みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第7話

「苦しまずに逝けたのが、せめてもの救いでしたね」 そう慰めてくれた医師の言葉に、胸のどこかで堵してしまった自分自の浅ましさを、俺は今でもうまく許すことができずにいる。享だった。

そこからのは、涛のような奔流に呑み込まれていた。 「院急逝のため臨休診」のをワープロで打ちし、震えるで玄関の自ドアに貼り付けた。葬儀社との打ちわせ、親族への連絡、政への届の提。父の携帯話に残されていたアドレス帳の番号へ当たり次第に話をかけると、受話器の向こうの見らぬ老たちから「あんた、先の息子さんかい……」と絶句され、話で嗚咽された。誰もが、父に命を救われ、父にを支えてもらった患者たちだった。

通夜には、百を超える々が押し寄せた。 町の斎の駐は瞬くに満となり、所の空きや農協の敷を臨駐として放してもらうほどだった。 がる肌寒い夜だったが、傘を差した々がにまでい列を作っていた。腰の曲がった老、杖をついて歩歩む老婆、族に子を押されてやってきた寝たきりにい患者。 そのほとんどが、俺のらない顔ばかりだった。 々は焼を終えると、喪主である俺のにみて、様に腫らした目で言った。

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「院先には、うちの爺さんも婆さんも、全部助けてもらったんだ」 「先がいなくなったら、この町はどうなっちまうんだ」 そう言いながら、節くれだったたいで、俺のを両で包み込むようにして握りしめていく。、またとを握られるたびに、俺はそののひらのみを通じて、父がこの町で積みげてきたという歳の、気のくなるような巨な質量に押し潰されそうになっていた。

通夜の席が終わりにづいた頃、ふと顔をげると、受付テントの脇に黒い喪を着た相澤美穂の姿があった。 彼女は誰に指示されたわけでもないのに、元の覚束ない齢の参列者にそっと駆け寄ってパイプ子を差しし、傘の滴を拭い、焼の列を静かに誘導していた。 ふいに線が交錯した。俺がくをげると、相澤さんもまた、濡れた瞳を伏せて無言のまま々と礼を返した。言葉は交わさなかった。ただ、その静謐な佇まいだけが、混乱の極みにあった俺のに、さな杭のように打ち込まれた。

翌の告別式で、俺は喪主としての挨拶にった。 夜、葬儀社のマニュアルを参考にしながら用した原稿用を握りしめていたが、マイクのにった瞬、祭壇の央で微笑む遺の父の顔を見た途端、喉が引き攣れて声がなくなった。

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「父は……」 そこまでにして、言葉が途切れた。にかれた美辞麗句が、あまりにもっぺらで、父のきてきた臭い真実とはかけれているようにえて、どうしても読みげることができなくなったのだ。 秒く、斎に静寂が落ちた。俺はマイクを握りしめたまま、ただくをげ、震える息を吸い込んだ。 から相澤さんに、「あの、先が言葉を飾らずに黙り込まれたのが、何よりも参列者の胸に届いていましたよ」と教えられたが、そのの俺はただ、自分の甲斐なさに打ちひしがれているだけだった。

葬から戻り、骨壺を抱えて実の居に帰り着いたのは、夕暮れだった。 線の煙が漂う仏壇のに正座し、骨壺を納めた瞬、張り詰めていた糸がプツリと切れ、俺は畳のに額を擦りつけて声をげて泣いた。 だが、その涙は、敬する肉親を失ったしみによるものだけではなかった。 「これから、体どうすればいいんだ」 その圧倒な恐怖と孤独が、胸の奥からマグマのように噴きしていたのだ。 病院は、もそこに建っている。病気を抱えた患者たちは、もの訪れを待っている。「臨休診」の貼りを、いつまでも掲げておくわけにはいかないのだ。

永瀬病院は、「医療法社団 永瀬会」という法組織として運営されていた。

父が、理事と院を兼任していたため、法の代表者がした以、速やかに任を選しなければ病院の座すら凍結されてしまう。

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