みかん小説
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"十年の沈黙と離婚届" 第12話

「私の本当の姿を、私の差ししていたのみを、度として見ようとしなかったのは……ならぬ、あなた自でございますよ、孝幸さん」

孝幸は、ビクッと肩を震わせましたが、顔をげることすらできませんでした。 部の壁に掛けられたアンティークの柱計が、カチ、カチと規則正しい音をててを刻んでおります。その乾いた音だけが、広な部ので、のの断絶のさを測るように響いておりました。

かつて、え切った卓で私が数え続けた、あの孤独な沈黙。 今度は、彼がその暗い沈黙の底へと沈み込んでいく番だったのです。 私は彼を急かしませんでした。 自らの蒔いた傲の種が、どれほどい因果となって自らの肩に圧しかかっているのかを、彼は今、この所で、秒ごとに噛み締めていたのでございます。 自らが蹴りばしたものが、いかに度とに入らぬ巨な幸福であったのかを、彼はようやく魂の底から理解したのです。

けれど――それを悟るには、あまりにも遅すぎたのでございます。

私は静かに子からちがりました。 絹の擦れる擦れの音と、を踏む確かな音だけを残し、私は窓際へとゆっくりと歩みをめました。 に額を擦り付けたままの男を、私はもう度と振り返りませんでした。

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私の歩んできたの歳は、嘲笑われるためにあったのではありません。 誰かをし、誰かを支え、そして最には自らのでを踏みしめてつための、尊い鍛錬の季節であったのです。 その誇りだけを胸に抱き、私は窓のに広がる広なの灯りを見つめておりました。

かったのが、今、完全につの形を結び、美しいとなって私のへとけていくのをじておりました。 耐え忍んだ々の苦しみは、何つ無駄ではございませんでした。 踏みにじられたほど、く耕され、より豊かな実りを育む靭なとなるものだからでございます。

の空が、み始めてまいりました。 会の広なパノラマウィンドウの向こうで、群青の夜の帳がゆっくりと解け、朝焼けの桃のが、京の並みを黄に染めげていきます。 まだもまばらな通りに、清らかな朝の陽が静かに落ちてまいりました。

私は、緑の革張りの会席にく腰をろし、湯呑みからちるほうじ茶の湯気を、静かに見つめました。 ふう、と息を吹きかけ、いただきます。 温かい茶のりが、全の隅々へと染み渡り、よい温もりが胸の奥を満たしていきました。

マホガニーの巨な机のには、昨私が決裁を終えたばかりの、何枚もの類が几帳面に揃えられて置かれておりました。

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しいの建設計画、環境技術への投資認、グループ社員たちの待遇改善に関する規程――その枚枚のの向こう側に、この会社を支え、々の活を営む数え切れないほどの々の、かけがえのない暮らしがしているのでございます。

かつて、「おなど何の役にもたない」「このに置いてもらっているだけの無能な居候だ」と罵られた私が。 今、こうして何万もの々のを、この静かな指先つで預かり、支えている。

急ぐことは、もう何つございませんでした。 焦ってをらなくとも、私の元には、誰にも奪うことのできない確かな面がしっかりと根を張っております。 実力というものは、声で鳴り散らし、を屈させて誇示するようなものではないのだということを、今の私は誰よりもくっております。 沈黙ので積みねてきたの歳そのものが、私というの輪郭を、静かに、けれど揺るぎなく証してくれていたのでございます。

窓辺のさな素焼きの鉢植えに目をやると、青々とした葉の隙から、しいさな芽がつ、力く顔をしておりました。 誰に見せるためでもなく、誰に褒められるためでもなく、ただ自らの命の力だけで、に向かってまっすぐに伸びようとしております。

私はそのさな緑の息吹を、おしそうにしばらく眺めておりました。

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