みかん小説
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"偽りの血液型" 第3話

季節は巡り、私のお腹がきく膨らんで臨に入ったばかりのあるのことだった。 午の、柔らかい漏れが差し込む邸宅のサンルームで、私は籐の楽子にく腰掛け、きなお腹をさすりながらうとうとと微んでいた。 微かながカーテンを揺らし、庭の々が擦れう音がよい。 だが、そのまどろみは、自然な音によって破られた。

サクッ、サクッ。 庭の砂利を踏みしめるい靴音。 私がい瞼を押しげると、サンルームを庭と隔てるフランス窓のガラス越しに、見らぬ柄な男がっていた。 齢は代半くらいだろうか。彫りのい精悍な顔ちに、な黒縁の鏡をかけている。 その男は私と目がうと、切じることなく、窓のクレセント錠にを伸ばし、側からガチャリと窓をけて部のへとを踏み入れようとしたのだ。

「ひっ……! だ、誰か……! 誰か来て!」

昼堂々の侵入者に、私は恐怖で喉を引き裂くような鳴をげた。 すると、廊の奥から慌ただしい音が響き、義母・苗がサンルームへとび込んできた。

「何事よ、さやかさん! きな声をし——」

言いかけた苗の言葉が、男の姿を界に捉えた瞬、喉元でピタリと止まった。 苗の顔から、さっと血の気が引いていくのが分かった。瞳孔が見かれ、唇が刻みに震え始める。

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まるで、獄の底からいがってきた霊でも見たかのように、苗はそのに直した。

「……し、慎司……!?」

男は鏡のブリッジを指で押しげ、の読めないややかな線を苗に向けた。

「……母さん。しばらくぶりだね」

静まり返ったサンルームに、の線がを散らすように交錯していた。 私は籐の子に座ったまま、きなお腹を両で庇うようにして、目のの異常な景を呆然と見つめることしかできなかった。 (慎司……? 母さん……?) 男が発したその言葉のを処理しようとして、私のが激しく混乱する。 苗は胸元をで押さえ、甲い切り声を張りげた。

「な、何しに来たのよ!? 今更、どの面げてこのに来たの! またおでも無しに来たわけ!?」

「別に、をせびりに来たわけじゃないよ。……父さんに、し話があってね。にいるかい?」

慎司と呼ばれた男は、義母の激昂を柳にと受け流し、極めて淡々としたいトーンで答えた。 その落ち着き払った態度が、かえって苗の神経を逆撫でしたようだった。苗は額に血管を浮きがらせ、叫び散らした。

「お父様は病院よ! あなたに会うなんて分たりともないわ! さっさと帰ってちょうだい! このはもう、あなたのじゃないんだから!」

母と息子——その呼び名からは像もつかない、氷点の拒絶と憎悪。

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苗の物言いは、赤のに対するそれよりも遥かに苛烈で、容赦のない毒に満ちていた。 (この……勇吾さんの弟なの……? 勇吾さんに、兄弟がいたなんて……) 結婚して、私は夫のから「弟」のなど度たりとも聞かされたことがなかった。 戸惑いと恐怖でを張らせる私に、慎司の線がすっと向けられた。 先ほどまでの徹な差しとは打って変わり、彼の瞳には柔らかく穏やかなが宿っていた。慎司は軽く会釈をし、静かに問いかけてきた。

「……君が、兄貴の奥さん?」

突然話を振られ、私は肩をねがらせた。

「あ……は、はい。尾……あ、いえ、本さやかと申します……」

狼狽える私のお腹に線を落とし、慎司はふっと優しく目を細めた。

「もうすぐ子供がまれるんだね。おめでとう。元気な赤ちゃんを産んでね」

「ふざけたを利くんじゃないわよ!」

苗がのに割って入り、狂乱したように慎司の胸を突きばした。

「あんたなんかに祝ってもらう筋いはないわ! いいからさっさとていきなさい! どうせ遺産目当てで嗅ぎ回ってるんでしょうけれど、あんたなんかにくれてやる財産なんて、このには円たりともないんだから!」

苗の剣幕は、今にも相に掴みかかりそうなほど凄まじかった。 慎司はさく息を吐き、これ以の問答は無駄だと悟ったのか、静かに両を挙げた。

「……分かったよ。今のところは引きげる。父さんには、また別の方法で連絡を取るから」

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