午後二時四十七分、高度一万八千フィートで両エンジンが完全沈黙した。 激突まで残り八分。百五十七名を乗せた旅客機が成すすべなく落下する中、届く空港は存在せず、管制塔は絶望に包まれる。 その通信回線を切り裂いたのは、十勝平野で暮らす泥まみれの農婦だった。 「私の小麦畑を滑走路に使えます」 「部外者は回線を開けろ」と怒鳴る管制官に、彼女は十数年間封印してきた、ある暗号名を告げる。静まり返る管制室。 残り高度一万、恐怖に震える機長へ、彼女は澄み切った声で無線越しに迫った。 「――私の指示に、一言一句従えますね?」