"従妹に貸した部屋が、半年で40回又貸しされていた" 第9話
交差点の先の警察と族の対峙
喫茶をた、私は駅へ向かわず、くの公園のベンチに座った。
さやの最の言葉が、かられなかったからだ。
『泊まっていないのに、この所を使ったがいる』
それは、これまでの「無断宿泊」とは全くが違っていた。
部へ入るを勝に増やしただけでなく、私の「所」そのものを、に使わせていた能性がある。
私はノートをき、5分の宛名をもう度確認した。
そのうち3の苗字は、さやが見せた利用表のリストにもあった。
しかし、残る2の名は見当たらなかった。
私はそので結論をさず、表と郵便物の写真を別々のフォルダに保した。
帰宅してから、さやへいLINEを送った。
『泊まっていないについて、わかる範囲で教えて』
返事は1ほどして届いた。
『所だけ使いたいって言われたがいる』
私は画面を見たまま、しばらくけなかった。
続けて私は尋ねた。
『何のために郵便を受け取りたいって? どういう関係の?』
しばらく既読だけが残り、その返事が来た。
『りいの紹介』
私は次の質問を送った。
『自宅の所を使えない理由は聞いた?』
『詳しくは聞いてない』
そこまで読んで、私は文字でのやり取りをやめ、話に切り替えた。
さやは話にると、最初から疲労しきった声だった。
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「もう全部話したでしょ……」
「まだ全部じゃないよ」
私は答えた。
「泊まっていないが、どうして私の所を使っていたのか確認してる」
さやは黙った。
私はに責める言葉をさず、返事を待った。
やがて、さやがをいた。
「最初は、断ったよ」
「……」
「最初は、らないに所使わせるの、嫌だったから」
私はペンを持ち直した。
「じゃあ、途から受けたんだね。どうして?」
さやはすぐには答えなかった。
「……おを乗せするって、言われたから」
その言葉で、私は度目を閉じた。
宿泊の代わりに受け取ったおとは別に、「所だけを使わせること」でおを受け取っていたのだ。
「何?」
私は聞いた。
「2」
「この2?」
私は郵便物にあった、利用表にはない2の苗字を読みげた。
さやは1目には「そう」と答えた。
2目にはし迷ってから「分」と言った。
私は言い直させた。
「分じゃなくて。覚えている範囲でいいから」
「……そのも、そう」
さやの声はさくなった。
「郵便が届いたら、どうしてたの?」
「連絡してた。本が取りに来たもいるし、私がで渡したもいる。部には入れてない。所だけのは、分入れてない」
私はそこで質問を止めた。
さや自が曖昧に記憶していることを、私が引に確定した事実にしてはいけないとったからだ。
翌、私は回相談した警察署へ連絡した。
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「追加でわかったことがある」と伝え、回の相談記録を確認してもらった。
担当者には、無断の期利用が40回くあったこと、対価を受け取っていたこと。
さらに、宿泊せず所だけを使わせたが2いたと本から聞いたことを説した。
担当者は、郵便物を引き続きそのまま保管するよう言った。
そして、「名と発見状況がわかる資料を持って、度署へ相談に来てほしい」と言われた。
私は翌の午、警察署へくことにした。
警察署の面談で、私は写真とノートだけを机へした。
郵便物の現物も、袋に入れたまま提示した。
担当者は封筒を勝にけず、表面の宛名と差を確認した。
私はっていることだけを系列で説した。
さやが何を目にしていたのかについては、私の推測は話さなかった。
私が確認できたのは、「所だけを使わせて対価を受け取った」という本の説までだ。
担当者は5の名を1つずつ確認していた。
その途で、1つの苗字を見ただけ、がピタリと止まった。
私はその変化に気づいたが、何も聞かなかった。
担当者は別の職員とく打ちで確認をした、私へ向き直った。
「この方について、もうし確認させてください」
私は背筋を伸ばした。
「何か、あったんですか?」
「今お話しできる内容には限りがあります」
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担当者はそう置きをした。
「別の件で、同じ名とこの所がているためです」
私は封筒へ線を落とした。
「犯罪をしたなんですか?」
「そこは今、藤森さんへはお伝えできません」
担当者ははっきりと答えた。
「同姓同名の能性もあります。ですから、こちらでも慎に確認します」
私は頷いた。
らないことを分かったことにしてはいけない。
それは、私がここまで守ってきた境界線だった。
私は、その名義の郵便物をどこで見つけたか聞かれた。
「靴箱の番の奥です」と答えた。
いつ発見したか、発見に誰がいたか、封をけたか、さやに何を確認したか。
質問は1つずつ続いた。
私はノートを見ながら正確に答えた。
最に担当者から、「今そのやらない名義のが部を訪ねてきても、自分で事を問い詰めたりせず、必なら警察へ連絡してほしい」と言われた。
私はその言葉を記録した。
警察署をた、空はもう暗くなり始めていた。
私は母へも、さやへも、すぐには話をしなかった。
駅へ向かう途、私は警察署で聞かれた項目をノートへきした。
から族の言葉に引っ張られて、自分の記憶を変えないためだった。
警察が何を確認しているのか、私はらない。
あの名義のが何をしたのかもわからない。
わからないことを、いたずらに族へ広げるつもりはなかった。
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ただ1つだけ、もう元には戻せない事実があった。
さやは、泊める必さえないに、私の所を売っていたのだ。
しかも最初は嫌だといながら、おががったで受け入れていた。
「友達をし泊めただけ」という話は、もうどこにも残っていなかった。
その夜、私はさやへ通だけLINEを送った。
『警察には、わかっている事実だけ伝えたよ』
しばらくして既読がついた。返事はなかった。
私はスマートフォンを伏せた。
ここから先、何をどこまで問題として扱うのかは、私1が決めることではない。
けれど、誰に自分の所を使わせるかを決めるのは、本来所者である私だった。
その境界線を、私は初めてはっきりと失っていたのだとった。
翌の夕方、さやから話があった。
「皆ちゃん、昨のことだけど……直接話したい」
声は疲れ切っていた。
私はし迷ったが、断らなかった。
「わかった」
私は答えた。
「ただ、お母さんにも同席してってもらう必があるとってる」
話の向こうで、さやが黙った。
「おばさんにも……?」
「うん。今までお母さんは何もらなかったから」
しばらくして、さやはさく返事をした。
「私からも話す」
翌の夜、さやは私の自宅へ来た。
母にも来てもらった。
母は刻な事をらないまま、さやへ声をかけた。
「さやちゃん、試験なのに丈夫?」
さやは笑わなかった。
鞄を膝のに置き、両で持ちをく握っている。
私は3分のお茶をしたが、誰もをつけなかった。
最初に話し始めたのは、私だった。
警察が別で確認している物については、わからないため話さなかった。
私が確認できた事実だけを順番に説した。
第者へ貸さない約束だったこと。
さやがキーボックスを設置したこと。
や紹介されたに40回く部を使わせていたこと。
その対価としておを受け取っていたこと。
さらに、泊まらないへ所だけを使わせたこと。
母は途から、度もを挟まなかった。
全部を聞き終えると、母はさやを見た。
「……本当なの?」
さやはを向いたまま答えた。
「うん」
母のが、湯呑みかられた。
「でも、勉するために借りたんでしょ?」
「最初はそのつもりだった」
さやの声は掠れていた。
私は何も言わずに待った。
今夜は、さや自の言葉で理由を聞く必があった。
「最初に泊めたのは、友達1だった」
さやが話し始めた。
「1週だけ部を探してる子がいて、空いてるからって……」
「そのは、おは?」
私が尋ねた。
「しだけ、もらった」
「いくらかは、今ここで言わなくていい」
私は答えた。
「どうして続けたのかを聞きたい」
さやは膝のの鞄を見つめた。
「試験のおが、必だったの」
母が眉を寄せた。
「受験料だけ?」
「それだけじゃない」
さやは首を振った。
「教材も、講座も、交通費もかかるし……親には言えなかった」
母が静かに聞いた。
「どうして?」
「弟も妹もいるから」
さやは答えた。
「お母さんたちに、これ以してって言えなかった」
費用へのそのものは、私にも理解できた。
私も資格試験を受けた、教材や交通費が積みなるさをっている。
けれど、理解できる事と、許していない為は別だった。
「だったら、私に言えばよかった」
私は言った。
さやはすぐに顔をげた。
「言ったら、貸してくれないでしょ!」
私は度だけ頷いた。
「そうだよ」
母が私を見た。さやも黙った。
「らないに部を使わせるためのおなら、私は貸さなかった」
私は続けた。
「だから、言わなかったんでしょ?」
さやは答えなかった。
しして、さやが言った。
「でも、ちゃんと掃除してた」
私は目を逸らさなかった。
「うん。壊したもいない。それも確認してる。所から苦も来てない」
私はそこでを挟んだ。
「それで?」
さやの声がくなった。
「部は傷つけてない!」
母がさく息をんだ。
私はあのの部をいした。
は綺麗だった。台所にも汚れはほとんどなかった。
だからこそ、私は静かに答えた。
「部が綺麗なら、何をしてもいいわけじゃないよ」
さやの顔から力が抜けた。
私は机のに置いていた鍵を見た。
「私はさやに部を貸したの。
らないに所を配っていいとは言ってない。鍵を何にも使わせていいとも言ってない」
私は1つずつ言った。
「私の信用まで使っていいとも、言ってない」
母は今度、さやを庇わなかった。
さやは目元をハンカチで押さえた。
「そんなつもりじゃなかった……」
「最初はそうだったかもしれない」
私は答えた。
「でも、途でらないが増えたよね。所だけ使いたいも受けた。そのには、最初と同じじゃないってわかってたはずだよ」
さやはさく頷いた。
「怖くなったも、あった」
「じゃあ、どうして止めなかったの?」
母が初めてい調子で聞いた。
さやはしばらく答えなかった。
「おが……入るようになってたから」
その言葉は、よりずっとさく聞こえた。
母は両を膝のへ置いた。
「私、ずっと皆に言ってたわ」
母は私を見た。
「さやちゃんはがかからないって」
さやが顔を伏せた。
「連絡がないから、ちゃんとしてるんだとってた」
母は続けた。
「でも、違ったのね」
その声には、鳴るようなさはなかった。
ただ、これまでの評価を自分で取り消すさがあった。
「おばさん、ごめんなさい」
さやが言った。
母はすぐに「いいのよ」とは返さなかった。
「謝る相は、まず皆でしょう」
母はそう言った。
私はその言葉を聞き、初めて母がさやを無条件に庇う側かられたことをじた。
母がった事実にわせて、自分のを変えたのだ。
それは族のではきな変化だった。
私はこれからどうするかを2に伝えた。
鍵は交換すること。
管理会社へ必な連絡をすること。
政の相談窓にも確認できた利用状況を伝えること。
郵便物については勝に処分しないこと。
部を使って受け取ったおについては、さやと改めて理すること。
「全部、今決めるつもりはない」
私は言った。
「でも、みたいに曖昧にはしない」
さやは黙って頷いた。
帰る、さやは玄関でち止まった。
「皆ちゃん」
私は振り返った。
「本当に、ごめん」
私はすぐには「わかった」と言わなかった。
謝罪を受け取ることと、元通りになることは同じではないからだ。
「今は、やることを1つずつやろう」
私はそう答えた。
さやはさくをげた。
母もその背に何も言わなかった。
玄関の扉が閉まった、母が私へ言った。
「今まであの子を庇うようなこと言って、ごめんね」
私は首を振った。
「お母さんもらなかったんだから」
それ以は言わなかった。
私たちは、らなかったことを責めう段階を終えた。
次に必なのは、ったで何をするかだった。
私は机のの鍵をに取った。
さやが「傷つけていない」と言った部は、確かに見た目だけなら傷ついていなかった。
けれど、貸したのはや壁だけではない。
誰を入れるかを決める権利も、所を守る責任も、私の側にあるはずだった。
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