みかん小説
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"偽りの血液型" 第1話

腔を突く消毒液の匂いと、規則に刻まれる図の微かな子音。 私は、数に及ぶ凄絶な陣痛と産の嵐を乗り越え、病のベッドので鉛のようにい体を横たえていた。

腹部に残る鈍い痛みと、全の筋肉を使い果たしたことによる極度の疲労。額に張り付いた髪を払う気力すらなく、私はようやく訪れた息の微みのに識を沈めていた。 だが、その静寂は、鼓膜を暴力に引き裂く切り声によって無残に砕された。

「この、尻軽女がッ!」

割れ鐘のような号が病の壁を震わせた。 反射に目をけようとした瞬、パジャマの襟が乱暴な力で鷲掴みにされた。が喉元を圧迫し、息が詰まる。 目のにあったのは、憤のあまり般若のように顔筋を歪め、目を血らせた義母・苗の顔だった。普段の洗練された元女優の面など微もなく、額に青筋を浮かべた義母は、産の肥ちで力が入らない私の体を、ベッドから力任せに引きずり起こした。

「な、何ですか……っ!? 体、何をするんですか……!」

掠れた声で必に抵抗しようとする私の胸倉を、義母はさらにく締めげた。

「それはこっちのセリフよ! 体どういうことなのよ! あんた、体誰の子供を産んだの!?」

「誰の子供って……何を言っているんですか……!」

状況が全く理解できず、私ののは真っになった。

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しかし、義母は私の困惑などにも介さず、パジャマを掴んだまま私の腕を引に引っ張り、点滴のスタンドを倒しそうな勢いでベッドから引きずりろした。 スリッパを履く暇すら与えられず、私は痛む腹部を押さえながら、無質な病院の廊を引きずるようにして連された。 ナースステーションの護師たちがぎょっとした表で振り返る、義母は目もくれず、廊の突き当たりにある児のへと私を突きばした。 きなガラス窓で仕切られた児のには、まれたばかりの赤ん坊たちがさなプラスチックのコットに寝かされている。義母はガラスに爪をて、そののつを執拗に指差した。

「ほら見なさい! あんたの産んだ娘よ!」

義母の指先がガラスを叩く鈍い音が響く。 その瞬、私は得体のれない底れぬ恐怖に背筋を射抜かれ、すぐに線を向けることができなかった。 見てはいけないものがある。見れば、自分の世界が崩壊してしまう——本能がそう警告していた。 だが、震える瞼を押しげ、私は恐る恐るガラスの向こう、ネームカードに『尾さやか様児』とかれたコットのを覗き込んだ。 さなタオルケットに包まれ、すやすやと寝息をてている赤ん坊。 その赤ん坊の部を見て、私は息を呑んだ。

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産着から覗くその柔らかな髪は、漆黒の黒髪などではなかった。 まるで、昼がりのまばゆい差しを浴びて黄に波打つ麦の穂のように、甘く、眩いを放つ——紛れもない『』の髪だった。

「え……嘘……? なんで……?」

言葉が喉の奥で氷ついた。 呆然とち尽くす私の横で、義母は酷な勝ち誇った笑みを唇に浮かべ、吐き捨てるように言った。

「まさか、あんたが托卵妻だったなんてね。まったく、しそうな顔をした女に限って、裏でとんでもない破廉恥をやらかすものだわ!」

「た、托卵だなんて……違います! そんなこと絶対にありません! この子は、勇吾さんの子供です!」

私はガラスに額を押し当てるようにして、震える声で必に叫んだ。 しかし、義母・苗は眉を吊りげ、笑を浴びせかけてくる。

「じゃあ、なぜこの子は髪なのよ!? どこからどう見ても、この子の父親は国じゃないの! 純本の勇吾から、こんな髪の赤ん坊がまれるわけがないでしょうが!」

「わ、分かりません……! 私にも、何がなんだか……!」

私の必の訴えは、あまりにもな覚証拠のに、虚しく掻き消されていく。 なぜ、私の産んだ子が髪なのか。私自、記憶の糸をいくら繰り寄せても、に覚えなど欠片もしなかった。 結婚して以来、私は夫である勇吾以の男性ときりで事をしたことすらない。

それどころか、々の暮らしのすべてを夫と庭に捧げてきたのだ。

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