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"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第14話

久代が息を呑んだ。 「そ、そんな……!」

「したがって、この実の、建物、およびすべての遺産は、法に完全に女・澄子さんの単独所となります。さんには、切の相続分はありません」

「ふざけるな!」が声をげた。「俺には遺留分があるはずだ! 男の権利を奪えるわけがない!」

「遺留分、ですか」 弁護士はややかに微笑み、別の類を差しした。 それは、私がまとめた取引履歴と領収を元に、法に算定された負債証だった。

「さん。あなたがにわたって母の座から無断で引きした額は、利息を含めて千百万円にります。これは、被相続に対する当利得、および贈与の特別受益に該当します」

弁護士の声が、法廷のような厳さで響く。

「あなたの遺留分相当額は、実の評価額を含めても約百万円。しかし、あなたが着した千百万円からそれを差し引いても――あなたには現、澄子さんに対して百万円の返還義務が残っています」

「きゅ……百万……!?」 のから、掠れた声が漏れた。

「さらに、澄子さんがて替えてきた介護費用百万円について、寄与分および替返還請求訴訟を本付けで方裁判所に提起いたしました。裁判になれば、あなたの座の差し押さえ、ならびに与の差し押さえ続きに直ちに移します」

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弁護士は類をトントンと机で揃え、をまっすぐに見据えた。 「支払えないのであれば、刑事告訴に踏み切る準備もっております。業務横領罪での告訴状は、すでに作成済みです」

座敷が、完全な静寂に包まれた。 百万円の返還。 百万円の替請求。 そして、刑事告訴。

の膝が、がくがくと震え始めた。 額から粒の脂汗が吹きし、の畳にポタリと落ちる。 久代は顔面を蒼にし、唇をにして震わせていた。

「う……嘘でしょう……? なんで……なんで私たちが、そんなを払わなきゃいけないのよ……!」

久代の鳴のような問いかけに、親族の誰もがたい線を返すだけだった。 達也さんが吐き捨てるように言った。 「自業自得だ。伯母さんの命をい物にしてきた報いだよ」

よしえ叔母さんも、胸元の指ぬきを握りしめ、静かに目を伏せていた。

追い詰められたは、に両をつき、けない目で私を見げてきた。 のあの、座敷の座でふんぞり返っていた威厳など、どこにも残っていなかった。

「す、澄子……! 頼む、許してくれ! 俺たちは兄妹じゃないか! なんてないんだよ! を差し押さえられたら、俺たち破産しちまう! 内だろう、話しいで……!」

すがりつくように伸ばされたの。 私はそのを、静かに見つめた。 りは、もうなかった。

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胸のにあったのは、澄み渡るような徹な静寂だけだった。

私はゆっくりと、正座したまま姿勢を正した。 たい枯らしが障子を揺らし、庭の々がざわめいている。 のあの、え切った座敷で、親族たちの面で私を指差し、嘲笑った兄夫婦の姿が脳裏をよぎる。

あの、が私に言い放った言葉。 あの、久代が私を台所へ追いやりながら浴びせかけた言葉。 その言句が、私の記憶の底から、鮮に蘇ってきた。

私は呼吸をし、にいつくばるの目を、まっすぐに見据えた。 そして、静かに、音音を噛みしめるようにをいた。

「世話しただけの妹に、実の取り分はないわ」

私のから紡がれたその言葉に、久代がビクッと肩をねがらせた。 息を呑み、怯えた目で私を見げる。

私は線をへと移した。 私の声は、く、しかし座敷の隅々にまで届く瞭さで響き渡った。

「男の俺が全部もらう。……澄子、おは今週にてけ」

の顔が、絶望に歪んだ。 自分がに放った傲な言葉が、そのまま、寸分の狂いもなく自分自の胸へと突き刺さったのだと、は悟ったようだった。

「兄さん。お姉さん」 私は机のに置かれた『記』にそっとを添えた。

「その言葉――そっくりそのまま、あなた方にお返しします」

座敷の空気が、張り詰めた極限の静寂を迎えた。

「このは、母が私に託してくれたです。

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