みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第4話

領の悪い無能なが、現でき残るために編みした、苦し紛れの防策に過ぎなかった。

患者の族に対する病状説がうまく伝わらなかったは、さらに惨だった。 医療用語を羅列して「先の説は難しくてさっぱり分からない」と族をにさせてしまうことが何よりも怖かった俺は、夜遅くの医局で、きの説用を自作するようになった。 いにボールペンで臓や血管の簡略化した図を描き、太い矢印を引き、「ここが狭くなっているため、血液が滞り、その結果としてが浮腫みます」と、学でも理解できる言葉を選んで順を追って並べる。納得がいかなければ、何度も丸めてゴミ箱に捨て、から描き直した。 付が変わった夜まで机にかじりついて説用を清し、翌朝の回診でそれを渡した際、患者の付き添いの娘さんから「先、私たちのために、わざわざ夜にこんなに分かりやすくいてくださったんですか」と涙ぐまれたこともあった。

ある夜、医局の机でペンをらせていた俺の背にった父は、描きかけの図面を瞥し、く吐き捨てるように言った。 「裕介。おは才じゃない」 俺はペンを止め、背を張らせて沈黙を守った。 「だからこそ、誰よりも患者を見ろ。才能がないとうなら、の倍、患者の横にいろ」

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それは血の通わない厳しい宣告のように聞こえたが、当の俺には、その言葉にすがる以にがなかった。 父はまた、病院のスタッフたちに対しても、にタコができるほど繰り返していた言葉があった。 「医者なんてものは、しも偉い仕事じゃない。病気に怯えるのの横に、ただ静かに座り続ける仕事だ」

父自、病院ので偉そうな態度を取ることは涯度もなかった。 廊ですれ違う髪の清掃員に対しても々とをげて挨拶を交わし、受付の若い事務員が患者とのトラブルで涙目になって謝りに来れば、「いや、事の説がりていなかったこちらの責任だ。おさんが気に病むことはない」と、迷わず自分の非として引き受けていた。 そんな父だったからこそ、医師も護師も事務職員も、誰もが父を絶対な精神支柱としてから慕っていた。

だが、それは裏を返せば、息子である俺のが、常に偉な父のと比較され、値踏みされていたということでもあった。 俺はこれまでに、職員たちがで交わしている俺への辛辣な噂話を、図せずにしてしまったことが何度もある。 どれほど遮音に気を配っていても、病院という建物は議なほど声が反響するものだ。静まり返った夜のナースステーションの脇や、リネンのを通りかかった際、曲がり角の向こうから漏れ聞こえてくる私語が、鋭い針となって俺の鼓膜を貫いた。

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「若先、今もまだ医局に残ってカルテ見てるよ」 若い護師の、呆れたような声だった。それに別の声が、忍び笑いを含んで応じる。 「あの、院先の息子だからここにいられるだけでしょ。学の医局じゃ使い物にならなかったんじゃない?」 悪に満ちた罵倒ではない。常ののない事実を述べるような、その乾いた笑い声が、かえって俺の胸をく抉った。さらに、ベテランの護師がため息まじりにを挟む。 「まあ、柄は悪くないんだけどねえ。懸命なのは分かるけど、どう転んでも院先の器じゃないわよ」 そう囁かれても、俺には反論できる実績も技術も何ひとつなかった。 メスを握れば神業のような術ができるわけでもない。学会で華々しい研究発表ができるわけでもない。ただ、夜遅くまで医局のかりので、背を丸めてカルテを読み耽るだけの器用な町医者。それは誰かに賞賛されるような華々しい才能ではないし、俺自、誰かに認めてもらいたいなどと甘えたことを望んだことすらなかった。

職員たちので、俺に対する評価をもっともあからさまに態度に表していたのが、副院の黒川裕だった。 黒川先は歳。父が院に就任してもない頃からこの永瀬病院を支えてきた、え抜きの腕利き科医だった。

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