みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第18話

医薬品や医療材料の納入業者からの請求、職員の社会保険料の控除計算、町役からの定期健康診断の委託契約、医師賠償責任保険の更通――そして、棚の角を埋め尽くしていたのは、『レセプト』と背表にかれた分い青いファイルの束だった。

レセプト。診療報酬細。 医師がカルテに記入した病名、処置、投薬、検査のすべてを点数化し、国民健康保険や社会保険の支払い基へ向けてヶごとにまとめて請求する、病院の命線とも言える類だ。 俺は端の勤務医として、カルテをくことならできた。だが、そのカルテがヶ分集計され、末に点数計算がわれ、翌のまでに審査関へデータ送信され、その審査を経て、実際に病院の座へ診療報酬として振り込まれるのが「診療したのヶ」であるということ――俺はその資回収のタイムラグの恐ろしさを、言葉のでしからなかったのだ。 これまでは、事務の井さんがにわたり、すべてを面で完璧に処理してくれていた。俺はその全な温ので、ただ目のの患者に聴診器を当てていただけに過ぎなかったのだ。

事務のパソコンのに座り、レセプト用の専用ソフトをちげてみた。 画面に並ぶ無数のコードや算定件の入力フォームをにして、俺の考は完全に止した。

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画面に表示されている用語の半分すら理解できない。 俺は自分の両ののひらをじっと見つめた。 このは、患者の腹部を触診して虫垂炎の圧痛を見つけることはできる。脈の図の波形を読み解くこともできる。だが、この病院をたったヶ延命させるための、事務続きの歩すら踏みせないのだ。 絶望な無力が、い鉛となって胃袋を押し潰した。

そのだった。

ウィーン、と、くで鈍いモーター音が響いた。 玄関の自ドアがいた音だった。 俺は子を蹴倒すような勢いでちがり、事務をびして廊をった。るつもりなどなかったのに、が勝に全速力でを蹴っていた。

待の入りにっていたのは、見覚えのある柄な老だった。 佐々源蔵さん、歳。 かつて町で腕のいい建具を営んでいた職で、父が院した当初から以にわたってこの病院に通い続けている、筋入りの常連患者だった。血圧の圧薬と、のち仕事で痛めた両膝の湿布薬をもらうため、に度、必ず決まった第何曜にやってくる。俺がまだ学だった頃、この病院の玄関の製引き戸の建て付けを、槌を片に修理してくれていた源蔵さんの背を、今でも鮮に覚えていた。

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「……なんだ若先、血相変えてってきたりして。どうしたんだい」 「あ、すみません! 誰か入ってこられた音がしたものですから……」 「誰かって、わしだよ」 源蔵さんは議そうに眉をひそめ、暗い待をぐるりと見回した。 そして、受付カウンターのに相澤さんがポツンとだけで座っているのを見て、首を傾げた。 「……おいおい、ずいぶんと静かじゃねえか。の護婦さんや事務の連はどこへったんだ?」

俺はごまかすのをやめた。隠したところで何のもないことは分かっていた。 俺は源蔵さんのにち、々とをげて、包み隠さずすべてを話した。 副院をはじめとするの職員が晩で全員辞職したこと。 今この建物のにいるのは、自分と相澤護師のだけであること。 入院も、救急も、掛かりな処置も、何ひとつ受けることができないこと。 血圧のいつものお薬を処方することはできるが、薬は院内ではなく、駅の原薬局まで歩いて取りにってもらわなければならないこと。

源蔵さんは、俺の拙い説を腕組みをしながら黙って聞いていた。 俺が話し終えてをげたも、待にはい沈黙が横たわっていた。 やがて、源蔵さんはフゥとく煙を吹かすような息を吐きすと、濁った、だが力い瞳で俺を見据えた。

「……そうかい。事は体分かった。で、若先。今は、やってるんだな?」

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