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"高卒エースを掃除係に落とした無能社長" 第2話

決断とり際

計の針を、ほんの分ほどに巻き戻す。

「それでは、先の営業成績の報告をいます」

演台ののマイクに、倉島の質な声が響いた。

壇の型スクリーンには、各部の売推移を示すグラフがプロジェクターのによって映しされていた。青と赤の棒グラフが規則正しく並んでいる。

「全体としては同比百パーセントと好調に推移している。だが、これは全体の回復による追いに過ぎん。組織の真のさは、個々の営業部員の働きにかかっている」

倉島は元の資料に線を落とし、ページをめくった。ペラリというの擦れる音が、マイクを通して々しく響く。

「これより、個別の数字を読みげる。各自、自分のち位置を自覚するように」

第課の先輩たちの名が、、またと読みげられていく。

目標達成率百パーセント、パーセント、百パーセント――。

名を呼ばれるたびに、呼ばれた社員はちがり、く礼して着席する。内の空気は徐々に苦しさを増し、誰もが胃を締め付けられるような緊張のにいた。

そして、倉島のが止まった。

「……営業第課、篠田零司」

急に俺の名が呼ばれた。

周囲の線が斉に俺に集するのが分かった。向かいの列に座る輩が、配そうにこちらを見げている。

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俺は背筋を伸ばし、席からちがった。

「はい」

倉島は資料からゆっくりと顔をげた。その唇の端には、隠しきれない嘲笑の笑みが微かに張り付いていた。

「篠田君。君の先の契約実績は……部内最だな。目標達成率、わずかパーセント。このままでは、君は組織のを引っ張るだけの完全なお荷物だ」

を疑った。

パーセント?

あり得ない数字だった。俺が先納品を完させた案件だけでも、目標値の百パーセントは確実に超えているはずだった。

「……失礼ですが、社。それは何かの違いではないでしょうか」

俺は声を荒らげることなく、極めて静に問い返した。

「私の先の実績は、型案件の確定分も含め、部内トップの数字だったはずですが」

「何を言っている?」

倉島はそうに眉をねげ、元のをバサリと叩いた。

「数字はここに記されている。私が直接確認した公式なデータだ。君は自分の甲斐なさを棚にげて、会社の集計システムにケチをつけるつもりか? 君はらかに落ちこぼれだ」

会議の空気が完全に凍りついた。

直属の司である第課の部が、青ざめた顔で慌てて元のタブレットを操作し始めている。同僚たちもまた、信じられないものを見るような表で、俺と演台の倉島を交互に見つめていた。

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誰もがっていたのだ。俺が先、どれほどの案件をかし、どれだけの契約を社内稟議に通していたかを。

「本当に、私の先の契約と売確定伝票をご確認されたのですか?」

俺はもう度、を押すように尋ねた。

「見たと言っているだろう! 私を疑うのかね!」

倉島の声が会議に霊した。

になり、鏡の奥の目を血らせている。静な経営者の姿などそこにはなく、ただ己の権威を振りかざして部を力づくで屈させようとする悪党の顔だった。

「いいか、篠田君。このままでは君の居所はこの営業部にはない。……今こので退職するか、あるいは方の倉庫管理へ遷されるか。どちらかを選べ」

退職か、倉庫への遷か。

歳、社内で最も脂が乗り、数々の主顧客とのパイプを築いてきた営業のエースに対する言葉とは、到底えなかった。

理尽の極みだった。胸の奥底で、煮えたぎるようなりの炎が渦を巻いた。

だが――ここで激昂して机を叩いたところで、何が解決するだろうか。

に任せて喚き散らせば、それこそ倉島のう壺だ。「業務命令に従わず会議を混乱させた」として懲戒の実を与えるだけに過ぎない。

俺はつ、く息を吸い込み、たい空気を肺腑に満たした。

そして、完全に平静を取り戻した声で言い放った。

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「わかりました。では、辞めます」

ざわり、と会議全体がきく波打った。

「篠田、お……!?」

隣の席の課がちがりかけ、絶句した。同僚たちの顔に、らかな揺と混乱が広がる。

方で、演台のの倉島は、瞬だけ目を見いた、自らの目論見がこれ以なくあっさりと成功したことに対する、満げな歪んだ笑みを浮かべた。

「篠田、ちょっと待て! そう簡単に決めるな!」

課が堪りかねたように声を荒らげた。、共に営業現でをすすってきたのある司だった。

俺は課に向き直り、静かにをげた。

「課、引き止めていただきありがとうございます。ですが、私が自分で投げすのではありません。社から直々に『』と言われ、退職を命じられたのです。ならば、これ以ここに留まる理由はありません。正式な退職届は、ほど提いたします」

俺は机ののノートとペンを然と片付け、ブリーフケースに収めた。

そして、周囲の静止の線を背に、背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま、会議のい扉へと歩みをめた。

、命を削るようにしてり続けてきたこの会社でのキャリアが、こんな形で終わりを告げようとしている。

理尽な侮辱へのりと共に、どこかくで、張り詰めていた糸が静かに解けていくような覚があった。

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