みかん小説
本棚

"十年の沈黙と離婚届" 第10話

宗方邸の黒話は、鳴り止むどころか、部への発信すら誰として取らなくなりました。 あれほど毎のように届いていたお元やお歳暮の級品はつも届かなくなり、のに横付けされていた取引先の黒塗りの社用も、度と姿を見せなくなりました。

敷の維持費も税も払えなくなったは、やがてあの広な敷をち退き、町のれにある、壁のい湿っぽいさな借へとを寄せることとなりました。 かつての広も、磨き抜かれた廊も、もうそこにはございません。 夕暮れの狭い居で、たい麦茶をにして繰り広げられるのは、醜い責任の擦り付けいだけでございました。

「おが最初にあの子を追いせと言ったからだ!」「何を言うか、おだってあの子をで嘲笑っていただろう!」「孝幸、おがしっかり妻の綱を握っていなかったのがすべての元凶だ!」 義母は義父を罵り、孝幸は義母に鳴り返し、義姉は実を呪いながら泣き喚く。 誰として、自分自の傲を反省する者はおらず、ただ失った富と位への執着だけを互いに投げつけっておりました。 箸を持つは止まり、えたスーパーの惣菜は乾いていきました。

自分たちを支え、豊かな暮らしを与えてくれていたのが、あの「無能」

広告

と笑いばしていた嫁であったという徹な事実に、彼らは今更になって気づいたのでございます。 けれど、気づいたところで、度失った信頼と歳は、度と戻ってはまいりません。え切った畳の畳のに、果てしない悔の残骸だけが澱のように溜まっていったのでございます。

私を使用のように扱い、「宗方のに置いてもらっているだけの居候だ」と罵り続けた義父は、頼るべき親族からも見捨てられ、たったで狭い部に取り残されました。 かつて勢の部に傅かれ、客ので私にをげさせて自尊を満させていた男は、が傾くや否や、実の息子である孝幸からも、妻である義母からも、「も稼げない老いぼれ」と疎ましがられるようになったのでございます。

義父が持病の神経痛を悪化させて寝込んでも、誰も医者を呼ぼうとはいたしませんでした。 をしてい煎餅布団ので唸っていても、枕元にってたい杯を運んでくれる者すらいないのです。 かつて私に「おはお茶の淹れ方もらんのか」と罵声を浴びせていた男が、今は震えるでめ切ったを湯呑みに注ぎ、喉を詰まらせながらでみしている。 畳ので井の染みを見つめながら、義父はいをいしていたようでございます。

広告

(……あの嫁は、いつも黙って働いていた。文句のつも言わず、私がをしたは、晩寝の脇で氷嚢を取り替えてくれていた……)

その姿を、自分は度として労ったことがなかった。 謝の言葉をかけるどころか、蹴にし、嘲笑い続けた。 その取り返しのつかない過ちに気づいた、彼の周りには、もう誰もおりませんでした。悔を告げるべき相すら、すでに彼のからはるかくへっていたのでございます。 暗い部に、柱計の寂しげなコチコチという音だけが虚しく響いておりました。

そして――夫であった孝幸もまた、妻というがいかに自分のの基盤であったのかを、すべてを失ってから初めて骨に沁みてることとなりました。 朝の目覚ましを止め、清潔なワイシャツに腕を通し、磨かれた靴を履いて玄関をる。 取引先への贈答品の配から、座の残の管理、親族への義理ての挨拶に至るまで、彼の活のすべての歯は、私がで黙々とえていたからこそ回っていたのでございます。

孝幸自は、ただ指示をし、来がった台ので偉そうに踏ん反り返っていただけで、自分自では何つ活の術を持たない、真のでの「無能」だったのでございます。

私がいなくなると、彼は自らの着るシャツのボタンの掛け違いつで途方に暮れました。

鏡ので呆然とち尽くすそのは、震えたままかなくなりました。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: