"従妹に貸した部屋が、半年で40回又貸しされていた" 第3話
側から見つかったキーボックスの跡
2週の午10。
私はマンションの入りのにっていた。
ガス会社の定期確認にち会うため、仕事は午の半休を取得していた。
エレベーターに乗り、自分の部がある階へ向かう。
玄関のにち、鞄から鍵を取りして鍵穴に差し込んだ。
ドアをけると、部のには返却されたと同じ、しんとした静けさが残っていた。
私は靴を脱ぎ、最初にリビングの窓をしだけけた。
のたいが入り込み、内の空気を入れ替える。
次に台所へ向かい、シンクの湯器周りを確認した。
漏れの跡はない。
壁にカビが移っている様子も見当たらない。
私が気にかけていた費のなさも、どうやら設備の故障や漏が原因とはえなかった。
ガス会社の作業員が到着するまで、まだしがあった。
私はスマートフォンを取りし、2週に撮した写真と、今の内の状態を見比べた。
具の位置は1ミリも変わっていない。
のフローリングにも、しい傷は増えていない。
洗面所も浴も、相変わらず活の跡がく、活が希なままだった。
しかし、2週にじたほどの烈な違はなかった。
なぜなら、さやから「で勉するがかった」という説を直接受けていたからだ。
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私はその説を旦受け入れたで、今確認できる物理な事実だけを確認しようとに決めていた。
玄関の呼び鈴が鳴った。
ドアをけると、青い作業を着た男性がクリップボードを持ってっていた。
「ガス会社の定期点検に参りました」
私は契約者の藤森であると名乗り、彼を内へ案内した。
男性は台所の元栓を確認し、湯器の作状態を丁寧に見て回った。
その、「側のガスメーターも確認します」と言い、私と緒に玄関のへ戻った。
点検作業は淡々とんでいった。
私は作業の邪魔にならないよう、しれた廊の壁際で待っていた。
男性はメーターの数値を確認し、類にペンでき込んでいた。
そして、玄関扉の方へ線を移しただった。
男性のきが、ふと止まった。
彼はメーターボックスのから扉の横へと移し、しゃがみ込んだ。
そして、壁の部を至距からじっと見つめている。
私は、ガス管やメーターの設備に何か異常が見つかったのかとった。
「どうしました?」
私が声をかけると、男性は無言のまま指先で壁の点を指し示した。
そこには、さなネジ穴の跡が2つ、縦に並んでいていた。
私は壁にづいた。
回部に来た、内の写真は入りに何枚も撮っていた。
しかし、玄関の側の壁の細部までは、全く識して見ていなかった。
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いの壁に、さな丸い穴の跡が2つ並んでいる。
さらに、そのネジ穴の周囲には、角い何かが期当たっていたような、わずかなの違い(焼け跡のようなもの)が残っていた。
決してきな傷ではない。
指摘されなければ、そのまま気付かずに通り過ぎてしまう程度のさな跡だった。
「これ、からありましたか?」
私は男性に尋ねた。
男性はすぐには答えず、指で壁の跡をもう度なぞった。
「からというより、何かを取り付けていた跡ですね」
「何か、ですか?」
「はい」
男性はそう言って、の違う角い範囲を指でなぞってみせた。
「この2本のネジ穴で、壁に直接固定していたみたいです」
私は壁の跡を見つめた。
自分がこの部にんでいた頃、玄関の横に何かを取り付けた記憶は切ない。
表札もしていなかった。
なくとも、私が引っ越す直の点では、この壁には何もなかったはずだ。
私は鞄からスマートフォンを取りした。
「写真を撮っても丈夫ですか?」
男性はし議そうな顔をしたが、「壁の跡そのものなら、こちらとしては問題ありません」と答えた。
私はカメラを起し、ネジ穴の正面から1枚、斜めの角度から1枚撮した。
その、数歩がって、玄関ドア全体とネジ穴の位置関係がわかる位置からも1枚撮った。
撮した刻データが正確に残るよう、そのですぐにクラウドのフォルダへ保した。
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男性は再びメーターの確認作業へ戻った。
私は壁の跡が気になって仕方がなかったが、いきなり「従妹に貸していた」という個な事を話すのは控えた。
この作業員がどこまで建物の事をっているかもわからないからだ。
私はまず、客観な事実だけを確かめることに徹した。
「こういうネジ穴って、マンションの壁にはよくあるものなんでしょうか?」
私が背越しに聞くと、男性は壁を見ながら答えた。
「形だけから推測すると、いくつか考えられますね」
「例えば、どんなものですか?」
「さい収納ケースとか、通信器を固定するための箱とかです」
そこまで言って、男性はし首を傾げた。
そして、玄関のドアノブと、壁のネジ穴の跡を交互に見比べた。
私は彼のその鋭い線が気になった。
「何か、い当たることがありますか?」
男性はすぐには答えなかった。
仕事に、居者のプライバシーに関わるような余計な推測を言っていいのか、迷っているようにも見えた。
私は急かすことなく、彼が言葉を発するのを静かに待った。
やがて、男性は確認するように尋ねてきた。
「この部、最までどなたか使っていましたか?」
「親族に、半だけ貸していました」
私は事実だけを答えた。
「2週ほどに、鍵を返してもらって退しています」
男性はさく頷いた。
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「そうなんですね」
そののガス設備の確認では、特に異常は見つからなかった。
湯器の作も正常だった。
元栓のガス漏れなどの異常もない。
私は、「最ガスの使用量が極端になかったので、のため設備に異常がないか確認したかった」と伝えた。
男性は、「設備が正常でも、む方の活の仕方によって使用量はかなり変わりますから」と般な説をした。
その話だけを聞けば、さやの「にいるがかった」という説と全く矛盾はない。
私はそこに、これ以の余計なをさないようにした。
全ての点検作業が終わり、男性が具をカバンに片付け始めた。
私は玄関ので、点検完の類にサインをし、ち会い確認を終えた。
その、男性はちがりながら、もう度壁のネジ穴を見た。
私は迷った。
このまま何も聞かずに帰れば、また自分のだけで推測を繰り返すことになる。
だから、最に度だけ踏み込んで聞くことにした。
「さっきの跡ですが、以の点検に来られたにも、見た覚えはありますか?」
男性は振り返り、私の顔を見た。
「以、ですか?」
「はい。半よりには、私はここへ来ていません。それ以の期で」
その答え次第では、なくとも昔からあった傷なのか、この半のにつけられたものなのかを切り分けることができる。
私は類を受け取り、礼を言った。
男性は玄関から歩、廊へた。
それから、何かをいしたようにふとち止まった。
その言で、私は顔をげた。
男性は、壁の跡を指差した。
「この所につけるもので、しだけ気になるものはあります」
私は黙って、彼の次の言葉を待った。
男性は言いかけて、旦を閉じた。
そして、線を壁の跡から、玄関ドアの鍵穴へと向けた。
「のための確認なんですが」
男性の声が、先ほどよりもし慎なトーンに変わった。
「これ、藤森さんがしたんですか?」
「いいえ」
私は即座に否定した。
「私は壁に何もつけていませんし、してもいません」
男性の表が、ほんのしだけ変わった。
私はそのでスマートフォンの画面をき、先ほど撮った壁の写真に『点検確認』という付入りメモをつけて保した。
2週に撮った内の写真とは、別のしいフォルダを作った。
そこへ、玄関全体の写真も移させた。
壁に何がついていたのかは、まだ確定していない。
しかし、私のらない「何か」が、玄関のすぐ脇にネジで固定されていたという能性だけは、はっきりと残った。
私は作業員を見送り、誰もいなくなった玄関のに1でった。
部の「」ではなく、「側」に初めて形のある違が残っていた。
そして、私がドアの鍵を閉めて帰ろうとしただった。
廊を歩きしていた作業員の男性が、数歩先で振り返った。
「やっぱり、1つだけ聞いてもいいですか?」
私は頷いた。
男性は戻ってくると、もう度あの2つのネジ穴を指差した。
「ここについていたもの、本当にしていないんですね?」
男性は私の返事を聞くと、壁の穴と私の顔を交互に見た。
「はい」
私はもう度、はっきりと答えた。
「ここに何かをつけた覚えもありません」
男性は持っていた具箱を元に置いた。
「それなら、のためお伝えしておいた方がいいですね」
私は玄関ので、そのままかずに待った。
男性は指先で、ネジ穴の縦の幅を示した。
「以、ここに『暗証番号でけるキーボックス』がついていたといます」
私は、その言葉のをすぐには理解できなかった。
「キーボックス、ですか?」
「に部の鍵を入れておく、さい属製の箱です」
男性は振りも交えて説してくれた。
「ダイヤルを回して番号をわせると、パカッとけられるタイプです。産さんがよく使うような」
私は玄関のドアノブにある鍵穴を見た。
私がさやに渡したのは、ごく普通の属製のディンプルキーだった。
暗証番号を使うような箱の設置については、彼女から度も相談を受けていない。
「それは、いつ見たんですか?」
私は彼に聞いた。
男性はし考え込んだ。
「正確なは、会社に戻って記録を見ないとわかりません。でも、私は何度かこの建物の検針や点検に来ています。その、この辺りにその箱がついていたのは、確かに覚えています」
私は許を取り、スマートフォンを取りした。
「今のお話を、自分用の確認のメモとしてき留めてもいいですか?」
「ええ、それは構いませんよ」
男性はそう答えた。
私はそのでメモアプリをき、今の付と現の刻を入力した。
『作業員が、玄関脇に暗証番号式のキーボックスを見た記憶があること』
『現はされており、壁にネジ穴の跡だけが残っていること』
『私自は、そのような箱を設置していないこと』
それだけを、自分の勝な推測を交えずに箇条きで入力した。
私は顔をげ、もう1つ確認した。
「その箱が、この部のものだとわかる所についていたんでしょうか?」
男性は壁を指差した。
「この扉のすぐ横ですからね。なくとも、この部の鍵を入れるために使っていたようには見えました。ただ、箱をけての鍵の形状まで見たわけではありません。誰がつけたかも、私はりません」
その線引きは、非常に切だとった。
男性がっているのは、あくまで自分の目で「見たもの」だけだ。
彼が「さやが取り付けた」と断定しているわけではない。
私はその点も、メモの末尾にきした。
「こういう箱って、般のがよく使うものなんですか?」
私が聞くと、男性は頷いた。
「リフォーム事のが入りするに使うこともあります。あとは、族で鍵を共するに、いちいち渡ししなくて済むように使うもいますね」
だから、キーボックスがあること自体が、直ちに犯罪や異常だとは言えない。
私はその説を聞いて、しだけ救われるような気持ちになった。
まだ、「普通の理由」で説できる能性が残っているからだ。
さやが自分の鍵をなくさないために、のために使っていた能性もある。
何かの作業のため、に設置しただけなのかもしれない。
けれど、そうだとしても、所者である私に事の相談が切なかったという事実は残る。
男性は挨拶をし、次の仕事に戻るために廊を歩き始めた。
私は彼に礼を言い、部のへ入った。
扉を閉めると、玄関は急に静まり返った。
私は自分の鞄から、さやから返却された鍵を取りした。
さやから返してもらった鍵には、私が以つけたさな属製の札がぶらがっている。
部を貸す、私が自宅で保管していた予備の鍵にも、全く同じ札をつけていた。
私は鞄の奥底に入れていたキーケースから、予備の鍵をした。
2本の鍵を、駄箱のに並べて置く。
見た目は全く同じだ。
返ってきた1本にも、無理にこじけようとしたような自然な傷はついていなかった。
私はスマートフォンの写真フォルダを検索し、貸しすの記録を探した。
引っ越しの際、鍵の本数を忘れないようにと、テーブルに並べて写真を撮っていたのだ。
その写真には、私が持つ予備の1本と、さやに渡した1本、計2本の鍵が映っている。
つまり、なくとも私が所者として把握していた鍵は、元から2本だけだった。
そして今も、目のには2本ある。
本数だけならっている。
けれど、もし本当にキーボックスが設置されていたのだとしたら、さやは何のために、普通の鍵をわざわざの箱に入れていたのだろうか。
自分1だけが使うのであれば、鞄のに入れて持ち歩けば済む話だ。
私はそこまで考えて、考を止めた。
像だけで答えを作りげてはいけないとったからだ。
私はさやへ話をかけようとして、スマートフォンの画面をタップしかけ、やめた。
先の話で、私は「部には基本に1だったのか」と尋ねていた。
さやは「基本はそうだ」と答えた。
今ここでいきなりキーボックスの話をすれば、彼女に説を求めることはできる。
しかしそのに、自分で確認できることがまだ残っていた。
壁の写真、鍵の本数、作業員の話。
それぞれをので混ぜずに、旦理してから聞く方がいいとったのだ。
私は玄関のドアをけ、にて、もう度壁のネジ穴を見た。
くで見ると、やはり穴の周りだけしが違っている。
期、属製の箱のようなものが当たっていたように見えた。
私は部から定規を持ってきて、ネジ穴の隔が正確にわかるように定規を添えて写真を撮った。
その際、写真のフレームのに部番号のプレートが入らないよう注した。
必以の報を残したくなかったからだ。
その、玄関扉の内側も入りに確認した。
バールなどで無理にこじけられたような傷はない。
鍵穴のを覗き込んでも、きな異常は見当たらなかった。
私のらない法侵入があったと決めつける材料は、今のところない。
今わかっているのは、「私が許していない鍵の保管方法が使われた能性がい」ということだけだった。
昼過ぎ、私は母へ連絡すべきかどうか迷った。
しかし、今回はやめることにした。
母はまだ、さやが半真面目に試験勉をしていたと信じきっている。
確かな証拠がない今の段階で話せば、母は配して直接さやへ話してしまうかもしれない。
そうなれば、私が事実を確認するに、親族でな話が広がってしまう。
私は親族ので、誰かを悪者にして追い詰めたいわけではない。
ただ、自分が所する部で、私のらないに何がわれていたのかを、正確にりたいだけだった。
私は、作業員が所属するガス会社の社名と、訪問をノートへ正確にき込んだ。
もしになって話の内容を確認する必がじた、私自の曖昧な記憶だけに頼らないためだ。
通話の録音はしていなかった。
だからこそ、彼が言っていないことまで勝に像してかないよう気をつけた。
彼が見たのは、「暗証番号式のキーボックスとわれる箱」だった。
誰が取り付けたのかはらない。
箱のに何が入っていたのかも見ていない。
確認できているのはそこまでだ。
夕方、マンションをるに、私は2本の鍵を別々に確認した。
返却された1本は、自分の鞄のポケットへ入れた。
予備の1本は、これまで通りキーケースに入れ、自宅で保管することにした。
そして、次にさやと話すには、絶対に曖昧な聞き方をしないとに決めた。
「誰か来たことはある?」というふんわりした質問ではない。
「玄関の横に、キーボックスをつけたことがある?」
そう具体な言葉で聞けば、答えはイエスかノーかのどちらかにしかならない。
私は玄関のドアを施錠し、廊へた。
そこでを止める。
2週まで、私は部の「」ばかりを見ていた。
が綺麗か、台所が汚れていないか、具に傷がないか。
しかし、最初に形を残していた違は、部の側にあったのだ。
私は振り返り、壁のネジ穴の跡をもう度だけ撮した。
そのの記録ノートには、最にだけきした。
『私のらない方法で、玄関の鍵が保管されていた能性がい』
そのをいた、半の「静かさ」が、私ので初めて別のを持ち始めていた。
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