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"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第5話

信子さんは母の代からの幼馴染で、私が仕事を辞めて介護に入ってからも、売れ残りの野菜をく分けてくれたり、母の様子を気にかけてくれたりしていた、い方だった。

信子さんは両に抱えていた段ボール箱を、縁側にどっこいしょとろした。 箱のには、のついた派な根と、獲れたての里芋がぎっしりと詰まっていた。

「澄子ちゃん、これ、根と里芋。置いとくわよ。仏にも供えてあげておくれ」 「信子さん……いつもありがとうございます。こんなにたくさん」

私がをげると、信子さんはエプロンでを拭きながら、じっと私の顔を覗き込んできた。 その額に、い皺が寄る。

「……澄子ちゃん。さっき、達也さんのところのお母さんから聞いたんだけどね」 信子さんの声が、急にくなった。 「昨、の席で、あんた台所でご飯べさせられたって……それ、本当かい?」

私は線を落とし、縁側の板を見つめた。 隠しても仕方のないことだった。狭い町だ。親戚のから噂が広まるのはかった。

「……うん。私は、親族の数に入らないって、お姉さんに言われて」

「なっ……!」 信子さんは息を呑み、りで肩を震わせた。 「親族の数に入らない!? 冗談じゃないよ! あんたが、どれだけ血の滲むようないで静さんをてきたか、所のはみんなってるよ! あの兄夫婦、正に顔をしても、産つ持参しないで、静さんに遣いを無して帰るような連じゃないか! それを、台所へ追いやるなんて……!」

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信子さんが激しい剣幕でまくしてていた、そのだった。

実ののに、けたたましいブレーキ音を響かせて、見覚えのあるいが止まった。 ガシャンと乱暴にドアが閉まる音がして、ヒールのい靴音を響かせながら、の女性が庭へと入ってきた。 兄嫁の久代だった。 には、赤と黄の荷札の束と、油性マジックが握られている。

信子さんがピタリと言葉を止め、庭の久代を睨みつけた。 久代は信子さんの姿を界に捉えると、嫌たっぷりに端を歪めた。

「あら、百の信子さん。昼からこんなところで、油を売りに来たのかしら?」

信子さんのこめかみに青筋が浮かんだ。 私は慌てて縁側から庭へり、久代のにった。 「お姉さん。業者を呼ぶのは、ののはずでは……?」

「見よ、見」 久代は私を押しのけるようにして、のまま縁側の端にがり込んできた。 「業者に引き渡すに、どれが幾らになるか、私が値踏みをしておくのよ。は無駄にできないんだから」

久代は縁側から座敷へとがり、仏壇の横に置かれていたきなタンスのにった。 母が嫁入り具として切にしてきた、見事な桐タンスだった。 久代はタンスの角を指先で叩き、満そうに頷いた。

「これ、本物の桐タンスじゃない。いいを使ってるわね。

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これなら、く買いたたかれても万円にはなるわ」

そう言うや否や、久代はにした赤い荷札にマジックで『売却』とき殴り、タンスの正面にペタリと貼り付けた。 赤い札が、静かな部ので異様なを放つ。

「いい、澄子さん? この赤い荷札は、売却の印よ。私が貼ったものには、指本触らないでちょうだいね」

私は息を呑み、タンスへと駆け寄った。 「お姉さん、待ってください! このタンスのには、母が切にしていた着物がまだ入っています! 形見分けもまだ終わっていないのに……!」

「着物ごと売るのよ!」 久代は振り返りもせず、吐き捨てるように言った。 「古い着物なんて、今どき誰も着ないでしょうが。まとめて業者に引き取らせれば、しはしになるわ。あそこの鏡台にも枚貼っておきましょ」

久代は鏡台へと歩み寄り、再び赤い荷札を貼り付けた。 母が毎朝、髪を結うために向かっていた、入れのき届いた古い鏡台だった。

その、縁側にっていた信子さんが、の限界に達したように声を荒らげた。

「久代さん! の翌に、いくらなんでもそれはないでしょう! 親がくなってまだも浅いのに、でがり込んで財具を売り払うなんて、のにれてるよ!」

久代はゆっくりと振り返り、信子さんをからまで値踏みするように見つめた。

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