"赤ペンで消した夫" 第4話
ログの淵と裏切りのタイムスタンプ
子は版の社内共サーバーの層へとアクセスした。 部正者としての彼女に与えられている権限は、本来であれば割り振られたゲラデータの閲覧と注記の送信に限られている。 しかし、かつて文芸第編集部で管理とシステム運用を担当していた子は、サーバー内の階層構造と、バックアップファイルが格納されるディレクトリの抜けを熟していた。
画面の青いが、暗い部ので子の無表な顔を照らしす。 彼女がいたのは、文芸第部が管理する『賞応募作品アーカイブ』フォルダだった。 目のファイルはすぐに見つかった。 の、第回文芸賞に応募され、次選考の段階で落選していた編説――『槽の』。 作者名は、朝倉希。
子は、現正の作『の氷解』の子テキストと、の落選作『槽の』のテキストを、画面に並べて表示させた。 そして、文章比較解析ソフトをらせる。 結果は、残酷なまでにだった。
の『槽の』は、の過剰な垂れ流しと、陳腐な比喩が散見される、典型な「未熟なアマチュアの習作」だった。 語彙は貧困で、形容の誤用もく、景描写に至っては点が定まらず散漫を極めている。
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それが、元にある作『の氷解』ではどうだ。 構成の骨組みは堅牢になり、語彙は豊穣で、理描写と景描写が完璧な比率で調している。 の文章力が、わずかでここまで劇に、それも「文体の癖」そのものを完全に変貌させて化することなど、言語学に絶対にあり得ない。
「……やはりね」 子は呟き、さらにサーバーの奥く、ドキュメントの「更履歴ログ」を呼びした。 クラウドで共されている編集用原稿は、いつ、どのユーザーIDによって、どの箇所のテキストがき換えられたかが、秒単位のタイムスタンプとともに記録される仕様になっている。
画面にスクロール表示されたログの文字列を見た瞬、子の全の毛穴がキュッと収縮した。
【2026/09/14 15:42】更者:黒沢也(文芸・編集) 【2026/09/22 17:15】更者:黒沢也(文芸・編集) 【2026/10/05 01:23】更者:黒沢也(文芸・編集) 【2026/10/18 23:45】更者:黒沢也(文芸・編集)
更ログの割以が、作者である朝倉希のIDではなく、編集である黒沢也のIDによって刻まれていた。 平の午やといった、社内での業務を統括しているはずの勤務帯。 さらには、夜やという、也が子に対して「作との接待があるから遅くなる」と告げていたのタイムスタンプ。 也は、会社の業務を私物化し、さらには夜の密会先で、自らのでこのの原稿を代していたのだ。
子の帳がめくられる。 過ヶの記と、更ログのを照していく作業。 ――「作の浅井先と座で打ちわせ」と帳にかれた夜。ログには、午分に也のIDで
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