"夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉" 第3話
彼の言葉は、しずつ、しかし確実に私のを蝕んでいった。
私がどんなに仕事のやりがいや責任のさを説しても、彼はで笑うだけだった。
私の築きげてきたキャリアも誇りも、彼にとっては取るにらないものだった。
そして、その夫のモラハラに拍をかけたのが、義姉の麗子だった。
麗子は拓也の3歳で、実くにんでいる。
結婚の挨拶にったから、彼女は私を値踏みするような見した線で見ていた。
初めて顔をわせた、彼女は扇子を弄びながら言った。
「へえ、護師さん。変なお仕事ですこと」
彼女の目は、全く笑っていなかった。
「でも、うちの拓也はエリートだから、あなたみたいな庶民な方で本当に釣りいが取れるのかしら」
初対面でそう言い放った義姉は、それからも何かと理由をつけてはがにやってきた。
そして、箱の隅をつつくように欠点を探し、私を責めてた。
彼女は棚のを指でなぞり、げさにため息をつく。
「み咲さん、掃除がき届いてないんじゃない?拓也がかわいそうだわ」
またあるは、蔵庫のを勝に見て文句を言った。
「またお惣菜?拓也の健康を考えてるの。だからあなたはダメなのよ」
彼女の攻撃は、事だけにとどまらなかった。
「結婚して何も経つのにまだ子供も産めないなんて、女としての役目を果たしてないんじゃないの」
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拓也は、そんな姉の暴言を止めるどころか、むしろ面がるように同調した。
「姉さんの言う通りだよ。おは本当に気が利かない」
彼は姉の肩を持ち、私をたく見ろした。
「姉さんは俺のことを1番に考えてくれてるんだ。おも見習えよ」
義母の里子もまた、麗子の方だった。
里子はいつも、満そうに麗子と拓也を眺めていた。
「麗子の言うことは正しいわよ。あの子は昔からしっかりしているから」
義母は私を指差して、厳しく言い放つ。
「拓也は自の息子なの。あなた、しっかり支えてあげなきゃダメよ」
拓也と麗子は、異常なほど仲が良かった。
毎のように連絡を取りい、週末には2きりで買い物や事にかけることも珍しくなかった。
私がし距がすぎるんじゃないかとをにすると、拓也は決まって激昂した。
彼はテーブルをく叩き、目を吊りげた。
「はあ?ただの姉弟だろ。お、が汚いんじゃないのか」
彼は私を侮蔑の目で睨みつける。
「俺たちの純粋な姉弟を、おみたいな汚れた女の物差しで測るな」
そうやって、私はいつも黙らされる。
が汚い。汚れている。
そう言われるのが怖くて、いつしか私は見て見ぬふりをするようになっていた。
自分のに蓋をして、何もじないように努めた。
庭は私にとってらぎの所ではなくなった。
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息を潜めて、嵐が過ぎるのを待つだけの、たい箱になっていた。
そんな々が、5も続いた。
そして今、私の目のには、その純粋な姉弟とやらを、最も醜悪な形で証している2がいる。
「うう……み咲……」
ストレッチャーので、拓也がうめき声と共に目をけた。
その目に私の姿が映った瞬、彼の顔が驚愕と恐怖、そして極度の羞恥で歪むのが分かった。
彼は何かを言おうとをパクパクさせている。
だが、声にならない激しい痛みと、それ以の衝撃で言葉を失っているのだろう。
方の麗子は、ぐったりと識を失ったまま、ピクリともかない。
その顔は蒼で、普段の勝ち気な表は見るもなかった。
「佐藤さん」
当直医の鈴先が、私の肩を掴んだ。
彼の瞳には、私への気遣いと、医師としての静さが宿っていた。
「ここは俺たちに任せて、君はれた方がいい。精神にきついだろう」
鈴先は、静かに私を諭すように言った。
「気持ちは分かる」
周りの同僚たちも、配そうにこちらを見ている。
輩の嵐さんに至っては、目に涙を浮かべている。
誰もが、私がショックで取り乱すとっているのだろう。
夫と義姉の裏切りを、こんな最悪の形で目の当たりにしたのだから当然だ。
だが、私のは議なほど凪いでいた。
、の奥底に沈殿していた黒い澱のような。
それが、この景をにして静かに沈殿し、確かな形を取り始めたのをじる。
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