みかん小説
本棚

"偽りの血液型" 第4話

慎司がフランス窓から庭へとを踏みそうとした瞬、苗はその背を両で力任せに突き、庭の敷のへと乱暴に押しした。 そして、ガチャンッ! と凄まじい音をてて窓を閉め、鍵をかけ、布製のブラインドを勢いよく引きろした。 部のに苦しいが広がる。 苗は荒い息を吐きながら振り返り、鬼のような形相で私を指差した。

「さやかさん! いいこと!? またあいつが来ても、絶対にのに入れちゃダメよ! 話しかけられても返事もしちゃダメ! 分かったわね!?」

「は、はい……分かりました……」

その異様な気迫に圧され、私はただ頷くことしかできなかった。

そのの夜。 製薬会社の接待を終えて遅くに帰宅した勇吾に、私はサンルームでの来事をすべて打ちけた。 寝のベッドので、私はネクタイを緩める夫の背に問いかけた。

「慎司さんっていうが、昼に突然やってきたの。勇吾さん……弟さんがいたなんて、どうして今まで度も話してくれなかったの?」

勇吾はネクタイをすを止め、きく溜息をついた。

「慎司が……今更このに顔をしたのか。驚いたな……」

「驚いたのは私の方よ! お義母さんのあの取り乱し方、尋常じゃなかったわ。弟のを隠すなんて、何か言えない理由でもあるの?」

勇吾は面倒そうにジャケットを脱ぎ、ハンガーにかけながら言った。

広告

「しょうがないだろ。母さんから『さやかには絶対に話すな』ときつく止めされてたんだから。それにさ、慎司はもう何もこのには寄り付いてなかったんだ。俺だって、もう会うことはないとってたんだよ」

実の弟に対して、まるで端のころについて語るような淡な調。 私は昼の苗のヒステリックな姿をいし、胸のに湧きがっていたある推測をにした。

「……ねえ、勇吾さん。もしかして慎司さんって、お義父様がの女性に産ませたお子さんなの?」

の子供だからこそ、苗はあそこまで激しく憎悪し、財産を奪われることを恐れているのではないか。そう考えれば、すべての辻褄がう。 しかし、勇吾はで笑って首を横に振った。

「違うよ。慎司は正真正銘、母さんが産んだ俺の実の弟だよ。まあ、君がそう疑いたくなるのも無理はないけどね」

勇吾は部着に着替えると、サイドテーブルの缶ビールをプシュッとけ、喉を鳴らしてみ干した。

「母さんはさ……俺が物ついた頃から、なぜか慎司のことだけを異常に嫌ってたんだ。理由は俺にも分からない。慎司自も子供の頃はそのことをずっと気にしててさ、母さんにされたくて、学のテストで学番を取ったり、徒会をやったりして必に頑張ってたんだけど……母さんの態度は何つ変わらなかった」

広告

勇吾はビールの泡を元から拭い、い目をした。

「決定打になったのは、慎司が猛勉の末に、現役で親父の母の難関国医学部に格しただったな。普通なら親として誇らしいはずだろ? でも母さんは違った。格通を見た瞬、狂ったように喚き散らしてさ。『勇吾を差し置いて病院を乗っ取る気ね! このの財産を占めする気でしょう!』って、慎司に掴みかかったんだ」

「えっ……!?」

あまりの理尽さに、私は言葉を失った。

「あのは慎司も相当荒れたよ。無理もないけどな。結局、慎司は同然で学の寮に入って、それっきりには戻らなくなった。今はどこかの病院で勤務医をしてるらしいけど、詳しいことは俺もらない。慎司の話題は、このでは完全なタブーなんだ」

夫の話を聞けば聞くほど、私の胸のの謎はまるばかりだった。 男の勇吾が医学のにまなかった以、病院の継ぎとなるのは優秀な医師となった次男の慎司のはずだ。 見栄っ張りで世体を何よりもんじるあの義母が、なぜ自の息子である医師の慎司を溺せず、元に置くどころか、病なまでに激しく拒絶し、ざけようとするのか。 昼に見た慎司の姿は、とても庭を乗っ取ろうとするような悪には見えなかった。性で、どこかい孤独を抱えた青に見えたのだ。

「とにかく、そういうことだからさ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: