みかん小説
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"妹が断った牡蠣漁師は、港の社長だった" 第8話

と、ただの言もにして言うことができなかった。

けれど、今は違う。

もし今、ここで黙ってすべてを譲ってしまえば、私が失うのは、ただのマフラーではない。

私がする、この夫だ。

自分で選び、自分のでようやく築きげた、私のそのものなのだ。

総郎は、直売所の棚にずらりと並ぶ、私がいた商品札を真っ直ぐに指差した。

「ここにある名を、を込めて1枚ずついたのは、私の妻です。この港が、もう度自分たちの力でちがる方法を必に考えたのも、妻です」

私は、総郎の背を見つめ、そして、彼越しに歩へた。

「美咲」

私は、妹の目をしっかりと見据えて言った。

「私はもう、あなたの代わりにはならない」

そして、驚いた顔をしている母を見た。

「私は、ずっと自分の順番を、ろへ回してきました。でも、ここでは、私は必とされているんです。私は、このと、この港できていきます」

私は、振り返り、棚の番にある商品札をらかに読みげた。

「源蔵さん」

すると、奥の作業から、源蔵さんのしわがれた、しかし力い声が返ってきた。

「はいよ」

私は、次の札をに取って声を張りげた。

「田辺玲子さん」

「はい」

さらに奥の売りに向かって呼びかけた。

「川ナナさん」

「はい」

私が1ずつ名を呼ぶ度、港のたちが、誇りを持って力く答えてくれた。

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最に、私は自分の胸にそっとを当てた。

「神織」

私自への返事は、必なかった。

自分の名を、自分で選んだこの所で、はっきりと呼ぶことができた。

私にとっては、ただそれだけで、もう分だった。

母と美咲は、私と港の々の圧倒な連帯をに、もはや何も言い返すことができず、逃げるようにして帰ってった。

そのの夕方、直売所「港の名」に並べた商品は、見事にすべて完売した。

翌週からは、インターネットを通じて全国から注文が殺到するようになった。

そして3ヶには、その利益で、嵐で壊れてしまった加の蔵設備も、無事に直すことができた。

ナナが丁寧に描いてくれたあの美しいの絵は、直売所の公式な包装のデザインとして採用された。

彼女に初めて絵の代を渡した、ナナは茶封筒を両でしっかりと持ち、信じられないという顔で私に何度も尋ねた。

「これ、本当に私の仕事の、絵のおですか?」

私は、彼女のを優しく握り、く頷いた。

「そう。あなたにしか描けない、素らしい絵の代だよ」

ナナは、そのでポロポロと涙を流してんだ。

そして翌から、彼女は加で働きながら、デザインの夜学へ通うことを決した。

源蔵さんは、綺麗に修理した自分ので、再びへるようになった。

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以と比べると、体力の衰えもあり、揚げする牡蠣の数はなくなった。

しかし、彼はこう言って笑った。

「お客さんに自分の名をすんじゃ。半端なものは、絶対に売れん」

彼は、そう言って、自分が育てたで1番いい牡蠣だけを選りすぐって、直売所へ持ってくるようになった。

方、実からは、あの以来、謝罪の言葉は切届かなかった。

ただ、議なことに、に1度、母のむ所から、インターネット経由で牡蠣の注文が入るようになった。

依頼の名の欄は、いつも空のままだった。

私は、その注文に対して、商品と緒に、私がいた産者の名の札を必ず入れた。

無理をして、元の関係の族へ戻らなくてもいい。

ただ、言葉を交わすよりも先に、届くいがあるはずだ。私はそう信じていた。

ある、父が1度だけ、で港へやって来た。

父は、源蔵さんが育てた牡蠣を黙って買い、私がいた商品札を丁寧につ折りに折って、自分の古い財布の奥へそっとしまった。

「体に、気をつけろよ」

父が私に向かって言えた言葉は、たったそれだけだった。

けれど、私には、父のその器用な言だけで分だった。

以の私なら、そのい言葉に満を持ち、もっとくのや言葉を求めただろう。

しかし、今の私には、確固たる帰る所があり、自分を必として名を呼んでくれるたちがいる。

私のは、穏やかに満たされていた。

けれど、私たちの物語は、そこで終わるわけではなかった。

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