"全盲の義母が言い当てた味噌汁の色" 第6話
「結くん、本当に久しぶり! 全然変わってないね。あ、これって褒め言葉になってる?」 私がし照れくさそうに笑うと、結は相好を崩して頷いた。 「もちろん褒め言葉だよ。美玲ものと全然変わらないな……と言いたいところだけど」 結はフッと笑みを引っ込めると、私の顔をじっと真剣な差しで見つめてきた。 「……し、やつれてるように見えるな。ひどく疲れてるんじゃないか?」
臓がトクンとねがった。 に悟られないよう、ファンデーションで入に隠していたはずの目のの隈と、々の介護ストレスによる疲労を、再会したばかりの友に瞬で見抜かれてしまったのだ。 「え……そ、そんなことないよ。ちょっと寝なだけ」 私が取り繕うように笑うと、結は決まり悪そうにを掻いた。 「あ、悪い。初対面々、失礼なことを言ったな。つい職業柄、相の表や仕を細かく観察する癖がついてしまっててさ」 「職業柄? 結くん、今、どんなお仕事をしてるの?」
私の問いかけに、結はポケットから本革の名刺入れを取りし、枚のい名刺を差ししてきた。 そこには、文字で堂々と印刷された文字があった。 『結法律事務所 弁護士 結翔太』
「へえ……! の、将来は弁護士になるって言ってた、本当に叶えたんだね! すごいよ、結くん!」
広告
名刺を両で受け取りながら私が嘆の声をげると、結は照れ臭そうに元を緩めた。 「ありがとう。まあ、臭い民事事件ばっかり扱ってる町弁護士だけどね。……美玲、もし活のことでも何でも、法なトラブルや困ったことがあったら、いつでも慮なく連絡してくれよ。の同級割引、きっちり適用してやるからさ」 「あはは、美玲はちゃっかりしてるからな、なんて言われそうだけど……ありがとう、いよ」
私たちはいち話で況を報告しい、連絡先を交換してそので別れた。 久しぶりの友との再会は、の常のに差し込んだ条ののように私のを温めてくれた。けれど、このの私はまだ、この再会が私のの最の転になるとはにもっていなかったのだ。
翌、私は午から役所へ続きにかける用事があったため、いつもより幅にい朝の帯に義母のを訪れていた。 居のちゃぶ台のには、昨夜届けておいた噌汁の保温鍋が置かれていた。 そっと蓋をけてみると、は綺麗さっぱり空っぽになっていた。 (……あ、お母さん、昨の夜のうちに全部んでくれたんだ) 作りの料理を綺麗に平らげてくれた形跡を目にして、私ののに、じんわりとした温かい堵が広がった。
広告
これまでの疑が申し訳なくえるほど、素直に嬉しかったのだ。
私はさくをいながら、台所のシンクで空になった鍋を丁寧に洗い、布巾で気を拭き取った。 計の針を見げると、まだ約束のまではたっぷりと余裕がある。 (そうだ、今は健太さんが張でいないだったわ) ふと、そのことをいした。 健太は庭の事など針の先ほどもしない男だったが、唯、自分の実のゴミしだけは、勤のついでに担当してくれていたのだ。 『俺の通勤の途に母さんののゴミ集積所があるんだから、ゴミ袋を運ぶくらいは仕事にくついでにやってやるよ』 そう言われて以来、義母ののゴミしは健太の役目となっていた。だが、今は夫が張で留守にしている。 私が代わりにゴミをしておかなければ、次の回収までゴミが溜まってしまう。
「美玲さん、今は燃えるゴミのでしょう? 悪いけれど、勝のところにまとめてあるゴミ袋、集積所まで捨てておいてちょうだいね」 寝の奥から、起きてきた義母のかすれ声が聞こえた。 「分かりました、お母さん。今やっておきますね」
私はエプロンをし、勝のに置かれていたきなリットルの指定ゴミ袋へと歩み寄った。 結び目を掴み、何気なく持ちげた、その瞬だった。
(……何これ? い……!)
腕にずっしりと伝わってきた異様な量に、私は眉をひそめた。 暮らしの齢女性が、たった数ですゴミのさではらかにない。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
「死産」と告げた院長と20年目の出生記録
20年前、出産した娘を「死産でした」と告げられた私・佐藤しず子。しかし私は、麻酔の中で確かに聞いた産声を一度も忘れられなかった。 真実を確かめるため、私は清英産婦人科医院の清掃員として20年間働き続け、誰にも気づかれず院内の秘密を探ってきた。そんなある夜、若い看護師から「まだ間に合います。あなたの娘さん生きています」と書かれた紙を渡される。 やがて地下の保管庫へ忍び込んだ私は、自分の出産記録の隣に「佐藤女児――転送」と記された手帳を発見する。 さらにそこには複数の新生児と金銭の記録まで残されていた。娘を奪ったのは誰なのか。そして病院は20年間、何を隠してきたのか。見下され続けた“掃除婦”は、集めた証拠を手に院長・安藤剛と対峙する――。真相|修羅場2.1万字5 388 -
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 265 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1416 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 351 -
完結第15話
元義母の誤爆着信と暴かれた花婿の嘘
モラハラと不倫を重ねた夫・裕二と離婚し、独身としての平穏な生活を取り戻してちょうど一年が経ったある休日の朝。主人公・マナのスマートフォンに、元義母・文から突如「結婚式になぜ来ないの! 早く来ないと離婚させるわよ!」と怒鳴りつける狂気の電話が入る。 「私はもう独身ですが」と告げるも、来なければ自宅や職場に押しかけると脅され、指定された高級シティホテルの式場へ向かうマナ。黒留袖姿で激怒する文は、新郎となった息子の晴れ舞台を元嫁が邪魔しに来たとロビーで激しく罵倒し、白タキシード姿の元夫も腕力で追い出そうと詰め寄る。 だが、文のスマートフォンの発信履歴を確認させた瞬間、事態は暗転。人身事故で遅延していた本当の新婦「まみ」が泥だらけのパンプスで駆けつけた時、元夫が隠し続けていた致命的な大嘘が白日の下に晒される――。嫁姑|修羅場2.5万字5 331 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 125 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 77 -
完結第20話
偽りの仕送りと緑の通帳
専業主婦の佐藤真美は、長年にわたり傲慢な義母・君代から「無収入の居候」と見下され続けてきた。夫の減給により進学を断念し、誇りを持って介護職に就いた二十歳の娘・奈々までも、義母は「高卒の無能な孫」と親戚の前で嘲笑する。さらに君代は「長男の嫁・恭子を見習い、毎月十五万円を仕送りしろ」と理不尽な要求を突きつけてきた。耐えかねた真美が恭子に相談すると、長男一家の仕送りに隠された信じがたい事実が判明する。義母の言う通り「見習う」ことを決意した真美は、夫の浩一を巻き込み、スマートフォンに収めたATMの振込画面の写真と、タンスの上の空の茶封筒を使ったある計画を仕掛ける。だが、疑念を深めた義母が「緑の銀行通帳」を差し出し、記帳を命じたことで事態は急転する――。嫁姑|真相3.0万字5 710 -
完結第19話
完璧な夫に給料を突き返した朝
毎月二十五日、夫は手取り四十五万円の給料を一円も引かずに私の口座へ振り込み、親戚の前で完璧な夫として称賛されている。だがその裏で、私は息子の塾代を払うために結婚五周年の指輪を買取店へ持ち込んでいた。固定費と夫のカード代だけで毎月赤字が続き、私の独身時代の貯金も底をついた。翌朝、いつも通り振り込まれた四十五万円の通知を見つめた私は、その全額をそのまま夫の口座へ送金し、スマートフォンの画面を伏せた。嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場2.9万字5 7780