みかん小説
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"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第21話

「うちの隣、井理髪なんですけどね。あそこのおばちゃんにも言っときますよ。『永瀬病院、若先がちゃんとやってるよ』って」

さな町における、コミという報の伝播力の凄まじさを、俺はそのの数で骨の髄までいることになった。 翌には、来にの患者が訪れた。 その次のには、になった。 そして週が経過する頃には、午の待に常以の患者が並ぶようになっていた。

ある朝、診察のドアの隙から待を覗いた、製の子に腰掛けた老たちが、、並んで互いの況を語りっている景が目にび込んできた。 ただ、が座っている。 それだけの景が、これほどまでに胸を締め付け、涙がるほどありがたいものだとは、これまでのでいもしなかった。 やってくる患者たちのほとんどは、父の代からの古い馴染み客だった。 「若先がいるなら、だ」 「院先がいなくなってだったけど、顔を見られてホッとしたよ」 そう言って診察の丸子に座る彼らのには、こんな言葉をかけてくれるもなくなかった。 「院先にはそりゃあ世話になったけどさ。わしたちは、あんたが子供の頃から、自転でり回ってたのを見てるんだよ。頑張りなさいよ、若先」

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その言葉に、俺は診察で何度救われたか分からない。

もちろん、好な患者ばかりではなかった。 はっきりと「隣のしい病院へカルテを移します」と言いにやってきた患者もいた。 数に狭症のステント留置術を受けたことのある齢の夫婦だった。夫の方が、居悪そうに線を泳がせながらをいた。 「すまないね、先。うちの臓病は、万がのにすぐにカテーテルができる病院じゃないと、族が怖がってしまってね……」 「分かります。それが番賢なご判断だといます」 俺は切の嫌な顔をせず、からの本音として頷いた。 この病院には今、緊急の臓カテーテル検査をう設備も、それを扱える循環器の専医もいない。それは紛れもない事実だった。 俺は机に向かい、その患者が過に当院で受けたすべての血液データ、図の推移、用してきた薬剤の履歴、さらには昨の入院の詳細な経過を、枚の便箋にびっしりと丁寧にき連ねた。 文字を推敲し、万がにもしい主治医が判断に迷わないよう、細かな特記事項をき添えるのに、分以のを費やした。 紹介状の封筒を渡した、付き添いの妻がその分さに目を見張り、驚きの声を漏らした。 「先……こんなに詳しく、丁寧にいてくださったんですか?」

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「次の病院の先が、治療方針をてる際に困らないようにしたかっただけです。お事になさってください」 妻は紹介状を胸に抱きしめ、くをげた。 「先……病院が落ち着いたら、私たち、また先の顔を見に来ますからね」 その言葉が、単なる社交辞令だったのかどうかは分からない。 だが、どれほどがかかろうとも、りゆく患者のために誠誠の紹介状をきげて良かったと、俺はの底からえた。父なら、違いなく同じことをしたはずだからだ。

々の活は、朝から晩まで息つく暇もないほどの激闘だった。 俺は午に数の来診察をこなし、にレントゲンへって胸部写真を撮し、図の極を患者の胸に貼り、午は紹介状の作成とカルテ理に追われた。 相澤さんの業務量は、さらに凄まじかった。 朝番の玄関掃除に始まり、受付での保険証確認、子カルテへの基本報入力、診察での採血と血圧測定、薬局へのFAX送信、鳴り止まない話の応対、会計業務、そして午診療が終われば休むもなく、使用したすべての医療器具の洗い洗浄と圧蒸気滅菌作業――。 彼女は、本来なら、のスタッフが分けしてうべき仕事を、たったで黙々とこなしていた。 とも、本来の業務量の倍以の負荷を背負っていた。

昼の休憩など、毎分も取れればいい方だった。相澤さんはのポケットに突っ込んだカロリーメイトを齧りながら滅菌器のタイマーをセットし、俺はその横でめたお茶を喉に流し込みながら紹介状の文面をキーボードで打ち込み続けた。

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