みかん小説
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"全盲の義母が言い当てた味噌汁の色" 第5話

玄関をけると、居のこたつに入っていた義母は、満面の笑みを浮かべて私を迎えてくれた。

「美玲さん、今もご苦労様ねえ。本当にありがとう」 「いいえ、お母さん。温かいうちに召しがってくださいね」

この何気ないやり取りを、私たちはこれまでに何百回、何千回と繰り返してきただろう。 だが、その、お盆のに料理を並べ終えた私に向かって、義母はいつもとし違う調子で、猫なで声のような甘えた声音をねてきたのだ。

「美玲さん、本当にね、あなたがいなくなったら私は困ってしまうのよ。目が見えない私には、お湯を沸かすことすら満にできないんだから……」 義母は目元にを当て、わずかに涙ぐむような仕をしてみせた。 「あなたの作ってくれる料理がなかったら、私はたりともきていけないわ。これからもずっと、私のために美しい夕を作って届けてちょうだいね」

「……そんな、お母さん、袈裟ですよ」

私は曖昧に微笑みながら答えたが、その瞬、私の胸の奥くに、これまでにない奇妙な違がチクリと引っかかった。 果たして、本当に私の料理がなければ、このはきていけないのだろうか。

目が見えないというハンディキャップを抱えているはずなのに、義母の常のち居振るいには、説のつかない自然さが随所に散りばめられていたのだ。

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リビングのテーブルのに置かれたスマートフォンを、音声アシストも使わずに慣れた指先でフリック操作している面を、私は以に何度か目撃していた。 また、宅配業者がチャイムを鳴らした際、盲用の杖を使うこともなく、廊の角を度もぶつからずにすんなりと玄関まで歩いていったこともあった。 私が夕方に訪ねてくる直、居のテレビの源がついていて、画面にはニュース番組が鮮に流れていたことすらあったのだ。

さらに、あるの昼がりの来事だ。 頼まれていたトイレットペーパーを届けるために居に入った、義母はソファにく腰掛け、両で何かをに広げていた。 『お母さん、それ、何ですか?』 私が声をかけると、義母はビクッと肩を震わせ、慌てて元の冊子を膝のに伏せた。 『あ、あら、美玲さん。これね、通販のカタログよ。最のものは便利ねえ、スマホの音声読みげ能で商品の説を聞かせてくれるのよ』 確かに、カタログのコードを読み取って音声を流す福祉用具はする。けれど、あのの義母の指先のきと線の角度は、どう見ても面に印刷された鮮やかなの写真を、その両目でじっと見つめている仕そのものだった。

それなのに、なぜ事の支度だけは『包丁も持てない、も使えない、美玲さんがいなければきていけない』と頑なに主張し、私を毎のように縛り付けるのだろうか。

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その、私の胸の奥底で、得体のれないたい疑の芽が急速に膨らみ始めた。 ――私は、この義母に都よく利用され、支配されているだけなのではないだろうか。 その疑が、これまでのにわたる私の献の台を、元から音をてて揺るがし始めていた。

モヤモヤとした苦しいを胸に抱えたまま、私は夕暮れのスーパーマーケットへ夕の買いしにかけた。 野菜売りでキャベツの芯のさを確かめ、鮮魚コーナーで切りの鮮度を見極めながら、ため息混じりに買い物かごへと放り込んでいく。 会計を済ませ、たいレジ袋を両に提げての眩しい駐を歩いていた、そのだった。

「……美玲? もしかして、佐々美玲じゃないか?」

背から、くよく通る男の声に呼び止められた。 を止めて振り返ると、そこには仕ての良いチャコールグレーのスーツを着込み、革のビジネスバッグを提げた、背のい男性がっていた。 どこか懐かしい、なを湛えた目元。記憶の引きしを急速にめくった私のから、驚きの声が漏れた。

「……えっ? 結、くん……?」 「やっぱり美玲だ! うわあ、懐かしいな! の卒業式以来じゃないか?」

結翔太――代の、同じクラスで徒会活を共にしていた、気のれた同級だった。

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