みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第20話

「先が残られるなら、私も残ります」 「俺は……おそらく今夜はに帰りませんよ。この類をどうにかしないと」 「でしたら、私も帰りません」 そんな押し問答を数回繰り返した末、結局、俺たちは机を並べて類のと格闘することになった。

俺は院から父が残した過分の事業報告やからの借入の返済予定表を引っ張りし、資繰りの実態を卓で弾き始めた。 相澤さんは、埃をかぶっていたレセプト請求ソフトのぶい操作マニュアルを、最初のページから指でなぞるようにして読みめていた。 部のには、卓のキーを叩く音と、をめくる音だけが途切れなく響いていた。 ふいに、相澤さんがマニュアルから顔をげた。 「……先。このレセプトの提締め切り、来のです」 「ええ、っています」 「もし……私たちでこれが入力できず、の締め切りににわなかったら、どうなりますか?」 「審査が翌に持ち越されます。つまり、本来ならヶに入ってくるはずの診療報酬が、さらに丸々ヶ遅れることになります」 にしてから、俺は自分自の言葉の恐ろしさに背筋が凍りついた。

入ってくるはヶ遅れる。だが、ていくは秒たりとも待ってはくれないのだ。 退職届を叩きつけてていったの職員たちは、現、休暇を消化している扱いになっている。

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法律、彼らの籍はまだこの医療法に残っており、ヶの料には、働いていない分の基本と社会保険料の全額が、この病院の座から容赦なく引き落とされるのだ。 それに加えて、に父が病を削減して病院を縮した際に借り換えた、数千万円におよぶ設備資の毎の返済期が迫っていた。完済まで、あと。 もし来のレセプト請求を落とし、資ショートを起こせば――その瞬に、渡りをしてすべてが終わる。

相澤さんは唇を噛み締め、何も言わずに再び分いマニュアルへと線を落とした。 カサリ、カサリとページをめくる乾いた音が、静まり返った事務に響き続けた。 窓のを見げると、柏町の空は漆黒のに沈み、くの灯だけがたく瞬いていた。 夜の帳の底で、階の事務だけにかりが灯るこの古い建物を、の通りから見げたらどう映るだろうか。 ――まだ、きている。 誰かがそうってくれるかもしれない。俺は、そう信じることにして、再び数字の羅列へと目を落とした。

翌朝、佐々源蔵さんは、本当にやってきた。 診察券を受付にすわけでもなく、血圧を測るわけでもない。 朝の、自ドアがくと同にふらりと入ってくると、待の真んの子にどっかりと腰をろし、自宅から持ってきた朝刊をバサリときく広げたのだ。

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俺が診察から顔をし、「源蔵さん、おはようございます」と声をかけると、老は聞の面から目をすことすらなく、 「気にせんでいい。わしはただ、ここで向ぼっこしながら聞を読んどるだけだ」 と素っ気なくを振った。

そして、午をし回った頃だった。 玄関の自ドアがき、買い物袋を提げた所の主婦が、恐る恐るを覗き込んできた。 彼女は待の子に源蔵さんが当たりのような顔で座って聞を読んでいるのを目にすると、ほっと胸を撫でろすようにして受付へと歩み寄ってきた。 「あら……源蔵さんがいらっしゃる。……あの、すみません、今はお薬をしていただけるのかしら?」 その女性は、血圧と脂血症の薬を父から処方されていた患者さんだった。 相澤さんが笑顔で迎え入れ、処方箋の効期限や駅の原薬局へのき方を丁寧に説した。 診察で俺が血圧を測り、回の血液検査の数値を確認して処方箋を渡すと、女性は帰り際、受付のカウンターでを止め、申し訳なさそうに言った。 「先……本当に、変なことになりましたね。でも、いててくれて助かりました」 「ご便をおかけして、本当に申し訳ありません」 俺がをげると、女性はいしたように、悪戯っぽく笑って付けした。

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