みかん小説
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"偽りの血液型" 第5話

今切、こので慎司の話はしないでくれよ」

勇吾はそう言い捨てると、缶をゴミ箱に放り込み、シャワールームへと消えていった。 私はキッチンへき、温めたホットミルクをマグカップに注いでベランダにた。 たい夜が頬を撫でる。 丘のに建つこの邸宅からは、の美しい夜景が望できた。 嫁いできた当初、義母からの理尽な嫌に泣きたくなった、私はいつもこのベランダから夜景を眺めてを慰めていた。 (私……とんでもないを抱えたに嫁いできてしまったのかもしれない……) 私はきく膨らんだ自分のお腹を、両でおしそうに撫でた。 これからまれてくるこのさな命を、この歪んだので無事に守り育てていくことができるのだろうか。 で胸が張り裂けそうになる。 (しっかりしなきゃ。何があっても、この子を守れるのは母親である私しかいないんだから) 夜空を見げると、満の々のを、筋の美しい流れが音もなく横切っていった。

それから数週の朝。 産予定を週に控えたその、腹部に激しい痛みがり、私は破した。 慌ただしく配されたタクシーで総病院の産科病棟へと運び込まれ、陣痛のベッドので、私は丸に及ぶ孤独な激痛と格闘した。 勇吾は仕事がて込んでいるとのことでち会いには来ず、義母も顔を見せなかった。

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だが、助産師さんの励ましを受けながら、私は必にいきみ続けた。 そして夜過ぎ、産声が分娩にらかに響き渡った。

「おめでとうございます! 元気な女の子ですよ!」

胸のに抱きげられた、さく温かい命。 全の力が抜け、涙が頬を伝った。 助産師さんに連れられて児へと運ばれていく娘を見送り、私は処置を終えて病のベッドへと戻された。 窓のがみ始める、私はい、のような眠りへと落ちていったはずだったのだ。

そして、物語は冒の悪へと巻き戻る。

「この、尻軽女がッ!」

義母・苗の号によって目覚めさせられ、児のへと引きずりされた私。 ガラスの向こう、コットので眠る娘の髪は、朝のを浴びて黄に輝いていた。

「え、嘘……? なんで……?」

「まさか、あんたが托卵妻だったなんてね! しそうな顔をして、裏でとんでもない男と通じていたんだわ!」

「違います! この子は勇吾さんの子です!」

「じゃあ、なぜこの子は髪なのよ!? 父親が国だからでしょうが!」

私の必の叫びは、義母の容赦ない罵声にかき消される。 臓の悸がの奥で激しく打ち鳴らされ、血の気が引いていく。 結婚してから、勇吾以の男性と関わったことなど度もない。それなのに、なぜ娘の髪は髪なのか。私自、説がつかない事実に押し潰されそうになっていた。

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その、静かな廊にコツコツと音が響き、病のドアがいた。 姿を現したのは、スーツ姿の夫・勇吾と、を纏った柄な護師——田真鶴だった。 田真鶴のには、枚のクリップボードが握られていた。

「遅かったわね、勇吾!」

苗が振り返り、ヒステリックに声を張りげた。

「で、結果はどうだったの!?」

「待ってください! 体何の話なんですか!?」

私のらないところで何かが勝にめられている。底れぬ恐怖に、私の声が震えた。 苗は笑を浮かべ、腕を組んで言い放った。

「赤ん坊の血液型検査をしたのよ! あんたはO型、勇吾はB型。メンデルの遺伝の法則に従えば、まれてくる子供の血液型は『B型』か『O型』のどちらかになるはずよね。そうでしょう、護師さん?」

「はい。その通りです」

田真鶴は徹な無表のまま、クリップボードの類に線を落とし、淡々と読みげた。

「先ほどました児の血液型検査の結果ですが……お子さんの血液型は【A型】であることが判いたしました」

「……え?」

私のから、乾いた掠れ声が漏れた。 田真鶴は鏡の奥のたい瞳を私に向け、切のを交えずに宣告した。

「医学、B型の父親とO型の母親のに、A型の子供がまれる確率はゼロパーセントです。百パーセント、あり得ません」

病の空気が、完全に凍結した。

苗がわざとらしくきな溜息をつき、勝ち誇った笑みを浮かべた。

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