き始める。兄弟姉妹|修羅場4.1万字5 318 -
完結第10話
売上300万元の牧場で、従兄が渡した分け前は200元
「300万元も売り上げたのに、俺の取り分はたった200元なのか?」――祖父から受け継いだ秘伝の飼育技術で従兄・大鵬の牧場を支え続けた私。しかし「利益は4対6」という約束は踏みにじられ、私はただの雇われ人だと切り捨てられた。 3年間の努力を嘲笑われた私は牧場を去り、最後の500元で病気に侵された50羽の獅頭ガチョウを買う。祖父の処方と自分の腕を信じ、恋人・小満とゼロから再出発すると、死にかけていたヒナたちは驚くほど回復していった。一方、私を追い出した大鵬の牧場では謎の病が広がり、300万元の大口契約まで危機に陥る。そんな中、私のガチョウを口にした一人の老人が、亡き祖父の名を聞いた瞬間に涙を流した――。兄弟姉妹|修羅場3.3万字5 180 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 96 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 150