"席次表から消された姉" 第15話
あの女が度とこの業界で働けないように、ネットにも実名で悪評をばら撒いてやる。おの姉を破滅させたくなかったらな、黙って席次表の通りに結婚しろ。式当は笑顔で僕の隣にって、鈴の完璧な嫁を演じ切るんだよ!」
それは、完全な宣戦布告だった。
私の族を、私のする姉を、ゴミのように踏み躙り、脅迫の具に使う男。 この男に、私のの1ミリたりとも渡してなるものか。 姉が守ってくれた尊厳を、私が汚させるわけにはいかない。
私は翔太の目を、瞬きもせずにまっすぐに見据え返した。 そして、の薬指に嵌められていた、冴子さんが「鈴の嫁にふさわしい最級のダイヤを」と指定して買わせた婚約指輪にをかけた。
プラチナのリングを、指からゆっくりと引き抜く。
「……美奈? 何してるんだよ」
翔太の声に、わずかな揺がった。
私は何も答えず、そのたい指輪をバッグの奥底へ放り込んだ。 そして、子の克己さんのに膝をつき、その震えるを両で優しく包み込んだ。
「お義父様。教えてくださって、本当にありがとうございました」
「美奈さん……すまない、本当に、すまない……」
涙を流す老に微笑みかけ、私はちがった。 そして、鬼のような形相で見ろしてくる翔太に向き直り、静かに、けれど鋼のようにい声で告げた。
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「の曜。料亭『松籟亭』で、両の最終確認の事会があるわね」
冴子さんが、私の姉を完全に排除し、結婚の主導権を握るためのにサインをさせるためにセッティングした、あの格式い料亭での会。
「そこへくわ。逃げも隠れもしない。……そこで、すべての決着をつけましょう」
「は……? 決着だと? お、母さんに逆らえるとってんのか!?」
背から投げつけられる翔太の罵声を切振り返ることなく、私はテラスの扉をけた。 のたいが、照った頬を撫でていく。 そのはもう、たくはなかった。 私ののには、かつてないほど激しく、静かな決の炎が赤々と燃え盛っていた。
曜の空は、までの曇が嘘のようにたく澄み渡っていた。
台の閑静な宅の奥に佇む、老舗料亭『松籟亭』。 齢百余の見事な黒松が入れされた本庭園の先、玉砂利を敷き詰めたアプローチのに、台の福祉両タクシーが静かにした。
「美奈ちゃん、着いたよ」
運転席からの声に、私は部座席でく息を吸い込んだ。 隣には、仕ての良い濃紺のウールスーツにを包んだ姉・綾が座っている。膝のには、の革のブリーフケースがしっかりと置かれていた。 そして、その部リフトからゆっくりとにりったのは、子に乗った克己さんだった。
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散髪を済ませ、背筋を伸ばし、皺ひとつないグレーのジャケットを羽織ったその姿は、かつて精密器メーカーの第線でを率いていた技術者の威厳を取り戻していた。
「お義父様、寒くありませんか?」
私が屈んで声をかけると、克己さんはしっかりとしたで私の元を優しく叩いた。 その瞳には、昨デイケアセンターのテラスで見せた怯えは微もなかった。あるのは、連れ添った妻と実の息子の罪に終止符を打つ、老いた父親の揺るぎない覚悟だけだった。
「丈夫だ、美奈さん。……こう」
子のハンドルを握る綾のが、わずかに力を込めた。 消毒液とハンドクリームで荒れた、けれど誰よりも清潔で尊い姉の指先。 私はそのをそっと握りしめ、ふたりで頷きった。
簾をくぐると、打ちが施された畳と、芳しい檀のりが腔をくすぐった。 案内されたのは、庭園の滝を臨む、この料亭で最も格式のいれの個『千代の』。 引き戸の向こうから、女将の丁寧な案内とともに、すでに部に入っている親子の、く傲な笑い声が微かに漏れ聞こえていた。
「お待たせいたしました。お連れ様がお見えになりました」
仲居が障子を静かにへ引いた。
部の正面、座ののを背にして座っていたのは、加賀友禅の絢爛な訪問着を纏った冴子さんだった。
その隣には、オーダーメイドの濃紺のスーツを着込み、腕計の針を気取った仕で確認していた翔太がいる。
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