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"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第11話

「おい、どうしたんだ久代」

「缶がないのよ! 昨見した、あそこの戸棚のに、確かにそうな古い菓子缶があったのよ! あのに、お母さんのへそくりか何か隠してあったんじゃないの!? 澄子さん、状しなさい! あの缶をどこへ隠したの!!」

久代は目を血らせ、私の胸ぐらを掴まんばかりに詰め寄ってきた。 業者の男たちも、異様な空気に顔を見わせ、作業のを止めている。

私は歩も引かず、乱れた呼吸を繰り返す久代の目を、まっすぐに見据えた。 が吹き抜け、庭のミシンの鉄輪をたく揺らした。

「……缶なら、ありませんよ」 私の声は、驚くほど静かに、そして澄み渡っていた。

「なんですって!?」

「あのに入っていたのは、おではありません。……母をかすために私が支払ってきた、分の領収です」

「りょ、領収……!?」 久代が呆気にとられたように声を裏返らせた。

「ええ。あなた方が『タダでんでいた』と言い放った、その嘘を暴くための、すべての証拠です」 私はを見つめた。 の眉が、わずかにピクリといた。

「そして――その証拠は、もうこのにはありません。しかるべき所へ、全に移しました」

「証拠だと……? 何を寝言を言っているんだ、澄子!」 が苛ちをわにしてに踏みしてきた。 「たかが領収をどこへ隠そうが、このの処分には何の関係もない! ここは俺のだ! おい業者、構わんからミシンをトラックに積め!」

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業者の男ががかりで、砂利のの踏みミシンにをかけようとした。 その瞬、私は財布から千円札を枚取りし、業者の男の、ミシンの製テーブルのにパチンと叩きつけた。

「業者さん、を止めてください」 私の凛とした声に、業者の男たちがきを止めた。

「な、何の真似よ澄子さん!」久代が叫ぶ。

「このミシン、査定額は千円ですね?」 私は業者を見据えた。業者のリーダーが気まずそうに「え、ええ……鉄クズとしての引き取り価格ですが……」と頷く。

「でしたら、私が千円で買い取ります。倍の額です。文句はありませんね?」

「ふざけるな!」が鳴った。「おなんかに売るか!」

「どうしてですか?」 私はの目を射抜くように見つめ返した。 「業者に千円で売るのと、私に千円で売るのと、どちらがあなた方の言う『利益の最化』になるのですか? おに変えるのが目なのでしょう? 倍の現を今ここで払うと言っているのです。拒否する理な理由がどこにありますか?」

、信で数え切れないほどの債権回収や契約交渉をまとめてきた私の論理は、寸分の隙もなかった。 業者のリーダーが居悪そうに「旦さん……買い取りが倍額をすなら、うちは引きますが……」と呟く。

「くっ……!」 は顔を真っ赤にして言葉を詰まらせた。

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に汚い久代も、「千円」という言葉に瞬目がくらんだのか、反論の言葉を見失っている。

私は千円を砂利のに置くと、ミシンのに膝をついた。 よしえ叔母さんが、配そうに私の肩にを置く。

ミシンは、母の垢で黒りしていた。 私は製の台座の側にある、さな引きしにをかけた。 母が針や糸、ボビンを入れていた、さな引きしだ。 引きしを完全に引き抜き、を空にする。 には、錆びたボビンと、すり減ったチャコペンが数本入っているだけだった。

「ほら見なさい! そんなガラクタに千円も払って、馬鹿じゃないの!」 久代が嘲笑した。

だが、私は引きしの内部を見つめていた。 職だった母の父――私の祖父が、このミシンを母に持たせる際、仕掛けを施したという話を、幼い頃に度だけ聞いたことがあったのだ。 私は引きしが収まっていた空洞の奥、枠の板の裏側に指を滑らせた。 かすかな突起があった。 爪を引っかけ、くに引く。

カチリ。

乾いたさな音がして、い板が枚、滑り落ちてきた。 底だった。

その奥の隙から、何かがぽろりと私ののひらに落ちてきた。

つは――使い込まれ、の部分がすり減った、さな真鍮の指ぬきだった。 母が毎晩、指にはめていた、あの指ぬき。

「あ……!」 よしえ叔母さんが、息を呑んで両で元を覆った。

そして、もうつ。 油に厳に包まれた、い方形の束。

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