みかん小説
本棚

"無一文の清掃員に届いた出前丼(" 第24話

例だと、うちで約百を診ています」 「……今は何くらい来られる見込みですか?」 「正直、分かりません。半分に減るかもしれないし、それ以かもしれない。……今の私たちの体制で回せるキャパシティを、完全に超えています」 「そうですね……無理ですね」 相澤さんは静かに頷いた。

で沈黙した。 俺は目を閉じ、父の姿をい浮かべた。 もし父が今の俺のにいたら、体どうしただろうか。 ――絶対に、断らない。 答えは、考えるまでもなかった。 もし永瀬病院が健診を断ってしまえば、腰のたないこの町の老たちのくは、隣町までバスを乗り継いで健診を受けにくことなど諦め、病気の期発見の会を永に失ってしまうからだ。 俺は保留を解除し、受話器をに押し当てた。 「健康推課さん、お待たせしました。……当院で、今度の民健診をお引き受けいたします」 話の向こうで、担当者が息を呑む気配がした。 『えっ……!? ほ、本当に丈夫なんですか!?』 「ただし、条件があります。に受け入れられる数を、完全予約制で限名までに制限させてください。それから、胃カメラや腸カメラなどの精密検査が必と判断されたは、院へ紹介状をく形になります。その条件でよろしければ、最のまで責任を持って診させていただきます」

広告

受話器の向こうから、『ありがとうございます……! すぐに受診票の発送続きに入ります!』と、弾んだ声が返ってきた。

健診が始まるまでの週、俺と相澤さんは、かつてない過密程ので準備をめた。 問診票を何百枚も印刷し、個別のカルテ用封筒に割り振り、話予約の台帳を作成した。通常の来診療をこなしながら、している採血用の真空採血管やスピッツを数えて発注し、検体を回収に来る検査所のルート便のを調した。 相澤さんは、自宅へ帰る最終バスを逃した夜は、病院の階の仮眠に泊まり込むようになった。 「相澤さん、本当に無理をしないでください。あなたが倒れたら、この病院は名実ともにゲームオーバーなんですから」 「先こそ、目のにクマができていますよ。先の『丈夫』は、世界で番信用できません」 相澤さんにそうピシャリと言い返され、俺は苦笑いするしかなかった。

そして迎えた、民健診の初。 朝のちょうど、俺がを着て病院の正面玄関へ向かうと、ガラス越しに見えるの景に、わずが止まった。 錠まで、まだもある。健診の始は午だ。 それなのに、初のえ切った朝靄が漂う玄関ポーチのに、すでに、の老たちが列を作って並んでいたのだ。

広告

には、自宅から折りたたみのアルミパイプ子を持参して腰掛けている者までいた。 その列の先にっていたのは――ならぬ、佐々源蔵さんだった。 自ドアの鍵をけると、源蔵さんが満面の笑みを浮かべてを挙げた。 「よう、若先! おはようさん!」 「源蔵さん……! 体こんな朝くから何をやっているんですか!」 「何って、健診に決まっとるだろうが! わしが番乗りで受けてやろうとってな!」 「源蔵さんの予約は、午半ですよ! 台帳にそういてあります!」 「っとるよ! だから、あと半、ここで聞を読んで待つんだよ!」 ろに並んでいた老たちから、ドッと温かい笑い声が沸き起こった。 『源蔵さんは昔からせっかちだからなあ』 『若先、おはよう! 今もよろしく頼むよ!』 俺は慌てて自ドアを全にし、たい朝のにつ老たちを、温かい待のへと招き入れた。 がらんとしていた待の製子が、ぶりに、隙なく々の体温で埋め尽くされた瞬だった。

その、健診に訪れたのはだった。 事にてていたタイムスケジュールでは、問診と診察で分、採血と血圧測定で分、流れるようにベルトコンベア式に処理していくはずだった。 だが、現実は机の計算通りにはいかなかった。

丸子に座った老たちは、誰もが話をしたくてたまらなかったのだ。 聴診器を胸に当てている最に、先週われた法事の話が始まり、腹部の触診をしている最に、京へた孫が就職したという自話が炸裂する。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: