クロスも皿もない暗い宴会場で、タキシード姿の兄が一人ぽつんと座っていた。「お兄ちゃん、えりさんは来ないって。結婚も式も全部ドッキリだったって」――それが、私の43歳の兄・琢磨が味わった地獄の始まりだった。 東和中央銀行の会長である父親やその家族は、年収620万円の建材会社主任である兄を「庶民」と見下し、前日の夜に勝手に式をキャンセルした上に、その屈辱的な一部始終を動画に収めて嘲笑っていたのだ。しかし、彼らは知らなかった。兄を虫けらのように扱ったその銀行に、私の経営するグローバル企業「ミレイビューティグループ」の全資産である300億円が預けられているという事実を。10年前、無一文だった私に兄が差し出した1000万円の連帯保証人の借用書が、今、静かに引き出しの奥から取り出される。 人間を肩書きと金だけで測り続けた傲慢な一族に、私が下す「本当の審判」とは一体何なのか。すべてを奪われた男の背後に隠された巨大な逆転劇が、今、幕を開ける。